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実家に帰ったら、10年前の自分が話しかけてきた

最近、実家に帰るたびにやっていること。

それは何かというと、「実家に置き去りになっている、過去の遺物を持ち帰って処分すること」だ。

一人暮らしを始めるときに必要なものはあれこれと持っていったものの、実家の部屋にはまだいろいろなものが取り残されている。持っていかなかったものはつまり不要なものであり、恐らく実家に戻って生活することも今後ないので(仮に戻ることがあったとしても、今使っていない時点で結局不要なのである)、少しずついらないものは売るなり捨てるなりしていこうと思い立ったのだ。

昔のわたしは捨てられない族の一員だったので、いろんなものを捨てることなく部屋に溜め込んでいた。けれど、一人暮らしを始めてからは断捨離に目覚めて、ゆるゆるではあるもののいわゆるミニマリスト的生活を志すようになっていた。

で、ここ数ヶ月間は月に一回実家に行くたびに、少しずついろんなものを持ち出していた。大学時代に着ていた服とか、もう使ってない参考書の束とか、昔やっていたゲームソフトとか。どれも見るたびに懐かしくて吐きそうだったけど、それぞれ紙袋に押し込んでブックオフなど各所に持ち込んだりした。


この年末年始も実家に帰っていた。
さて今回は何を持ち帰ろうかなと部屋をあさっていたら、棚から4冊のノートが出てきた。

「あ、これは……。」

出てきたのは、大学時代に書いていた日記帳だった。

うわー懐かしい!という気持ちと同時に、恥ずかしくて胸の奥がむずむずするような気持ちが湧き上がってくる。なぜかというと、その日記帳に綴ってあるのはほとんどが当時の恋愛のことだからだ。

久しぶりに中身を読みたい、けどいろいろ思い出すから読みたくない、としばらく葛藤した結果、1冊だけパッと開いたページを読んでみた。

そしたら。

見開きページいっぱいの文字とともに当時のわたしが話し始めて、今のわたしは一瞬にして当時の空気の中に吸い込まれた。

たまたま開いたそのページに書いてあったのは、
「彼の用事に付き合う予定があったから講義が終わるまで図書館で待ってたけど全然連絡がなくて、家まで行ってみたら普通にいて、結局出かけるのは取りやめになるわ、なぜか彼が不機嫌でこっちもイライラするわで最悪だった」

という話や、

「彼が元浮気相手の話を普通にしてきてムカついた、彼女に浮気相手の話してくるって一体どういう神経してるんだ」

という話などなど。


それを読んだ現在のわたし。

「え、わたし何でこの人と付き合ってたんだ……?」


本気で目が点になった。

え、だって単なるクズじゃんこれ。なんでこんな人に尽くしてたんだ、当時のわたし。

いやほんと恐ろしい。

まぁ当時愚痴ばかり言いながらも付き合っていたのはわたしの選択だし、なんだかんだわたしも別れるのが嫌だったから付き合ってたんだよなぁ。

とは思うものの。

この日記のわたしがもし友達だったら、「今すぐ別れたほうがいい、目を覚ませ!」ってアドバイスしてしまうかもしれない。だって、全然彼氏に大切にされていないのだから。

ちゃんと自分のことを大切にしてくれる人と付き合ったほうがいい、ほんとうに。そうじゃない人と付き合うのは、自尊心と自己肯定感が削られまくるだけだ。


日記を読んだら当時の空気感とかよく見ていた風景とか感情とかがブワーッと思い出されて、「あぁそうだったな、なんかあの頃は苦しかったよな」って当時の自分を慰めたくなった。

よく頑張ったな過去のわたし。よしよし。

これ以上は感情の荒波に飲み込まれそうだったので、そっとノートを閉じた。


あの頃から10年。
身の回りの状況や付き合っている人もすっかり変わった。

だから、もうこれは処分しよう。

わたしは4冊のノートをカバンに入れた。
持ち帰ってそのまま捨てようと思う。
苦しかった過去と一緒に。

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