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God Save the King③Coronation of Charles III

チャールズ3世の戴冠式から早や1カ月。いや~ほんとに時が過ぎるのが早いです。年齢のせいもあるかもですが。
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これだけチャールズ王の記事を書いていると、王のファンだと勘違いされそうですが、そうではないです。でも、嫌う理由も攻撃する理由も私にはないです。
ダイアナ妃のことは悲しい結末でしたが、愛憎は片方だけが悪いわけではないですね。ダイアナが求める愛を、チャールズは与えられなかった。チャールズが求める愛を、ダイアナは与えられなかった。与える愛と受け取る愛のバランスが悪かったのです。
チャールズ王もカミラ王妃も、不倫の代償はじゅうぶんに払ったんじゃないでしょうか。私はもう許してもいいんじゃないのと思っています。

さて今回の記事は、戴冠式で気になったドレスとその他の象徴について書いてみます。


白へのこだわり

ゲストは民族衣装やカラフルな色のドレスを着ておられましたが(紀子妃はお着物でした)、王室、王族の女性たちは、基本的に「白い」ドレスを着用されていました。

「白は感覚を刺激する色ではありませんが、白は書かれるのを待っている空白のキャンバスを表しています。それは完全に反射する色であり、シンプルさを生み出し、前進する道を切り開きます。」

エリザベス女王の戴冠式では、王族の女性たちはティアラをつけて豪華なドレスを着ておられたそうですが、今回、王族の女性たちは白にこだわっておられたように感じました。白は聖職者が着用することが多いので、宗教的意味も強めているのかなと思いました。

カミラ王妃の介添えの女性二人もシンプルな白いドレス。
エリザベス女王の戴冠式
エジンバラ公爵(エドワード王子)夫妻

エジンバラ公爵(チャールズ3世の弟エドワード王子)夫妻は、公爵はガーター騎士団のローブ、公爵夫人はロイヤルヴィクトリア勲章のマントを着用されていました。

グロスター公爵夫妻

今回の戴冠式では、人種やジェンダーの多様性、宗教の多様性もテーマになっていました。

アセンション合唱団
戴冠式では女子の合唱隊は初めて。

草の冠ような髪飾り

王族の女性たちは、ティアラの代わりに白い髪飾りをつけていました。
最初は、男性王族はビジネススーツ、女性王族はティアラをつけないというドレスコードだったそうです。しかし、王族から反対があり、騎士のローブやマントを着用することになったそうです。

ウィリアム王太子夫妻
シャーロット王女とルイ王子

とくに目を引いたのは、キャサリン妃の月桂樹の冠のような髪飾り。
たぶん、ケルトのドルイド僧の月桂樹の冠(コロラリア)を模したデザインだと思います。
デザイナーは、ジェスコレットxアレキサンダーマックイーンとのこと。
と言っても、ブランドに疎い私にはまったくわかりませんが。
シャーロット王女の髪飾りも同じデザイナーです。

イギリスを象徴する花々の刺繍

キャサリン妃のドレスもアレキサンダーマックイーンのデザインで、写真ではよく見えませんが、英国を象徴するバラ、アザミ、水仙、シャムロック(クローバー)が刺繍されているそうです。
それから、ダイアナ妃の形見のイヤリングをつけられています。ネックレスは、エリザベス女王から譲られたものだそうです。

キャサリン妃は、いつもイギリスのデザイナーだったり、庶民にも手が届くファッションブランドやZARAを愛用されていることが多い感じですね。
行事に合わせて、さりげなくダイアナ妃やエリザベス女王へのオマージュを表すアクセサリーや色を選ばれています。そういう配慮をされるところも、キャサリン妃のファンが多い所以かもしれません。

A Recap Of Kate Middleton's Coronation Fashion In Photos (womenshealthmag.com)

カミラ王妃のローブの裾を持っていたのは、カミラ王妃のお孫さんたち。

カミラ王妃のドレスにはデイジーや勿忘草、英国を象徴するバラ、アザミ、水仙、シャムロック(クローバー)が刺繍されています。
デザイナーは、カミラ王妃の長年の友人であるイギリス人デザイナー、ブルー・オールドフィールド氏。
2匹の犬は、チャールズ国王が別荘で飼っている愛犬だそうです。

