見出し画像

夏越の大祓の茅の輪は神職さん手作り!周南市遠石八幡宮

この記事は、周南市の魅力をPRする周南市市民ライターの活動として発信しています。

毎年6月に入ると周南市遠石にある遠石といし八幡宮の境内には、夏越なごしの大祓で使われる茅の輪ちのわが置かれています。
人がくぐれるほどの大きな輪。
私が初めて茅の輪を見たのは、京都の神社でした。

昨年6月に遠石八幡宮にお参りをした時、茅の輪を発見!
今回、遠石八幡宮さんにお願いして周南市市民ライターとして茅の輪作りを見学させていただきました。


遠石八幡宮とは?

多くの参拝客が訪れる周南市でも有数の神社である遠石八幡宮。
飛鳥時代、推古天皇の頃に創建された古い歴史のある神社です。

鳥居の向こうにコンビナートが見える景色は、周南市ならではの光景

推古天皇30年(622)の春、「この地に跡を垂れ国民を守らんとここに顕わる」との宇佐八幡大神のお告げによりご神霊を奉安し、和銅元年(708)この地に社殿を造営したのを創建とします。
平安時代には京都の石清水八幡宮別宮となり、 本朝四所八幡の一つとも称されました。

遠石八幡宮公式サイトより

夏越の大祓と茅の輪

境内にある夏越大祓詞奏上会の看板

大祓とは、6月と12月に行われている神社の年中行事です。
6月の夏越の大祓では、無事に夏が越せるように人形ひとがたに自分の名前と年齢を書き、人形の身体を撫でて息を吹きかけ自分の穢れを人形に移します。

人形と茅の輪くぐりの説明書

さらに人形を持って茅の輪ちのわをくぐり半年間の無病息災をお祈りするのです。

夏を健やかに越すための祈り

神事の行われる6月は、疫病の流行りやすい時期でした。
湿度が高くなる梅雨。
気温の上昇による体力の消耗。

無事に夏を越せるように、神様にお祈りをするのが夏越の大祓神事です。

茅の輪と神話

遠石八幡宮の皆様に、茅の輪の由来をお聞きしたところ日本神話を教えていただきました。

昔、二人の兄弟がいました。
兄の蘇民将来そみんしょうらいは貧しく、弟の巨旦将来こたんしょうらいは裕福な暮らしをしていました。
旅をしていた須佐男すさのおの神は、武塔神むとうしんと名乗り一夜の宿をお願いしたのです。
裕福な弟は断り、貧しい兄は精一杯のおもてなしをしました。

数年後、兄の蘇民の元を再び訪れた武塔神は「茅草で輪を作り、その茅の輪を家族の腰に着けさせよ」と言い残して立ち去ります。

蘇民は武塔神の言葉通りに茅の輪を作り、娘の腰につけさせました。
その晩疫病が発生し、蘇民の娘一人をのぞいてみな死に絶えたのです。

生き残った娘の元に現れた武塔神は「私は須佐男の神である。後の世に疫病が発生したならば、お前の一族は『蘇民将来の子孫』と言って茅の輪を腰につけるように」と言ったのです。

茅の輪をくぐる習慣は、備後国風土記びんごのくにふどきに書かれているこの神話から始まりました。

茅の輪作りを見せていただきました

遠石八幡宮の皆様のご厚意で、茅の輪を作る工程を見せていただきました!

材料は茅(かや)

軽トラックいっぱいの茅を下ろします

午前10時、小雨が降る中、軽トラックに積んだ茅を下ろすところから作業がスタートします。

並べた茅の茎の下部、枯れた葉を取り除いていきます。
長いものと短いものに仕分けをして並べるまでが下準備です。

枯れた葉を取り除く作業

茅をどこから取ってこられたのかお聞きしたところ、周南市久米の御神田ごしんでんがあった場所から取ってこられたそうです。

「今は氏子の方が栽培してくださっています。もともと雑草ですから、ほとんどの茅は茎が長くなる前に刈り取られてしまいます。神事のために刈り取らずに作ってくださっているのです」

