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野球は社会の「ニーズ」になれるのか?

こんにちは、ベースボール・レジェンド・ファウンデーション(BLF)代表の岡田真理です。

前回は、2013年に発生したボストンマラソン爆弾テロ事件で、ボストンを拠点とするメジャーリーグ球団のレッドソックスがテロの負傷者や犠牲者の遺族に対しどんな働きかけをしたかを紹介させていただきました。

では、なぜレッドソックスは、このような不測の事態に、あれだけ迅速に大きなアクションを起こせたのでしょうか?

実は、レッドソックスには「レッドソックス・ファウンデーション」というNPO機関が存在します。プロスポーツチームが独自のNPOを保有することはアメリカでは普通にあることですが、レッドソックス・ファウンデーションはその中でも特に地域貢献に力を入れている印象があります。このレッドソックス・ファウンデーションを通じ、常日頃から当たり前のように地域への支援活動を行っていたからこそ、たとえ不測の事態であっても迷うことなく行動を起こせたのです。

レッドソックス・ファウンデーションができたのは2000年代に入ってからのことですが、チームとチャリティー活動の歴史は70年ほど前に遡ります。きっかけは、ジミー君(仮名)という小児ガンの男の子の支援を球団が行ったことでした。

のちに「ジミー・ファンド」という小児ガン支援団体が設立されますが、球団は今も毎年のように同団体主催のチャリティーラジオ番組に協力しています。視聴者が番組に電話をかけるだけで団体への寄付ができ、選手や選手の家族が率先して電話の応対を行っているそうです。

レッドソックス・ファウンデーションでは、ジミー・ファンド以外にも、下記のような活動を行っています。

🔶経済的に困難で十分な医療が受けられない人や、薬物中毒の家族を持つ人などへのサポートを行う「ディモックセンター」の運営
🔶経済的な事情で教育を受けられない子どものために奨学金を提供するスカラーシップ制度
🔶戦争で負傷したり、精神的なダメージを負ったりした兵士たちの生活をサポートする「ホームベースプログラム」の実施
🔶野球やソフトボールの機会を提供する「RBIプログラム」
※野球の技術を教えるというより、野球をやることにエネルギーを向けさせることで非行に走らせないようにすることが目的で、読み聞かせなどの学習プログラムなども含まれている。

着目すべきは、ジミー・ファンドも含め、どれも「野球振興」には直接あてはまらないことです。

私が渡米した2013年頃は、日本で野球選手の社会貢献活動というと、まだまだ野球振興、スポーツ振興に関わることがメインでした(今はその傾向は変わりつつあります!)ですから、レッドソックスをはじめとするメジャーリーグの球団が、野球とは直接関係ない一般市民への支援に、野球振興と同じくらい力を注いでいること(しかも組織的・継続的に)は、私の目にはとても新鮮に映りました。

「プロ野球チームの支援があったおかげで、大学に行けることになった」
「プロ野球選手が支援してくれたから、適切な医療を受けることができた」

そんな人々が増えていけば、野球の"社会的価値"はもっと高まるのではないか?と本気で思ったのです。

野球によって救われる人が増えれば増えるほど、野球は日本人にとって「なくてはならない存在」になる。そうなれば、野球は単なる「スポーツ競技」や「娯楽」の域を超越した存在になる!と確信しました。

そんなわけで、BLFのスローガンを「野球で、人を救おう。」にしました。

果たして、野球は人々の「ニーズ」の域に達することができるのか。それがBLFのミッションでもあり、今まさにプロ野球に課せられている使命ではないかと感じています。


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