カミラ王妃は、戴冠式用のダイヤモンドのネックレスとイヤリングを身に着けていました。1902年以来、すべての女王が着用したものだそうです。

カミラ王妃の戴冠式のドレス–ロイヤルセントラル (royalcentral.co.uk)

エリザベス女王のドレス

エリザベス女王の戴冠式のドレスには、イギリスを象徴する草花のほかに、従属していたカナダのカエデの葉、ニュージーランドのシダ、セイロン(現在のスリランカ)とインドは蓮の花、パキスタンは小麦などで表されています。

シダといえば、私はスラブの民間伝承で1年に一度、夏至の夜に咲くと言われる幻のシダの花を思い出します。その花を見つけられた人は、幸せで豊かになることが保証されているという言い伝えです。でも、マボロシの花なんですよね。
シダには魔法の特性があると考えられ、悪霊を追い払ったり、シダを燃やして出る煙がヘビなどを追い払うと考えられていたそうです。

ペニー・モーダントさんのドレスにもシダが刺繍されていましたね。
ドレスの色は、ポセイドンカラーというそうです。

国家の剣を捧げ持つペニー・モーダント枢密院議長

古いものを再利用

孫のジョージ王子が、裾を持つ付き添いの一人を務めています。
ジョージ王子(9歳)

国王のマント(ローブオブエステート)は、祖父ジョージ6世が着用したもので裾の長さが6mあるそうです。
カミラ王妃のローブも、エリザベス女王のために作られたローブを直したもので、カミラ王妃のサイファー(御印)、ミツバチやカブトムシ、エリザベス女王のお気に入りのスズランなど、さまざまな植物が刺繍されています。

カミラ王妃のローブの刺繍

戴冠式では、70年以上前のものをほとんど再利用していて、新しく誂えたのはカミラ王妃のドレスぐらいだったと思われます。
さすが新国王はケチと言われるだけあって、20代から環境問題に強い関心を抱き、熱心な環境保護主義者と言われるだけあって、再利用して使うことを率先されています。持続可能な世界を目指しておられるんですね。

それでも、エリザベス女王の戴冠式よりも規模を縮小したにも関わらず、警備費などで多額の費用がかかったのは、国民の負担を減らしたいと思っている新国王には頭が痛いところかもしれません。

国民が生活費の高騰にあえぐ中での戴冠行事のため、チャールズ3世は、前回のエリザベス女王の戴冠式より参列者数を4分の1に削減し(8000人を2000人に)、パレードの距離や式の時間も大幅に短縮しました。
戴冠式にかかる費用は、王室と政府が共同で負担し、政府は式の終了後に公表することになっています。メディアの予測では約170億円ですが、警備費がかさんで約420億円以上になると報じているメディアもありました。

そのほかの象徴

ウェールズの十字架

国王と王妃の入場に先立ち、行列を導いたウェールズの十字架は、2021年にチャールズ3世の要請によりウェールズの教会の100周年を記念して作られました。

ウェールズの教会は、1914年に国(ウェールズはイギリスを構成する4つの国のひとつ)がイングランド国教会から離脱したため、6年後(1920年)に英国国教会の独立した部分として設立されました。

リサイクルシルバーから作られた銀の十字架は、ローマ教皇フランシスコからチャールズ3世に贈られた真の十字架の聖遺物を特徴としています。
中央の赤い部分の中に、十字に組んだ小さな木片が見えますが、それが真の十字架の木片なのだそうです。

真の十字架は、イエス・キリストがゴルゴダの丘で架けられた十字架のことを意味します。
イエスの死後に隠されていたそうですが、伝説によるとコンスタンティヌス大帝の母セントヘレナが、326年頃に聖地巡礼の途中に発見したと言われています。
真偽はわかりませんが、その後、十字架はバラバラに砕かれ、教会が「聖遺物」として使用するためにキリスト教圏に配布されたそうです。
その真の十字架の木片と言われているものを、ローマ教皇がチャールズ3世に贈ったということなんですね。

