キャッチボールを終わらせる”情報の差”の3つの正体
会話のキャッチボールを終わらせる、3つのギャップ
キャッチボールが不用意に終わる時、相手から来たボールを不用意に打ってしまう場合があることを書いたキャッチボールは難しい?打たないスキルは重要だ。ここで言ったキャッチボールを終わらせる3つのギャップのうち、「情報の差」について考察したい。
コミュニケーションのバランスを欠く3つのギャップ
1.情報の差
2.熱量の差
3.パーソナリティ(コミュニケーションスタイル)の違い
会話を終わらせてしまう”情報の差”とは何か
3つギャップのなかで「情報の差」が一番、複合的に要素が絡まっている。まず”情報”の定義が難しい。何を持って”情報”とするか、情報が”共有される”とは...。興味は尽きないが、一旦、認知科学的なことは脇に置く。キャッチボールを終わらせる”情報の差”を紐解き、どうすればインタラクティブ性を保ちながら会話を続けられるのか。
会話のキャッチボールは、
「投げる」(情報を提供する、質問する)、
「受ける」(情報を理解する、質問に答える)、
「投げ返す」(答えるまたは質問する、さらに情報を提供する)
で、ひとつの流れ。
キャッチボールが続く=この流れを交互に続けられるということ。
情報の提供、理解、質問、回答で情報の差を調整しながら会話を続けられる時、以下の3つの要素の調整ができていることに気づいた。。
(1)十分な(情報)量
(2)文脈
(3)興味・関心
(1)”情報量”を整えて、会話の基礎代謝をあげる
会話のキャッチボールで交わされる情報で、これらについて十分な情報量を提供することが、会話をスムーズにする。
A:自分と相手に関すること
B:会話の背景や目的に関すること
C:話されている内容に関すること
それぞれの情報が、何を促進するかというと、
A: 自分と相手に関する情報から、価値観・経験・立場・スキルなどを知ることができ、相手の話の背景を想像したり、質問が設計しやすくなる
B: 会話の背景や目的を共有することで、改めてコミュニケーションへの合意を確認することで安心し、共有した目的に向けて会話を運びやすくなる。
C: 話されている内容に関する情報は、AとBをヒントに差を互いに埋めていこう。相手が理解しやすい、または質問しやすい情報粒度を意識し、十分な
情報量を提供しよう。AとBの情報共有を丁寧にしておくと、質問がしやすくなり、Cの情報が会話をとおして調整しやすくなる
つまり、丁寧に自己紹介し、会話の目的を合意し、話されている内容についての情報の差をなるべく埋める!.... という当たり前のことなのだが、これを形骸化したプロセスとしてただやっているだけではもったいない。
情報の非対称性はどこにでも起こっている。それぞれの情報が、どのように会話をスムーズにするのか、しっかりと意識して、新たな気持ちで相手に向き合いたい。
(2)”文脈”の理解と提供で会話を発展させる
人は、個人的経験や価値観だけでなく、短期・長期の様々な時間軸のなかの自分や物事、人との関係性、所属するコミュニティなど、様々な文脈を抱えている。
ここでいう文脈は、単なる会話の流れだけなく、情報の受け取り方に影響する会話や人物の背景のこと。
文脈が意味(情報がさすもの、あらわすもの)や解釈を決める、といっても過言ではないだろう。例えば、”復興”という言葉に含まれる情報や意味は、被災した経験がある人とない人では、全く違う。
また、脳は情報を取捨選択している。だから、ある人にとっては有用な情報でも他の人には無用であるし、”情報”になるものが現象として現れていても、それが”情報”になるかどうか、その情報を受け取るかどうかは、そこにレセプターがあるかどうかで決まる。そのレセプターの有無も、文脈によって左右されている。
だから、”情報の差”を考える場合、”文脈”は重要な要素だ。
特に、会話に影響する文脈は
・関連する知識・経験・スキル・理解
・会話への参加背景
・互いの関係性
・相手への興味
・置かれている立場
・抱えている責任
・価値観
・ミッションやビジョン
などがあるだろう。
文脈を知ることは、相手の価値観の軸や多様性を知ることでもある。
相手に興味を持つことも、互いの文脈を発見することが手伝ってくれる。
相手の文脈を、自分の文脈になぞらすぎたり、見えているものだけで決めつけてしまうと、情報の差が開き、未完了のキャッチボールが連なってしまう。特に、自分が所属している業界、社内、部署内など、特定の関係内のみの文脈に慣れすぎると、それが常識となり客観や俯瞰が難しくなることに留意し、他者との会話は、客観性をもたらし、文脈を増やすチャンスでもあると考えよう。
キャッチボールを意識し、情報提供・質問・答えのやり取りを繰り返すことを通して、その人が抱える多様な文脈を発見し、互いに情報への意味づけを調整しながら理解をすり合わせ、信頼を築きたい。
また会話なかで、新たな文脈を提示し、互いに物事への理解度を高めることも、会話の創造性を高め、やりとりを盛り上げてくれる。
会話が面白い人というのは、多様な文脈を持ち、それを丁寧に提供できる人ではないだろうか。
自分のまた目の前の相手の価値観をフラットに見ながら、多様で無数にある文脈を尊重しながら、互いの情報の差を埋めると、会話の価値を高められそうだ。
(3)結局、”興味・関心”が情報の差を埋める
(1)情報量、(2)文脈を引き出すのは、(3)興味・関心だ。
相手との共通点や相違点を楽しみながら、情報を提供し、引き出し、時間軸、内容、情報粒度で文脈を行き来する。
自分、相手、会話の内容に興味を持ち続けること、持ってもらうように配慮することは、会話の創造性を広げるのに不可欠だ。
1対1の会話のキャッチボールでは、”情報の差”をフックに会話を進めたり広げたりすることができる。互いに情報を提供し、多様な文脈の存在を許容し、興味・関心を引き出しながら、キャッチボールを続けられるバッテリーを増やしていきたい。
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