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【読書】『もうひとつのワンダー』R.J.パラシオ

『ワンダー』のスピンオフ作品。
前作をさらに上回る素晴らしさ。
この作品があってこそ「ワンダー」の世界は完成すると、わたしは思う。

「続編は書かない」と言っていた作者がこの作品を書いた理由、それは米国で「いじめっ子ジュリアンになるな」という運動が起こってしまったから。「ジュリアンには、ジュリアンが語るべき物語がある」という作者は、「ジュリアンをもっと理解するために」この物語を書きました。
本書は、「いじめっ子」ジュリアン、幼い頃からオーガストのそばにいた幼なじみのクリストファー、学校の案内役になった優等生の女の子シャーロットの、3人の「ふつうの子」による、それぞれのワンダー・ストーリーです。

Amazon/『もうひとつのワンダー』/出版社からのコメント


作者はこう話す。

「いじめっ子ジュリアンには、ジュリアンが語るべき物語があります。
ただ、いじめについて語るジュリアンの物語は『ワンダー』に入れるべきものではありませんでした。
そもそも、自分をいじめる相手の気持ちを理解して思いやるなんて、いじめに苦しむ子がすることではありません。
けれども、ジュリアンを主人公にした短編で、その人物像をじっくり掘り下げてみようと思いつきました。
ジュリアンに罪がなかったなどというのではありません。
これは、ジュリアンをもっと理解するためです。
ジュリアンはたしかにひどいことをしましたが、だからといって必ずしも『悪い子』だということではないのです。
あやまちから人を判断することはできません。
本当にむずかしいのは、おかしたあやまちを受け入れることなのです。」


作者のこの、善悪を超えて本質を見つめようとする温かく奥深いまなざしは、人間というものの奥深さとイコールだとわたしは思う。

善悪で切り分けてしまっては見えないもの、理解できないもの。
それを見つめるには、聡明で温かなまなざしが要る。
作者は本作で、そのまなざしを読者に提供する。
そしてその「善悪で切り分けれないもの」が見え、理解できたとき、
わたしたちは愛について、またひとつ発見するのだと思う。




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