今年の茅の出来はあまり良くなかったそうです。
「お天気のせいなのか、環境のせいなのかはわかりませんが…」
温暖化の影響かもしれませんね。

境内に並べられた茅

1ヶ月に2回作られる茅の輪

大祓の神事は50年くらい前から行われていますが、茅の輪作りは平成に入ってから始められました。

「大祓の神事は6月30日、6月1日から始めることになりました」

植物なのでどうしても色が褪せ枯れてしまいます。
少しでも見栄えの良い状態でお参りしてくださる方をお迎えしたいと、6月の間に2回制作されています。

刈り取ったばかりの茅の色

「本当は3回作りたいのですが」とのことでした。
全ての工程を神職の方が手作業で行われている姿を見ると、2回作るのも大変な作業です。

作り替える時には古い茅は全て外して、また新しい茅を最初から巻きつける作業を行なっているそうです。

麻紐と茅と枠

20分後、茅の準備が終わると麻紐の用意です。

麻紐を作る作業

腕を使い麻紐で輪っかを作りカット、同じ長さの麻紐を作ります。

出来上がった麻紐
茅の輪の土台の枠です!

枠に茅を置き、力を込めて麻紐で結ぶ作業の繰り返しです。
枠に置いた茅を持つ人。
麻紐で縛る人。
茅を渡す人。
3人の連携プレイで作業は進みます。

支える人、結ぶ人の呼吸をあわせながらの作業

「茅の輪の作成は、規模の大きな神社でないとなかなかできないのです」

茅の輪作りに参加されていたのは、神職の方3名と巫女さん2名。
合計5名の方が、朝から茅を刈りに行き手分けをして作業されています。
人手や茅の栽培をする氏子の方の協力がなければ、茅の輪は作れないのですね。

短い茅で表面を整える

枠の両面に茎の長い茅を巻き終わると、短い茎の茅の出番です。

隙間ができないように馴らしながら慎重に

長い茅と馴染むように手で丁寧に葉の向きを整えながら、短い茅を巻き付けます。
途中で短い茎がなくなったので、長い茎で状態の良いものを使いながら巻き付けの作業が終わりました。

茅の輪の両端の束を作る

残った茅の中から、長さが同じくらいの茅を選び茎の下を縛って茅の輪の両端に飾る2つの束を作ります。

同じ長さになるように並べて作業

少しでも緑の色を保つために、プラスチックの水盤も用意されていました。

ここまでで午前中が終わってしまいました。
長い時間をかけて全て手作りで行われていることは、驚きです!

茅が巻かれた枠

ワクワク体験、茅の輪をくぐろう!

おおよその出来上がりの時刻を教えていただいたので、午後から再度訪問をさせていただきました。
ちょうど組み立てが終わったところです!

組み立て終わった茅の輪

青空に映えるグリーンの茅の輪

朝は小雨の中の作業でしたが、青空が広がってきました。
組み立て終わった時には、少しのぞく青空に茅の輪のグリーンが映えます!

青空と茅の輪の幻想的な風景

鮮やかな緑色は、日が経つにつれ色が褪せてきます。
少しでもキレイな状態でお迎えしたいと、作り替えをされるのですね。

茅の足元には水盤が置かれています

夏越御朱印

翌日、夏越の大祓の御朱印をいただいてきました。
人形に氏名と年齢を書き、息を吹きかけ人形を持って茅の輪をくぐります。
左・右・左と八の字で三度くぐり参拝です。

右が夏越の特別御朱印です

夏を健やかに過ごそう!

6月中の遠石八幡宮では、毎朝8時15分より本殿内にて大祓詞おおはらえことばを神職と一緒に神様に奏上できる大祓詞奏上会が開かれています。
6月30日午後4時からは、大祓式が執り行われます。

6月に周南市を訪れる方は、ぜひ遠石八幡宮にお参りをし神職の方々が丹精込めて作られた茅の輪をくぐってみてください!

【遠石八幡宮の情報】


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?