子どもファーストで学びの場を実現する、自転車教室の挑戦
僕らのウィーラースクール(自転車教室)は、2004年に神戸で始まって以降、2009年より本格的に、京都府南丹市美山町に本拠を構え、通年のスクールを開催するなど、独自の活動を続けてきており、北は北海道から南は九州、沖縄まで、全国津々浦々の様々な自治体が主催するサイクリングイベントや、自転車教室、また商業イベントなどにも呼んでいただき、その土地の子どもたちへ「自転車の楽しみを伝える」活動を続けている。
運営は基本、有志のボランティアによるもので、正式な組織としてのかたちはない。
資金源としては、個人の寄付や各種イベントに呼ばれたときに発生するギャラなどが充てられており、2007年以降は、参加費なしで(保険代など最低限必要な経費は徴収する場合もある)、運営のため公的資金も申請すらしないというやり方は、多くの方から心配されるほど、世の中の常識で考えるとあまりにも特殊だと思う。(ある意味異常とも言う)
そして、その特殊さは運営だけにはとどまらない。
このスクールは、例えば、補助輪はずしや、幼児向け、高学年の本格的なスポーツなどというカテゴリー分けをあえて行わない。
どんな時でも、どんな場所でも、どんな力量のどんなモチベーションの子が来ても対応が可能にしている。なので、いつも会場にはあらゆる年齢層やレベルの子どもたちが入り乱れ、カオスな様相を呈している。
きちんと並べてしっかり教室を開催したい!という指導者の目には、まさに混乱の極み、無秩序にも見えるであろう。果たしてこんなスクールでは、子どもたちはしっかり学べないし、成長しないのではないかなどと、疑問を呈する人もいるだろう。
(実際によく言われることだが)
それに対するぼくの答えは「ノープロブレム」だ。
ぼくらのウィーラースクールでは、子どもたちはひとりひとりがしっかり認められ、本当に子どもらしく過ごす、そんな雰囲気が作り出す学びの空間を経験した子の多くは、心から自転車教室としての場を楽しむ。
そうした経験を繰り返すことで、自転車に乗る本質を理解し、安全への意識を高めると同時に、道路をシェアする気持ちを持つようになっていく。
なにより、自分の人生の大切な道具(ツール)として自転車を認識していくのだ。
なぜ、そんなことが可能なのか。
それはこれまで、このウィーラースクールが経験し培った、あらゆる成功、失敗体験を含む多くの事例とそこから導き出した教訓の積み重ねや、飽くなき探究心による新しいアイデア探し、また多様な教育理論や手法を学んできた道のりによる、各現場スタッフの教育現場での「引出しの多さ」と、スタッフ自身が、自らで考え、柔軟な対応を瞬時に可能にするスピード感を有するよるものであり、それにより柔軟性に富んだ時間を関わる全ての人が自ら創出できることが大きい。
誰もが平等に一緒のことをしないといけないと言う基準に縛られないことが、その時々の子に合わせた学びの機会を与えることを可能にしているのではないか。
実は、教える側(伝える側)は、カリキュラムを用意したところでつい独りよがりになりがち。
おまけに、その決められたカリキュラムを、時間内にしっかり遂行することに囚われてしまい、子どもの発達の状況の違いや、それぞれの学びのペースなどに配慮できないケースがあるとぼくは考えている。
でも本当に大切なのは、一人一人に寄り添うということではないか。
子どもはたとえ同じ年齢であっても、同じスタートラインでドン、というわけには行かないため、最初から、個別に柔軟に対応できる準備が必要で、単にやれば良いというものではない。ただ、そういう状況に対応するためには、それ相応の準備と指導する側のスキルが必要になる。
ただ、例えそれが難しいとしても、そこを目指して奮闘する大人の様子は、確実に子どもたちに伝わっているんじゃないだろうかとも思う。
大切なのは、われわれ大人も挑戦しているかどうかなのだ。
やらなければいけないことが沢山あって、細かく時間が取れない、とか、今はなかなか難しいなどと言うもっともらしい理由は、子どもの前では、もはや、単なる言い訳にしか過ぎない。
たかが自転車教室じゃないか、などと言われても、僕らは全力を尽くす。
なぜなら、子どもが関わる、体験することはすべて、子どもの学びに必要なことで、どこにも無駄なものはないと考えているからだ。
そして何より、それが子どもファーストだからだ。
子ども向け自転車教室 ウィーラースクールジャパン代表 悩めるイカした50代のおっさんです。