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最期の優しいうみ。

────数年前、オレの彼女が亡くなった。
原因は、オレにある。
オレが、あの日…彼女の優(ゆう)を誘わなければ…

時間はさかのぼり、数年前。
オレは優に海に行こうと誘ったのだ。

そして海___

「いやあ、海なんてちょう久しぶり!」

と、優。
優はギャル系の口調で話すが、性格は真逆。
努力家で真面目で、友達思いの優しいヤツ。
おまけに笑顔も可愛い。最高。

「ねぇ!早くしないと日が暮れる!」
「んなわけないだろうが」
「でも…」
「?」
「きみといれる時間が少なくなるのは…イヤ。」
「!!?」

目が眩んだ。
オマケに頬も赤い。

「ほら、行くよ!時間は有限!」
「ちょ、待てって!」

本当に楽しかった。
楽しかったのに…

あるとき、浜辺付近がとても騒がしかった。
オレらも気になったから、近寄ってみた。

「どうしましょう!!」
「もう流されちゃってるわ!!」

なんだか慌ただしい。
目を離した瞬間、優が…

「どうしたんですか!?」
「ちょ、優?!」

そこから、いろいろ話を聞いた。

「…」
「優、もう戻ろう?」
「イヤだ」
「?!!」
「アタシ、あの子を助ける!」
「!?」
「やめろ優!危ないだろ!」
「アタシより生きた人生少ない子を見殺しになんて、できないよ!」
「優…」

オレの彼女は頑固だ。
きっと、優はもう…誰にも止められない。

そして優は、流された子を助け、優自身が流されてしまった。
優は大声でオレに向かって

「必ず戻る!あんたを残したまま死ぬわけないじゃん!」
「優…」
「必ず戻れよっ!!」
「当たり前だっての!」

戻るって言っただろうが。
嘘つき…バカ…!!!

「…っざけんな」

でも、本当は、本当は…
悲しくて、泣きたくて、しかたなかった。

それからオレは、悲しみに暮れる毎日だった。

数日後、優は亡くなったと伝えたれた


─────それから現在

朝、死んだはずの優から手紙が来た。

─きみへ─

*.゚まず最初に、きみとずっといれなくて、ごめんね。
でもアタシ、不治の病だったの。
医者からは、二十歳までに死ぬって。生きられないって言われた。
最初は全然実感がなかった。
でもいざ死んでみると、案外実感するもんなんだね笑
そして数年前、きみが海に誘ってくれたよね。
あのとき、本当に嬉しかった。
もしかしたら、きみといれる時間は、これで最期かもしれないって思った。
神様は優しくない。
本当にきみといれる時間はあれで最期だった。
でもアタシは、後悔してない。
小さい子を助けられたから…!
それと、病気に負けて死ななかった。
それでアタシは十分だった。
今までアタシとすごしてくれてありがとう。
この思い出は、死んでも絶対に忘れないから!
来世も、ずっと!
またね!青想(あおい)!*.゚

その瞬間、なみだが溢れてきた。
オレの中でいろんな想いがぐちゃぐちゃになって。
次第に、もう一度
もう一度だけ、優に会いたいと強く思った。
そして、今まで優に呼ばれたことのないオレの名前。

「最期の最後に呼ぶとか…まじ可愛い」

泣かないようにするために
彼女に心配かけないために。
オレは、そんなことを口にした。


二十歳になった頃

「本当に成人式、抜け出しちゃうなんて」
「いいんだよ、それで」

今オレは、新しい彼女を作った。
前、優に、こんなことを言われた。

『もしアタシときみが別れたら、きみは新しい彼女を作ってよね』

ほんと、オレの彼女可愛い天使。

「なぁ羽望(うみ)、行きたいとこがあるんだ」
「わざわざ成人式抜け出して行きたい場所?」
「…悪いが、付き合ってくれよ」
「あなたの望みなら、いいわよ」
「…ありがとう」

__海__

「ここ…海?」
「あぁ、そうだ」
「なんだが廃れてるような…」
「ここ、元カノと来たことある場所なんだ」
「今カノがいる前でそんなこと言うとか…」
「っ、悪い悪い笑」
「別に、いいけど」
「あんたが安心するなら、いくらでも元カノの話くらい…聞いてやらないこともないけど」

みたいな感じで、今カノの羽望には事情を話し、承諾の上付き合っている。

「ははっ、ありがとな!」
「っ!」
「ふんっ!」

優と最期に来た場所。
とても、懐かしい。

(あの時も、空がこのくらい青かったっけ…)

誰よりも優しい優。
大きな羽で理想の自分になりたいと望んでる羽望。

「また、ここに来ような」
「…えぇ。」

あのとき見た景色。
今度は、きみを…羽望を幸せにするからな。

この景色は、何年経っても、いくつ歳をとっても

──────絶対、忘れない。