十字架の裏側には、ウェールズの守護聖人である聖デイビッドの最後の説教の言葉がウェールズ語で刻まれています。
Cadwch y ffydd.Gwnewch y Pethau Bychain」(「喜びなさい。信仰を保ちなさい。ささいなことをしなさい。」)

ゴールドスミスがチャールズ王の戴冠式を導くためにウェールズの十字架を明らかにする|ジュエリーエディター (thejewelleryeditor.com)

セントヘレナ一行は、当時ウェヌス神殿となっていた場所をゴルゴタと特定したそうなんですが、そこに建てられたのが現在の聖墳墓教会です。
聖墳墓協会といえば、チャールズ3世のための戴冠式の塗油が奉献された教会です。

聖墳墓教会の司祭

ふたつの聖書

女性司祭が朗読していた聖アウグスティヌス(354年11月13日 - 430年8月28日)の福音書は、597年にカンタベリーの聖アウグスティヌス(生年不明 - 604年5月26日か605年)によってイギリスに伝えられたものだそうです。
細かいことを言うとカトリックの聖書です。現在のイギリスの国教はプロテスタントです。

カンタベリーの聖アウグスティヌスは、ローマ教皇グレゴリウス1世の命により、約40人のベネディクト派の修道士とともに596年にイギリスへ布教のために来ました。アウグスティヌスは、初代カンタベリー司教に任ぜられ、その年のクリスマスまでに約1万人に洗礼を施したと言われています。

カンタベリー大聖堂は、現在はイングランド国教会ですが、1534年にヘンリー8世が離婚問題をきっかけに教皇と対立してカトリックと絶縁する前は、カトリックのベネディクト修道会の教会でした。

なかなか見られないものだと思うので、キリスト教徒でない私ですがテンション上がりました。

戴冠式にはもうひとつ聖書が登場しました。新国王のために新しく印刷された欽定訳聖書(またの名をジェームズ1世の聖書)です。
カバーが素敵ですね。今回のコロネーションロゴにも似ています。

この聖書は戴冠式のためだけに3部印刷され、1 部はチャールズ 3 世に贈呈され、もう1部はランベス宮殿図書館に寄贈されました。ランベス宮殿図書館では、誰でも閲覧することができるようです。https://www.lambethpalacelibrary.info/

こちらはプロテスタントの聖書です。
同じキリスト教の聖書だから中身は同じと思われがちですけど、カトリックとプロテスタントでは、イエス・キリストに対するスタンスが違うのでエネルギーも違うと思います。

ちょっと話はずれますが、神の言葉は不変なはずなのに、年代によって若干訳が違っていたりするのは、その時の王様や教皇や有力者に忖度したんじゃないかと思うんですよね。
たとえば、キリスト教では「聖書は占い(魔術)を禁じています」と言われますが、古いギリシャ語聖書では「魔術」ではなくて「製薬」という意味の言葉が書かれていたそうです。
いつ、どこで(どこの国の聖書で)、なぜ製薬が魔術に変わったのか。考えると眠れなくなりそうでしょ(苦笑)
でも、だいたい見当はつきますよね。中世でお薬を作っていた有力者といえば。

戴冠式は白魔術

ドルイドとオーク

しかし、白が印象的な戴冠式でした。まるで隠れドルイドの儀式かと思ったぐらいです。

ドルイドは宗教的指導のほか、政治的指導、公私の争い事の調停と、ケルト社会に重要な役割を果たしていたとされる。
教義について、ドルイドは文字で記録せず口伝伝承を行った。そのため、ドルイドについての記録は、ケルトと文化を共有しないギリシアやローマ帝国、修道士たちの「外からの目」によるものしか残されていない。

たしかにドルイドについては、ほとんど正しい情報がないと言ってもいいですね。現在、イギリスに残っているドルイドの儀式も、本来の姿ではないと言われています。
(ドルイドのメンバーとフリーメイソンが被っているようです)

それゆえ悪魔崇拝のように言われてしまうわけですが、それも異教を潰して信徒を増やしたかったキリスト教が言い出しっぺかもしれません。
ユダヤ人への「血の中傷」と同じようなことが、ケルトやドルイドに対して言われています。だいたい白人至上主義の宗教家や作家が、「あいつらは血を飲んでいるに違いない」と広めていったんですよね。吸血鬼ドラキュラの作家ブラム・ストーカーもゴリゴリの白人至上主義でした。

