彼女のような原体験なき我々は最後に何処へ帰るのか? 緻密で深いまなざしに見守られる読書
話はスターリン時代のソビエト、1930年代からはじまる。
7歳から27歳までの20年間を、狂気に近い熱中で読書に耽った(本を読むことの天才ともいえる)女性ソーネチカ。彼女の読書は『軽い狂気の要素を帯びてきて、眠っている間もそっとしておいてくれなくなった。夢まで、「見る」というより「読む」といった方が良いような塩梅』であり、『猜疑心の強いドストエフスキーの不気味な奈落の底にしずんだかと思うと、木立が影を投げかけているツルネゲーネフの並木道に浮かび上がったり……』と「偉大なロシア