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桜色した骨を拾へり|切明千枝子さん歌集『ひろしまを想う』

 今日は長崎の 原爆の日。

 11時頃。そろそろ「あの時刻」だと思いつつ、所用で外を歩いていました。
 近くの学校から、黙祷を呼びかける校内放送が切れ切れに届いてきて。

 11:02、いきなりサイレンが鳴り始めたので、音の大きさに度肝を抜かれながら、歩道の端によって1分間黙祷しました。長崎の方を向いて。

 「あの日」も、不意打ちのように、死が落ちてきたのだと思いながら。

 眼を閉じるときにちょうど、外国人観光客の二人連れが通っていきました。きっと、サイレンとともに道端で指を組んで黙祷し始めた私を見て、不思議に思ったことでしょう。願わくは、誰かにその理由を訊ねてくださらんことを。


 帰宅すると、切明千枝子さんの歌集が届いていました。
 昨年、被爆証言を聞かせていただいた方です。(この記事の末尾に、その時の覚え書きを載せておきます。これでも、描写はかなり控えめです。読む方のためでもありますが、身体を損なわれたさまを克明に書くのは、ご本人に対して忍びない気がしてしまって。)

 まだ拾い読みですが、いくつかご紹介し、長崎への祈りを添えたいと思います。


わが母校広島県立第二高等女学校二年西組なべて果てたり

この手もて友の亡骸焼きし日よその桜色した骨を拾へり

焼棒杭やけぼっくいに躓きしと見れば幼な子の黒焦げの骸かの夏の日よ

月光にまぎれてひよいと亡き人のやつて来るかも今宵十五夜

死して後風になるのは寂しいぞいとしき者の胸内むねに生きたし

青き星水の惑星にわれら棲むその往時かみここに焦熱地獄

原爆の傷痕疼く夕まぐれ桜ひとひら散るを掌に受く

「かあちゃんを探して」と私のモンペの裾掴みたる子今も離さぬ




SADAKOのおりづる



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