2010年、イギリス政府は、ドルイド教を宗教として公式に認定しています。他国の宗教を、憶測で悪魔崇拝と決め付けないほうがいいでしょう。

古代の儀式を、現在の私たちが見る機会があったなら、きっとどれも怪しく、恐ろし気に感じるはずです。知らないから怖いわけです。
ドルイド僧たちがどんな儀式をやっていたのかわからないですが、古代は動物の生贄はあたりまえにやっていました。神への感謝を表すために捧げものは絶対で、それも傷の無い一番良いものを捧げるのが決まりでした。

ヨーロッパ全土で、キリスト教以前からオークの木を天空神(ゼウス)の象徴として重要視していました。オークの森は聖地でした。
ドルイド僧は、オークに寄生する植物のヤドリギを珍重したそうです。
ヤドリギの樹液を飲むとどんな動物も多産になり、また解毒剤になると信じていたそうです。ヤドリギには魔除けの効果もありました。

セイヨウヤドリギは、クリスマスに飾ったり、ヤドリギの下でキスをすることが許されるという風習がありました。
「クリスマスにヤドリギの下でキスをしたカップルは、永遠に結ばれる。」という言い伝えを聞いたことがあります。

戴冠式のあと、イギリス国内外のあちこちでオークの記念植樹が行われたそうです。一般の人たちもチャリティで苗木を買って、庭に植えているtweetをいくつか見ました。
オークは聖なる木で神権にも関係しています。戴冠式の椅子はオークで作られており、塗油のスクリーンに刺繍された木もオークを表していました。
戴冠式の招待状にもオークの葉とグリーンマンが描かれていました。

1910年に植樹されたジョージ5世のコロネーションオークの現在


一連の戴冠式の記事を作成するうちに、「これは白魔術だ」と感じました。

戴冠式をする理由は、王の威厳を示すのはもちろんですが、国をあげての戴冠式の華やかさとページェントは、人々の意識を活性化する効果があると思います。たとえばラグビーの五郎丸選手の有名なあのポーズを、私たちが観た時に感じるような高揚感を、戴冠式はもっと拡大させる効果があったでしょう。

国民の母と言われたエリザベス女王が亡くなった時、イギリス国民でない私でさえ女王ロスになったぐらいですから、ダイアナ妃の事故死以来の大きな喪失感にイギリスは包まれていたと思います。
その喪失感を払拭し、再び英王室のもとに国民の気持ちを向かわせ、国民の意識をまとめようという思いもあって行われたのでしょう。
戴冠式の間、何度も繰り返された「God Save the King」という言葉も、魔法の呪文と同じ効果があります。レッサーマジックです。

また、イギリス全土を支配まとめたいチャールズ3世の意気込みも随所に表れていたと思います。夢を叶えるためには、行動や形に表すことが一番効果があります。
戴冠式の招待状も、チャールズ3世の夢が象徴を使って表されていました。スピリチュアルの観点でも素晴らしい招待状だったと思います。

油そそがれた王様をいただく国が少なくなっている現代において、英王室のスピリチュアルな存在感が強調された戴冠式でした。
イギリスも過去に王殺しの罪(チャールズ1世の処刑)を犯しているけれども、フランスと違うのは国民が「私たちに王はいらない」と言って処刑したわけではなかったから、神様は再びイギリスに王様を授けたのかもしれません。
年齢的にチャールズ3世の治世は短いと、誰もが承知しているからこそ、国民に愛される王様になられるといいなと思います。

戴冠式の日、ウエストミンスターはたくさんの花で飾られていました。
高祭壇を飾っていた花には、エリザベス女王とフリップ王配が植樹したオークの木の枝が含まれていたそうです。父と母は高い所から見守っていたのでしょうね。

これにてチャールズ3世の戴冠式の記事は終わりです。最後までお読みくださりありがとうございました。“God Save the King”

写真:チャールズ3世の戴冠式|ティッカー (cnn.com)

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