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関心の肌触り、思い出してしまう

関心を失われた。大切な人に。

信頼はしてるけどやっぱり違った、みたいなことを正面切って言われるのが2度目で、自分はどうにもこうにも1人でいるしかないのだなと思いながらも、分かっていた結果だったから、正直もっと泣けるかと思ったのに泣けない自分を考えて変な笑いがこみ上げてきた。

性的な関心ばかりを向けられてきた中で、唯一私自身を見てくれた、と思った2人が持っていたのは、創作をしている私にのみ向けられる関心で、創作から私が離れようとする度に、伴って、私に対する関心を失っていった。

最近良く自覚している。自分は他人の踏み台であり、エンジンをかけるだけの存在なのだなということ。

次のステージに上がれたらおしまい。人を最初に鼓舞するのが得意。それだけの存在。動力を得たら後は自前のアクセルでどうにかなる。そのサポートをしているだけで、その時必要な人材ではあるけど、恒久的には必要のない人材なのだと。




成人式の後、小学校にタイムカプセルを取り出しに行き、その後4人しかいない幼馴染と、彼らの親と、ご飯を食べに行く約束がいつの間にか取り付けられていた。行きたくないと言ったら、父に殴られて、嫌でも人間関係って言うのは続くんだぞ、と言われた。

小学校に良い思い出など1つもない。

唯一の同級生である女子は、小1の前半は良かったものの、先輩による手回しにより私が悪口を言ったという噂が広まった挙句疎遠になって、それっきり私が彼女に好意を持ち続けることが不可能なほどのいじめが始まった。そして先輩は、ずっと仲良くしたいと思っていたらしいその子とよく遊ぶようになった。

あとは男子が2人。

中学に上がって最初の夏休み、1人から呼び出された。家に誘われることなんて無かったから、宿題を手伝ってほしいというだけだったけれど舞い上がって、すぐに家に向かった。そこで、胸を触られ、服を脱いで、と言われた。私ではなくもう一人の幼馴染の子が好きだと知っていたから、わけがわからなくなってしまった。何も無かったことにするから、といい残して、どうにかタイミング見ながら海に走って逃げた。下着姿のまま、走って、そのまま海に飛び込んで死のうと思った。

数ヶ月後、駅伝大会の後に行われた個人宅での二次会の最中、私は体調を崩してソファで横になっていた。もう一人の幼馴染の男子が、テレビを見るために入ってきて、私が眠っているソファに座る。静かに、覆い被さる。体を触る手を退けようとすると腕を捕まれ、男性器を握らされる。テレビの音で泣いても誰も気付かない。
彼はその後すぐ、美人で気立ての良い彼女を作った。2ヶ月過ぎてキスすらまだしてないのかよ、と男子たちが茶化していた。

今からでも父に言えば、私が極度に嫌がっていることを理解してもらえるだろうか。でも、私なりに父の性質を分かっているつもりだ。理解の前に、怒りに任せて彼らに報復行動を取る可能性がある。それだけは避けたい。だって、人間関係は続くから。

幼馴染2人に性的な目線を向けられながらも、気にしないように、気にしないようにと過ごして中1の2月、図書館に入り浸ってるうちに、私は3人の先輩と仲良くなっていた。

いつも3人でいるのに、珍しく1人で窓際にいた。いつものように話し掛けると、おもむろにポケットの中のものを見せてくる。消毒液、絆創膏、耳栓、それと中身の分からない薄っぺらい何か。何も知らない私が、これ何?と言って私が手に取ったソレ見て、彼が「来週月曜の放課後に一緒に帰ろう。その時に使い方を教えてあげるよ」と言ってきた。
靴箱の前で待ち合わせて、彼に言われるままについて行った。汚く手入れのなされていない神社の裏で、少し待っててと言われ、私は梅の花が咲いているのを見ていた。もういいよ、と言われて向き直った時、彼は裸だった。使い方知りたいんでしょ、だったら言うとおりにして、と言われた。

私にはその時、好きな先輩がいた。その先輩が卒業する前に告白するつもりだったけれど、きっとこの人と同じクラスだし、私が性的なことをされたことも、すぐに好きな人に伝わる。そんな人間が、告白なんてしちゃいけないと思った。

私と色々あった後、彼は親の都合で岐阜の高校に進学したらしい。風の噂で、そこで彼女を作った、と。一度だけ彼から手紙が届いて、その中で、別に好きじゃなかったしお前は彼女でも何でもない。処女じゃ無かったなら誘ったりしなかった。後悔してる。男遊びを楽しんで、と書かれていてコンドームが1つ入れられていた。まだ、私は13歳だった。




性的な部分でしか、自分の価値が無いことを十二分に理解して、生きてきた。きっと、性的な目線を向けるのにちょうどよい存在なのだろうと、自覚させられてきた。

女であることは1つも得では無かった。人間としての尊厳を傷付けて来ない、対等な関係を築く為に躍起になって、その中で唯一、性的な肌触りのする関心を向けて来なかった2人に、結局、関心を持たせ続ける事はできなかった。

人間関係を築くことを諦めたくないけれど、これからもずっと、関心が波のように引いていくのを見送るだけの生活を続けるのだろうか。誰かを鼓舞するため、私が生きる価値はある。でも、それは自らの幸せを望まなければの話だ。私は、これからも誰かの踏み台として生きていくしかないのだろうか。

あと数週間もすれば成人式がある。私を踏み台にしてきた人と、再び顔を合わせる。高校を辞めて周囲との接触を極度に拒んでいるし、好奇の目に晒されることも分かっている。






それでも私は、生きていかねばならないのだろうか。