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自由詩『天気の絵』

今 雨が
ほら 雨が
でも今日の雨は 土のにおいしかしない

見えないが 雨が降っているのを感じることはできる
皮膚に当たると ちょっと生暖かいから
天然のシャワーが私を洗浄する

滴り
洗浄する
滴り
洗浄する
滴る雨の洗浄
滴る血の戦場
滴る
滴る
滴る
日々激しく滴る

花は笑い 犬は泣き 空気は今日もたっぷり淀んでいる
夏は苦しく 冬も耐えきれない
春と秋は 疲弊した都市の地下に潜って眠っている

四足歩行のベンチは 一枚の紙きれに託した
雨だれに濡れた紙きれの 白い絆創膏
純潔の白色光
矩形の罠
ノートでできた枠

不動のベンチは 雨音の底で 紙きれに描かれる模様を夢見ている
限りなく繊細な筆致で滴りながら
落下のリズムで描きだされる 透明な絵を

それは自殺した雨たちの骸だ
暗い夏の日に 紫陽花たちが赤でも青でもなく
真っ白に咲き乱れているのは そのせいだろう

花の涙に集まる甲虫の姿は見えない
描いたそばから消え去る 雨の輪郭のように

"誰がこれを描いたの?"と聞かれたら こう答えればいい
"今日の天気"

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