着物で悪目立ちしない方法
「着物を着たい。でも街中で浮きたくはない」
着物が気になっているものの、ここで立ち止まり、あきらめる方も多いのではないでしょうか。わたしも常々、『悪目立ちしない』ように服を着ているので、気持ちはよく分かります…。
しかし、今では着物生活7年目。自転車に乗ってスーパーに行きますし、英会話や映画館も着物で行きます(通勤時は洋服です。制服に着替えるロッカールームの床が汚いので、着脱で着物を汚したくないから…)。
そんな風に着物で暮らす中で、視線を感じたことは数知れず。この経験から感じたことも、色々あります。今日はその中から、目立たない着物姿について考えたあれこれを、皆さんと情報共有していこうと思います。
「着物は着てみたいけどなんだか恥ずかしい」
「目立ちたくないのに目立つのが悩み」
「目立ちたがり屋に思われたくない」
そんな悩みを解決すべく、「悪目立ちしない着こなし」と題して、着物のコーディネートについてまとめていきます。ひとことでまとめると、普通に着ることですね。これにつきます。
……詳しく説明いたしますね。
石を投げれば洋服姿の人にあたる現代社会では、着物は珍しくて目立つでしょう。しかし、それ以上に目立つ装いがあります。それは、普通じゃない要素を取り入れている格好です。
全身ヨウジヤマモトの真っ黒でワイドシルエットな装いや、ピンクに染めた髪の毛、足袋ブーツなどなど、和洋問わず奇抜なファッションをしている方のほうが、普通に着物を着ている私より、よっぽど目立ちます。
確かに着物は珍しいかもしれません。しかし、そこまで過大評価しなくてもいいのではないかと、私は感じています。なぜなら、普通の着物の着こなしだけでは、人々の関心を強くひくことは難しいからです。お友達やご家族に「ピンクの髪の人とすれ違ったよ~」と言うことはあっても、「着物の人いたよ」なんてわざわざ話したりはしません。着物だからと身構えず、普通に着てもらえばいいのです。
とは言ってみたものの、着物が珍しい現代社会で「普通に着なよ」と突き放すだけでは不親切です。なので、ここからは実際に着物で暮らしている私が考えた、街になじむの着物の着こなし方について書いていこうと思います。
本記事の結論、つまり目立たない着物コーデのポイントをお伝えしますと、
着流しで着ること
小物も同系色でまとめること
ネイビーで無地調の着物を選ぶこと
長着と羽織が同生地になっているアンサンブルを選ぶこと
となります。私の着物生活から得られた経験、学びを交えて、詳しくご説明していきましょう。
色は濃紺一択
まずは着物を買わなくちゃいけませんね。そして、これだけで9割9分やることはおしまいです。頑張っていきましょう
初めての着物には古着がおすすめです。
予算1万円でも選択肢の幅が広いのが特徴で、ユニクロのような価格設定の中から選ぶことが出来るのが魅力的です。
さらに最近では、新品の着物でもリーズナブルで良心的な価格設定にしている着物屋さんも増えてきました。古着に抵抗のある方は、こちらに遊びに行ってもいいかもしれません。実店舗では、店員さんからアドバイスをもらえるのも大きな利点です。今回は、実店舗だけでなくオンラインショップも展開しているおすすめのお店をいくつか皆さんに共有しておきます。
伝統技法を駆使したものや奇抜なデザイン、人気ファッションブランドとのコラボ品など、無数の選択肢があって楽しく悩んでしまうかもしれません。しかし我々が最初に手に取るべきは、ネイビーの着物です。繰り返します。濃紺の着物を選んでください。
※ターコイズブルーや綺麗な瑠璃色ではありませんのでご注意を。
濃紺をおすすめする理由は以下の通りです。
誰でも似合う。
どこでも手に入る。
洋服感覚でコーディネートしやすい。
われわれ日本人の肌に紺色がよく合うのは周知の事実。昔からそうだったようで、先ほどご紹介したお店だけでなく、古着屋さんにも必ず置いてある色です。黒やグレーなどの使いやすく現代人に人気の色もいいのですが、特に古着で探すのは苦労するので、初めての方にはおすすめしません。
また、西洋ではグレーとネイビーが紳士の基本色とされており(豆知識:男性が結婚式に参列するなら、スーツは黒じゃなくこの2色が適しているそうです)、街中で大勢が着ています。たとえ珍しい着物姿でも、濃紺なら周囲に溶け込み、目立ちません。
ネイビーのコーディネートのしやすさは、説明するまでもありませんね。「おれは緑が好きなんじゃー!」と買ってしまうと羽織や帯選びで苦労することになりますし、「全身黒にすれば目立たないでしょ!」とやってしまうと、結構強めな印象になり浮きます…(べ、別に実体験ってわけじゃないんだからねっ///)。
そして、濃紺の着物を着るのなら、ワンカラーコーデも併せておすすめいたします。着物だけではなく、羽織や帯も同系色でまとめることで、コーデが洗練され浮きづらくなります。
しかしこれは、着物が目立たないというよりは「ダサさで目立つこと」を避ける意味合いが強く、素材選びなどによっては無表情でのっぺりした着姿になるリスクもあるので、ファッションが苦手な方にはおすすめしません。もうすでに着物をお持ちで、のっぺり着物に悩んでいる方は、艶のあるものとないものを組み合わせること、色の濃淡や色調をずらして組み合わせること、を意識してみてください。先ほどの写真でもそうやって組み合わせていますが、立体感が出るのでおすすめです。
※「もっと詳しく着物のコーディネートについて知りたい」「文章だけじゃ分かりにくい」という方は、筆者のSNSが参考になるかもしれません。コーディネートを全身、首元、帯周り、足元など様々な角度から撮って投稿している着物男子はレアですよ(自分で言っちゃ、だめですかね…)。
コーディネートに自信のない方は、アンサンブル、もしくは対(つい)と呼ばれる、着物と羽織が同じ生地で、セット売りされているものがおすすめです。スーツ着とけばとりあえず格好いいの法則と一緒で、簡単にかっこよくなります。
古着屋には必ずと言っていいほど紺のアンサンブルが陳列されていますので、ご自身のサイズに合うものを探してみてください。
しかしながら、好みは十人十色。パーソナルカラーなんて千差万別。なので、ご自身が似合うと思った色を、自信を持って楽しく着ていれば、本当はそれでいいのです。他人の意見、目線なんて気にせず、ファッションを楽しみましょう!
