ひなちゃんと公園デート

 最近ひなちゃんが怒りんぼになっている・・・。
寝返りができるようになった頃から、以前よりも感情が豊かになった。声を上げて笑うことも増え、ますます一緒に遊ぶのが楽しくなっている今日この頃である。
特に、ひなちゃんと顔を突き合わせて「ベンベベン」とかアホなことを言うと大笑いしてくれる。笑ってくれたらなんでも嬉しいものだ。
 そしてひなちゃんが怒ることも増えた。ずっと家にいたりだっこしなかったりすると、明らかに泣いているのとは違う意思のこもったうなり声を出すようになった。それもまたかわいいのだが。
ただ少々困りものなのが外出時。だっこひもの居心地が悪かったりすると、所かまわずキーキー叫びだす。まるで
「大きい声出すぞ!いいのか!」
という最強の脅しのように。
静かなところで大きな声を出されるのも確かに困るのだが、歩いている時に顔の前でキーキー泣かれた時にはたまらない。我々の場合それだけで歩行に支障をきたす。真夏にたくさんのセミの中を歩いているような感覚だ。
お出かけの時にもそろそろひなちゃんの気を紛らわすおもちゃが必要らしい。
いずれにしても、感情が豊かになっているのは嬉しいことだ。眠いとかお腹が空いたという生理的な欲求だけでなく、机の上のお皿に手を伸ばしたり外に出たいという意思表示がはっきりわかるようになったのは大きな成長だと思う。
 先日もこんなことがあった。その日ママは一日外出をしていて、ひなちゃんと二人で家で留守番をしていた。午前中は機嫌よく一緒に遊んでいたのだが、午後になると僕と一緒に遊ぶのが飽きたのか僕の顔に飽きたのかは知らないが、ウーウー怒りだした。
だっこしてもひなちゃんの怒りはなかなか収まらない。その時点でひなちゃんの言いたいことはだいたいわかっていた。基本的に毎日外には出るようにしているので、お出かけがしたかったのだろう。
そこで二人で近所の公園に行くことにした。なんやかんやでひなちゃんと二人だけの外出はこれが初めてだ。
だっこひもを付け始めたあたりからひなちゃんのテンションが高くなる。それまでのうなり声とは明らかに違う楽しいことが始まるぞというご機嫌な声だ。やはりよくわかっている・・・。
だっこひもにひなちゃんを入れ外に出ると、ひなちゃんはいつものように頭を右に左にグルグル回しながら周囲を見ている。そんなにせわしなく動かして首が痛くならないものか。
楽しそうなひなちゃんをだっこする僕の方はというと、いつもの道を歩いているだけなのに心なしか緊張してしまう。何しろひなちゃんを前に抱いているのだ。電信柱や車止めなどにぶつからないように細心の注意を払わなければならない。
白杖をいつもより大げさに振ってみたりして、どれだけ普段雑に歩いているかを実感する。ゆっくり歩いて5分ほどで、近くの公園に到着した。
 公園には小学生と思われる子供たちが元気に遊んでいた。入口から入って少し歩いたところにベンチを見つけ、そこでしばしの休憩。その間もひなちゃんはグルグルと頭を動かしている。
だっこひものままブランコに乗せてあげようかとも思ったが、あいにくブランコは人気だ。次から次へ子供たちが遊んでいる。
なにせチキンなパパはその輪に入るのをあきらめて、遠巻きにブランコを見ていた。きっといずれはひなちゃんが
「ワタシもブランコ乗りたい!」
と大騒ぎをするに違いない。そうなったらもうチキンだのなんだのと言っている場合ではないのだろう。
そんなことを考えていたら、子供たちがボールを蹴って遊びだした。ちょうど20分ほど休憩しただろうか、ボールがひなちゃんのところに飛んできてもいけないと思い、スゴスゴと退産した。
 僕にとっては初めてのお使いのようなドキドキの散歩はこうして終えた。僅か30分ほどの短い外出だったが、ひなちゃんにとってきっと気分転換になったことは間違いない。
そして今回のお出かけを、僕が勝手に作っている「ひなちゃんとやった初めてのことリスト」にも書き加えておきたい。

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