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子どもと教育〜異年齢交流の大切さ

1.子ども主体でつくる自転車教室への挑戦

ぼくらは、「日本でいちばん楽しい自転車教室」と銘打ったウィーラースクールという子ども自転車教室を全国各地で開催しているグループである。

2021年3月13日、大阪市堺市の堺区役所からの依頼を受け、3歳児向けの自転車教室「キックバイクによる はじめての自転車教室」を堺市役所前広場で開催した。
この教室イベントは、堺区が行っている「ヘルメットスタート」という事業の一環で行われているもので、WEBサイトには、

歴史的に自転車と関係の深い堺区では、こどもの頃から自転車の乗車マナーを身につけていただきたいと願い、一人乗りを始めるであろう3歳頃の時期に「こども用自転車ヘルメット」を配付するものです。

とある。

当初、堺区の担当者から相談を受けた時には、正直この依頼を受けるかどうか迷った。その理由はぼくらのウィーラースクールが、特定の年齢や技術層ではなく、様々な年齢やレベルが渾然一体となった、異年齢交流の中での学びの場を大切にしているからであった。(※補助輪外しの教室などは特例で行うこともある)

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ぼくらが主宰するウィーラースクールでは、子どもたちが安全に交通社会に入っていけるよう、交通ルールやマナーをいかに主体性を持って身につけることができるかということに主眼を置いた教育活動を行っている。
2004年頃に自転車競技大国ベルギーから持ち帰られた技術教本を基礎に、2007年に新たな枠組みで、日本の国内事情に合わせたカリキュラムを再編集して以降、常に改善と改良を重ねアップデートし続けてきた教育指導要領を持つ。

その中には、単なる自転車操作技術の向上を目指す指導内容だけではなく、子どもの年代が、交通社会における社会性をいかに身につけることが出来るか、そしてそのために大人は彼らとどう向き合わなくてはいけないのかという観点から指導論が展開している。

その中で、ぼくらが特に重要視しているのが、スクールの場においての異年齢交流である。

子どもは子どもの社会の中で成長する。

なので、単一の年齢層への教育的アプローチには、じつは若干懐疑的でもあった。

今回、堺区からの依頼を受け、「単なる3歳児の教室にしては学びの要素が薄い」そう思ったぼくは、思いきったアイデアを実行することにした。
それは、指導する大人と3歳児の中間世代、つまり小学生をスタッフに組み込んで、教室を運営してみるというものだった。
実はこれまでも日々のスクール中に、年齢の上の子が下の子を面倒見たり、リードしたり、時にはスタッフとなって運営に協力したりという局面を経験しているので、さほど難しいことでは無いという確信もあったのだ。

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しかし、これまではあくまで大人のサポート。与えられた仕事を手伝うというスタンスだったのを、今回は、運営内容までを子どもたちに中心になって考えさせるというのは、実際のところどこまで可能なのか、また効果があるのかは、正直なところ未知数だった。

2.美山町の子どもたちと予行演習

開催一週間前、普段、美山でスクールに参加している小学生を中心スタッフに据え、同じ美山町在住の幼児を持つご家庭に協力してもらい、みやま保育所前の駐車場を借り切って事前の予行演習を行った。

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今回は、受付、そしてそれに伴う検温などコロナの感染対策も子どもたちが中心となり、機材の準備や後片付けも、彼らが中心に進めた。
スクール自体は、まずは小学生たちとミーティングで大体の流れを伝え、以後は大人があれこれ口を挟まないようにしながら、小学生を中心に幼児のサポートをさせてみることに。

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結果、小学生に対し、彼らが幼児たちにどう接すれば良いかをしっかり伝えなかったため、それなりにスクールの状況が、混乱しカオスになってしまった。
しかし、その経験を経て彼らにも考えること、思うことがあったのだろう。
スクール後すぐのミーティング(反省会)では、それぞれに問題意識が芽生えたのか、様々な改善点や、対応策などの意見が飛び交った。

例えば、

1.幼児の集中力がどれくらい続くのか
2.幼児に難しい教材は? 理解しやすくするにはどう改善すべきか
3.事前に小学生が見本を見せた方が効果があるのではないか
4.班分けをしてグループ単位で行動した方がいいのではないか

など、この他にも、子ども目線だからこそわかる的確なアイデアが多数出てきたのだ。

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3.いよいよ本番、子ども主体の教室開催!

彼らから出た改善点や様々なアイデアを、カリキュラムに具体的に落とし込むのは、ぼくら大人の役割だ。
幼児が安心して楽しめるサイズのシーソーを作ったり、必要な要素となる、機材を揃え、タイムスケジュールにそって、子ども目線でわかりやすい会場設営も検討された。

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こうした準備を経て、子どもたちのアイデアをふんだんに盛り込んだ新しい幼児向けのカリキュラムとしてアップデートしたプログラムをひっさげ、堺市役所前に乗り込み、1回40分を6回、合計約80人の幼児たちに対し教室を開催したのだ。

どうすれば幼児が楽しめるのか。
その楽しさを明日に繋げられるのか。

その最終目標を目指して、前週の予行演習を経験した美山から5人、以前よりWeilerschoolに参加し、最近ではすっかりスタッフが板について来た2人、計7人の小学生が、新たな経験に果敢に挑戦した。
1日6回転は、さすがの大人でも疲れるレベルの教室回数だ。
それでも各回が終わる毎にみんなで反省点や改善点を出し合い、最終的にそこそこ満足のいくプログラムに進化していった。

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幼児は何に喜び、熱中するのか、
また、どう声がけをし、どう導けば、幼児の主体性を引き出し、彼らの想像力をかき立てさせられるのか。

小学生なりに思うこと。感じること、考え実践することで、子どもたちも学び、そして彼らに必要な様々な答えを見つける一日だったと思う。

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異年齢交流は、子どもたちの教育の中に必ず必要なシチュエーションだと思う。
今回のスクールで言えば、小学生には、対象年齢に近い世代だからこその目線で、彼らにしか見えない、また、感じられない、アイデアが生まれる。そして、彼らの様な中間世代の介入によって、大人と子どもだけではない、その場の関係性がシームレスに繋がり発展していくのだ。

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机上の論理ではない、実践の中から生まれる新しい学びや気づきは、とにもかくにも刺激的なものである。
改めて、子どもの可能性は無限で、その可能性を引き出すのは大人ではなく、彼ら自身であることを思い知らされるのだ。

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子ども向け自転車教室 ウィーラースクールジャパン代表 悩めるイカした50代のおっさんです。