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シン・ニホンは日本を変える書籍だ【書評データサイエンティスト】

どーも、消費財メーカーでデータサイエンティストをやっているウマたん(https://twitter.com/statistics1012)です。

個人活動として、スタビジというサイトYoutubeチャンネルでデータサイエンスについての発信をしています。

データサイエンスのハードルを下げて、データサイエンスとビジネスをグッと近づけ、データサイエンスで日本が盛り上がることを夢見ています。

そんな僕ですが、この度安宅さんの書かれた「シン・ニホン」を読んで非常に感銘を受けたので、ここに書評として書き留めておきたいと思います。

この記事は、安宅さんが書籍に込められた思いを自分の血肉としてしっかり吸収し、さらにより多くの人にシン・ニホンを知ってもらいたいという思いで書いています。

動画でも分かりやすく解説しています!

シン・ニホンで伝えたいこと

シン・ニホンで言っているのは、

・今日本やばい状況だよ
・だけど日本まだ頑張れるよ

AI×データというトピックを主軸に置きつつ、少子高齢化・温暖化など社会課題に対しても目を向けて、日本のあるべき姿、さらには世界のあるべき姿について論じています。

前半はAI×データ色が強いのですが後半にさしかかるにつれてAI×データで強い国になるための教育にかける思いやスケールの大きな社会課題の話に発展していきます。

正直言って震えました。

ここまで日本の未来を考えさせられるかつ納得感があり、さらには具体案まで提示されている書籍だとは・・・

前半では、我々読者をやる気にさせる論調でありながら、後半ではそんな思いを一緒に集結させて国にぶつけていくような気概を感じました。

ちなみに著者の安宅さんはデータサイエンティスト協会の理事であり、超絶有名な「イシューからはじめよ」の著者でもあります。

マッキンゼー出身で今はYahooのCSOを務められております。

安宅さんの課題意識とその課題に対する明確な仮説・根拠と、それを解決すべく具体策について非常に腹落ち。

データサイエンスで世の中を変えたい、日本をもっと強い国にしたいという気持ちが高まりました。

本文を抜粋しながらツラツラと個人的な思いもプラスしてお届けします。

AIとは計算機×アルゴリズム×データである

データサイエンティストとして普段AIやデータを触れていながら、改めてAIという言葉の定義を考えさせられました。

AI(人工知能)は非常に広義の概念でありルールベースアルゴリズムからディープラーニングまで該当するんですが、どうしてもAIをアルゴリズムという枠組みの中に閉じ込めていた自分がいたんですね。

しかしこの言葉を聞いてハッとしました。

確かにアルゴリズムがいくら素晴らしくても計算機の能力が低ければ処理時間が莫大にかかってしまい現実的ではないし、もちろんデータがないとAIは何も返してくれない。

改めて考えてみると当たり前なのですが、このAI=計算機×アルゴリズム×データという定義は非常に強い納得感とメッセージ性があります。

そもそもディープラーニング・ディープラーニングと色んなところで騒がれていますが、ディープラーニングの大元ニューラルネットワーク、さらにはパーセプトロンまで遡ると1950年代に提案されてるんです。

もちろんアルゴリズムのブレークスルーもありましたが、ここまでディープラーニングが日の目を浴びるようになった背景には様々なデータが計測・蓄積できるようになり、さらにマシーンパワーの大きな向上があったことは忘れてはいけません。

