【宮西達也の世界 ミラクルワールド絵本展】優しさと思いやりのギャラリートーク
2024年(令和6年)6月28日〜9月1日、周南市美術博物館では「宮西達也の世界 ミラクルワールド絵本展」が開催されています。
昨年絵本作家デビュー40周年を迎えられた宮西達也さん。
代表作の「ティラノサウルスシリーズ」や「ウルトラマンシリーズ」などは読み聞かせの定番ではないでしょうか?
今回の展覧会では、人気の絵本の原画を300点近く見ることが出来ます。
初日となった6月28日の開会式の後には、宮西達也さんご本人によるギャラリートークが行われました。
ユーモアあふれる開会式
美術博物館の開館時間の9時30分を前に、多くのお客さんが集まってきます。
報道陣がカメラを構える中、開会式が始まりました。
「絵を見て楽しんだ心を家に持って帰ってもらいたい。そして家族や近所の人に展覧会を勧めて欲しい!行った方が良いよと周囲の人を誘って何度でも足を運んでください」
宮西さんの軽快なジョークに、会場にお越しの皆さんからも笑いが巻き起こっていました。
ギャラリートークとは?
ギャラリートークでは、実際の絵を見ながら作家さんが制作過程や思いを語られます。
ご本人から裏話が聞ける絶好のチャンスです。
宮西さんご自身も、読者と直接関わりを持てる読み聞かせや交流を大切にされているそうです。
開会式に参加した皆さんと一緒に、宮西さんのお話に耳を傾けます。
ティラノサウルスシリーズ
全部で16作品ある「ティラノサウルスシリーズ」は、日本で250万部、世界では2500万部発行されている人気の作品です。
シリーズ最初のお話がこちら「おまえうまそうだな」です。
私が出会った最初の宮西作品もこちらでした。
たまごから生まれたばかりのアンキロサウルスを食べようとして「おとうさーん」と呼ばれてしまったティラノサウルス。
「ウマソウ」と名付けたアンキロサウルスの子どもと心を通わたティラノサウルスですが、別れの時がきます。
「おまえうまそうだな」は二人が別れたシーンで終わります。
「20年経った昨年、書くつもりがなかったウマソウとの続編を書きました。私がおじいちゃんになったことがきっかけです。ウマソウも大人になり父親となりました。あんな別れ方をしてティラノは苦しんで20年生きているなと思い、制作しました」
それが最新作のシリーズ16作品目となる「おまえうまそうだな さよならウマソウ」です。
宮西さんによると2冊で1話なので、ぜひこの2つのお話を続けて読んで欲しいとのことでした。
子どもが成長して絵本の世界から離れていた私には、ウマソウのお話に続きが書かれていたことは初耳でした。
ギャラリートークでこの情報を聞かなければ、そのまま絵の前を通り過ぎていたでしょう。
制作が一番大変だった本
「一番好きな本を教えてくださいとよく聞かれるけれど決められない。けれど一番大変だった本はこれです!」
宮西さんが差し示したのは「ぶたくんと100ぴきのおおかみ」の原画でした。
「どの作品も絵は2週間から3週間で書いています。この作品を書いた時には書き終えると寝込みました。10ぴきのおおかみにすればよかった」
会場から笑い声がおきます。
宮西さんにとって、ぶたとおおかみは特別なモチーフだそうです。
子ども時代にお母さんが読んでくれた「三匹のこぶた」が原点だったからです。
「当時は日本語の絵本がなかったので外国版の絵を見ながら読んでくれたのですが、原書はぶたがおおかみを煮て食べてしまうんです。それがトラウマで、僕のおおかみは絶対にぶたを食べない!」
宮西さんの作品の根底に流れる優しさを知った瞬間でした。
間近で見られるラフ案
ラフ案は絵本を作る時の設計図で、編集者と作家しか見ることはありません。
「ラフ案を見て出来上がった本と見比べて欲しい。文章をたくさん書いているでしょう。絵本は言葉を削って作り、読者が行間を読み取るのです」
「普段見ることが出来ないラフ案をしっかりと見て欲しい」と勧められました。
バラエティ豊かな表現方法
「水彩画やアクリル絵の具、いろんな表現で描きたいから作品によって絵を変えています。ティラノはティラノ、にゃーごはにゃーご。その違いを見て欲しいのです」
この「にゃーご」の絵の前で参加者にクイズを出されました。
「この絵は何で書いているでしょう!」
参加者からは「パステル」「色鉛筆」という声が上がります。
正解は、「クーピーペンシル」でした。
「クーピーペンシルで線をレイヤーのように重ねて描いています」
ティラノサウルスシリーズやウルトラマンシリーズと、雰囲気がまったく違いますね。
ジオラマ作品
1階には大きなジオラマが展示されています。
「こちらのジオラマは別の人が作ってくださったものです。僕が作ったジオラマは2階に展示してあるのでぜひ見てください」
1階の作品を見ながら行われたギャラリートーク。
「会場を訪れて楽しんで欲しい。いろんな楽しみ方をして、それぞれが感性を持って帰ってほしい」
宮西さんの言葉通り、楽しい時間を過ごしました。
作品を見ておられる方にお話を聞きました
ギャラリートークが終わった後に、会場にお越しの方にお話を聞いてみました。
よみがえるお孫さんとの思い出
お孫さんが小学生の頃に読み聞かせで宮西さんの作品に出逢われたこちらの女性。
「孫の面倒を見ていたので、宮西さんの初期の作品を読み聞かせしていました。知らない作品もたくさんありますが、孫との思い出を思い返しながら見ています」
ギャラリートークに参加したのは初めてだけれど、とても楽しかったと話してくださいました。
「推し活グッズ」を総動員
「私の今日の帯はこの絵と同じです。写真を撮ってください!」
そう声をかけてくださった私と同世代の女性。
恐竜が大好きでティラノサウルスシリーズのファンになったこちらの女性。
お着物にもティラノが描かれています!
私もどこにティラノが隠れているか思わず探しました。
肩にかけられたバッグは、読み聞かせボランティアに参加していた頃に使われていたもの。
バッグの中から出てきたボランティアカードにも、ティラノサウルスのシールが貼られていました。
ギャラリートークのためにスケジュールをやりくりして、今回の展覧会に来られたそうです。
買い物帰りの展覧会
自然体で絵を鑑賞されているご夫婦を見かけました。
「いつも建物の前を通ってスーパーへ買い物に行くから、展覧会がある時には立ち寄っています」
「せっかくの美術博物館だからね」
生活圏内に美術博物館がある、周南市の楽しみ方です。
夏のお出かけは、周南市美術博物館へ
私は絵本の原画展に行くと、小さな頃の子どもの声が頭に響いてきます。
何十回と繰り返し読み聞かせをした「ことば」が、体の中に残って浮かび上がるのです。
お話を聞かせていただいた皆さまからも、子育て、孫育てに一生懸命だった頃の思い出話を聞かせていただきました。
子どもや学生、子育て中の親子、子育てが終わった世代の人、それぞれが新しい発見と思い出を共有する優しい時間。
この夏「宮西達也の世界 ミラクルワールド絵本展」で、あなたの知らない新しい世界に出会えます!
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