無地に勝る柄はなし
くれぐれも「わかったよ!濃紺の着物を買ってくればいいんだねー!!」と、勇み足でこんな感じのものを買ってはいけませんよ。
街中で目立たない「普通」の着姿を目指すあなたには、ぜひ無地の着物をお召しいただきたいです。無地の着物が一番格好いいと、私は思っています。
ここで誤解しないでいただきたいのは、これは私の好みの問題というだけではないということです。「無地に勝る柄はない」とファッション界の大御所も述べています通り、ファッション系インフルエンサーやアパレル業界は口を揃えて「まずは無地を」と推しています。その結果、街中は無地の着こなしをした人々で溢れかえっています。そんなところで柄の着物を着た日にゃ、目立つこと間違いなしです。
そもそも、派手な柄の着物はコーディネートが難しくなるので、まずは簡単に着こなせる無地から着ていただきたい。目立ちたくない人にも無地を、お洒落になりたい人にこそ無地を、いっそのこと着物男子全員が無地を着ればいい、と私は思っています。
ただ、着物というものは型が全て同じ衣服であるという特性上、差別化するために柄をつけがちです。ここ、テストに出ますよ(なんのだよ)。
ストライプやチェック、水玉のような柄物がたくさん売られているので、意識せずに買ったものが実は柄物だった!なんてことも十分あり得るのです。
しかし、遠目には無地に見えるような細かい柄が散りばめられたもの(『江戸小紋』で検索すると分かりやすいです)もあるので、完全な無地を見つけるのが難しければ、鮫小紋などの『ぱっと見、無地』な柄ものを選ぶのもおすすめです。
※着物の柄について詳しくご覧になりたい方は、こちらのサイトが詳しく載せてくれています。
参考までに、改めて私が着物コーデを投稿しているSNSも載せておきます。無地でシンプルなものを中心に、柄物も楽しんで着ていますので、よければご覧ください。
自然体な着流し
濃紺かつ無地の着物を買ってきたあなたは、もう何も恐れることはありません。悪目立ちすることのない「普通な着物姿」で、堂々とお出掛けしてきてください!
しかし、コーディネートでご注意いただきたいことがもうひとつだけあります。
なんて声も聞こえますが、私は皆さんに意地悪がしたいわけではないのです。
袴は着ないようにしましょう。最後にお伝えしたいことは、たったこれだけです。
もちろん、袴姿は素敵です。しかし、着物を着ているだけで「結婚式なんですか?」「気品を感じる」「着物を着られるなんてすごい!」と仰々しくみられる昨今では、袴まで装備するとやや過剰な雰囲気を醸し出してしまいます。
あくまで街中で浮かない普通の着姿をゴールにするのであれば、着流しというスタイルが、気負わず自然体な着姿として街になじむのではないでしょうか。
結び
これから着物を楽しもうと思ってらっしゃる方に私からお伝えしたいことは、たったふたつだけ。
思う存分楽しんでいってください!
おすすめは紺の無地着物ですよ~。
これだけです。
着物で楽しい時間を過ごしていただけたなら、わたしの目的は達成です。悪目立ちすることなく、街中に溶け込んでお出掛けできることを祈っております。
しかし、そもそも私は人目につくことは悪いことばかりではないと感じています。高級車や美女を目で追ってしまうのと同様な気持ちで、あなたも見られているのかもしれません。この記事を読んでくれるような勉強家で気配りのできるあなたなら、素敵な着物姿になるに違いありません。
ぜひ一緒に、着物のある暮らしを楽しんでいきましょう。
おわり
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