技術ホルダーとデータホルダーの協働

先ほどの定義

「AI=計算機×アルゴリズム×データ」

から分かる通り強いAIを作るには、データが必要です。

技術ホルダー(計算機×アルゴリズム)とデータホルダー(データ)の間に溝があると個々がいくら強くても意味がありません。

そのために安宅さんは、技術ホルダーとデータホルダーの溝を徹底的に埋めろと言っています。

どこよりもデータをつながりやすくして、データ利活用の地平を切り開く国や市場が、人類の未来を生み出す場となる可能性が高い

確かに安宅さんがCSOを務められているYahooでは様々なデータの連携を促進しています。

ソフトバンクグループ(Yahooはソフトバンクグループ傘下)という範囲で考えると業界横断の様々なデータの利活用が進んでいます。

ただ、この技術ホルダーとデータホルダーの話にはビジネスホルダーも入れて考えていきたいと思っています。

結局AIは手段でしかなく、それを使って何をするか。

大きな価値を生むためには、ビジネス観点が必要。

すなわち

価値=AI×ビジネス

様々な不連続的な変化

AI×データが世界にもたらす変化・インパクトは非常に大きい一方で、他にも大きな変化が世界規模で巻き起こっています。

・人間すらデザイン可能な時代に突入

2018年11月に遺伝子改変した胚から本物の人間の子供が生まれました。

なんともう人工的に人間をデザインできる時代に突入しているんです。

1990年代からインターネット革命が起き、世の中はものすごいスピードで変わり、既存業界を大きく刷新しました。

IT業界から多くの富が生まれました。

次にこのレベルのブレークスルーが起きるのはゲノム業界だと思っています。

ゲノム業界のブレークスルーにより世の中の価値観が大きく変わるでしょう。

もうすぐそこまで来ています。

・地政学的な重心のシフト

世界経済の重心が急速にアジアに戻りつつあります。

経済的に押さえつけられてきた中国とインドの、GDPは大きく慎重しており、まもなく米国を抜く日も近いでしょう。

現在米国と協力な同盟関係にありながら中国やインドと地理的に近い関係にある日本は非常に有利な状況なんですね。

未来=夢×技術×デザイン

なんでこんなにも抽象的な概念を因数分解するのが上手いんですか・・・

さすがマッキンゼー。

未来を夢と技術とデザインに砕いたこの定義は言い得て妙だなと思いました。

未来を切り開いていくためには、技術だけではダメです。

夢とデザインがセットにされてこそ未来になるのです。

先ほどのAIはこの技術に該当します。

どんな未来があったらいいかなという夢(課題解決に向けた強い意志)に向かうための道をデザインしてそれを達成できる技術があってはじめて未来が実現するんです。

未来は予測するものじゃないんです。

未来は作るものなんです。

日本の状況を俯瞰して見ていく

世の中の変化とAI×データの流れ。

そして未来を切り開いていく力。

それらについて見た後に、我々日本の状況について見ていきます。

日本は世界規模で圧倒的に一人負けをしている状況なんです。

1人当たりGDPは15年間ほとんど横ばいで伸びていません。

この原因はICTセクターにあるというイメージをみんなが持っています(僕自身もIT産業で乗り遅れたイメージを持っていました)。

しかし実情は違うんです。このAI×データを既存産業(オールドエコノミー)に全く活かせていない。

オールドエコノミーこそが日本の経済が伸びていない根本的な理由。

確かに日本では旧態依然としたオールドエコノミーの企業がなかなか変われず苦労しているイメージが物凄くあります。

名ばかりのDXが横行しているんです。

僕自身オールドエコノミーの大企業に所属しながら日々社内のデジタル改革を進める役を担っているのでめちゃくちゃ分かります。

日本に希望はないのか、いやこれからなんだ

さて、ここまで来ると圧倒的にAI×データの流れに乗り遅れた、イタイ先進国としての立ち位置が浮き彫りになってきた日本ですが、本当に希望はないのでしょうか?

安宅さんは言います。

いやこれからなんだ、と。

18世紀からはじまった産業革命を振り返ってみると日本の立ち位置が明確になります。

エネルギー革命が起きて世の中を変えつつあったその時、日本は鎖国状態。

エネルギー革命なんて蚊帳の外。

それから数十年経ち、19世紀後半になってやっと鎖国を解いた日本は、海外の国々から多くのことを学び真似て、大きく成長しました。

実は日本はそういう国なのです。フェーズ1の技術革新には参加せず、その後のフェーズで大いに真似て追いつく。

そう考えると我々は今がチャンス。このAI×データのフェーズ1は終わろうとしています。

ここで産業革命の時のように巻き返しを図れるか。

それが我々に課せられた課題なのです。

日本は妄想ドリブンで突き抜ける

日本は世界的に見ても、妄想の力を若い頃から養うことができる素晴らしい国です。

日本には漫画という文化が根付き、ドラえもんや鉄腕アトムなどSFの世界に子供のころから触れます。

これがある種、日本人の強みであると安宅さんは言います。

妄想という力は、未来=夢×技術×デザインを切り開く上での夢に大きく関係してきます。

日本人の妄想力を使って夢を形作り素晴らしい世の中を切り開いていきましょう!

若い人に託す

実は、日本は大事な局面で若手に託してきた国。

明治維新の時に海外視察に派遣された岩倉使節団のメンバーは30代から40代。

まさにそのような若手がその後の日本を切り開いていき経済大国にしたのです。

今もまさにその時。

僕自身もその一旦を担うべく若者でありたいと思いました。

シニアの方々が若手をサポートして引き上げてくれる包容力を持つことがこの若手に託すという意味合いでもあります。

これからの人材に求められることとその土壌作り

世の中の変化とそれに対して日本に希望があること、そしてその日本を変えるためには若い人に託すことが大事であるということが分かりました。

しかしその若い人材はどのような人材であるべきなのか、どのような土壌を作っていくべきなのか。

これからの人材に必要なのは以下

データ×AIの持つ力を解き放てること、その上でその人なりに何をどのように感じ、判断し、自分の言葉で人に伝えられるかが大切だ。
その基礎になるのは、生々しい知的、人的経験、その上での多面的かつ重層的な思想に基づく、その人なりに価値を感じる力、すなわち「知覚」の深さと豊かさだ。

データ×AIを上手く使いこなしそれをビジネスに活かすことのできる能力。そしてそこに自分なりの解釈から知覚して未来を切り開くことのできる人材。

特定領域の知識を深く持ちながらデータ×AIそしてデザイン素養を持つ人間をどれだけ生み出せるかが我々の未来に直結する。

残念ながら我が国日本は、そのような人材を形作る体制が整っていません。

言葉を選ばずに言えば、老人に投資して若者の未来を摘み取る構造になっているのです。

・研究・教育期間にかけるリソース配分
・若者にかけるリソース配分

を見直すときが来ています。

そうしなければ、このせっかくのフェーズ1が終わるチャンスに乗れず、ダサい日本で終わってしまうのです。

ここら辺のリソース配分をどのようにしていくべきか・シニア層の生活を脅かさない形で実現するにはどうすればよいかに関しては教育観点でものすごい論じられています。

ここら辺の話は非常に納得性が高く面白い論点で語られているので詳細はぜひ本を手に取って読んでみてください。

僕自身修士卒なのですが、確かに米国のように修士・博士が輝く社会になっていないことには根本から変えなくてはいけないと思っています。

国の教育・研究機関にかける考え方を変えなくてはいけない時が来ているのでしょう。

風の谷的都市構想

データ×AIの力で世の中を変えていく上で一緒に考えていかなくてはいけないのは、SDGsに代表される社会的な様々な課題。

データ×AIの力を解き放ち、そして持続可能な社会を実現するために、安宅さんは「風の谷のナウシカ」的な都市構想が大事だと言います。

風の谷のナウシカと対比で使われているのは「ブレードランナー」的都市。

それは大都市に富・リソース・人が集中して、地方は崩壊している世界。

そのような世界観では持続可能な社会は体現できません。

風の谷のナウシカでは、バイオテクノロジーが発達して世界を焼き尽くした1000年後の世界が描かれます。

菌類が世の中を埋め尽くし、風上で菌を避けることのできるいくつかの地方都市が発展している世界。

風の谷のナウシカ的な都市構想では、地方都市にスポットが当てられます。

都市部にはデータ×AIで自動化されシニア層が住みやすい世界があり、その一方で活性化された地方都市には若者が住んでいる。

一極集中的な都市構想ではなく、各地方が有機的につながりながら活性化して全体を盛り上げていく。

そんな都市構想があるのです。

ここの話は非常に面白いのでぜひ書籍「シン・ニホン」を手に取ってみてください。

まとめ

だいぶ長文になりましたが、ここでは語ることのできなかった様々なことがこの「シン・ニホン」には詰まっています。

ザックリまとめると、

・日本今やばいけど今がまさにチャンス(フェーズ1)
・データ×AIと持ち前の妄想力で未来を切り開け!
・若者を育て若者に託すことのできる構造変換を!
・SDGs的な観点も持ち合わせた都市構想

正直、今まで読んだ本の中でベスト5に入る本かもしれない。

それくらい衝撃と感銘を受けました。

ぜひ読んでみてください。

データ×AIで日本にもう一度光を!

そして世界を変えましょう!

以上、データサイエンティストのウマたん(https://twitter.com/statistics1012)でした!

スタビジというサイトYoutubeチャンネルでデータサイエンスについての発信をしていますので、こちらもよろしくお願いします!





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