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認知症の教科書 (ニュートン別冊)  【読書感想文】 美しいイラストで脳に入り込む

★★★★★
Amazonでレビューしたものです。

 「認知症」とは,さまざまな脳の病気によって,ニューロン(神経細胞)のはたらきが徐々に衰えて,記憶や判断力などの認知機能が低下し,日常生活に支障をきたした状態のことをいいます。高齢化が先進国の中でもっとも速く進んでいる日本では認知症にかかる高齢者がふえています。
 厚生労働省の調べでは,2012年では認知症の患者は462万人で,65歳以上の高齢者の7人に1人が認知症ということになります。推計では2025年には約700万人の人が認知症となり,65歳以上の高齢者の5人に1人の割合になると考えられています。認知症は高齢になれば誰もがなりうる病気で認知症への対策が注目を集めています。
 認知症の約7割はアルツハイマー型認知症とよばれるものです。これは本誌の表紙にみられるように脳のニューロンが減り,脳が小さく萎縮することで症状があらわれる病気です。その原因はアミロイドβベータとよばれるタンパク質がニューロンにたまることでひきおこされます。近年ではこの病気の病理学的な分析が進むことで,ニューロンにアミロイドβがたまる症状が40歳後半ぐらいからおきていることがわかってきました。同時にアミロイドβの蓄積が生活習慣や食事内容とも密接にかかわっていることもわかったことから,早い時期からの予防が推奨されています。一方,認知症を克服するための治療薬も開発されています。これまで抗体治療薬の開発ではなかなか効果が得られませんでしたが,早期治療を開発目標とすることで,バイオジェン社とエーザイ社が「レカネマブ」の開発に成功。2023年1月6日にアメリカ食品医薬品局(FDA)が迅速承認したことで,期待が高まっています。
 認知症は原因も含めてまだまだ解明されていないところが多い病気です。本書では認知症が発症するしくみや認知症の発症をなるべく遅らせるための予防法,食事法などについて最新研究を紹介してしていきます。


1.専門家による最新の脳研究結果をわかりやすく


認知症について、脳と腸内細菌と、老化と対応の4つに分けて解説されています。

1つの題材についてそれほど文章が長くなく、わかりやすく美しいフルカラーのイラストがドーンと描かれているので、絵を見ていくだけでも読むことができます。

しかし、内容は非常に専門的で、引用論文についてもしっかり提示されています。

監修は、順天堂大学名誉教授の新井先生を筆頭に7名の先生方となっています。

新井平伊先生のアルツクリニックはこちら。

特別予約診療は初診30分13000円、アミロイドPETは15万円でございます。

2.CONTENTS



1 認知症から見える脳のしくみ
アルツハイマー病とは?
アルツハイマー病と認知症
認知症の症状
認知症発症の兆候
記憶のしくみ
場所細胞とグリッド細胞
嗅覚と認知症
原因①アミロイドβの蓄積
原因②タウの蓄積
原因③炎症反応
原因④遺伝子変異
APOE4遺伝子とアルツハイマー病
APOE遺伝子の世界分布
APOE遺伝子の進化
APOE4遺伝子とペプチド類
現在の治療薬
抗アミロイドβ抗体①〜③
創薬研究
早期診断・早期治療①〜②

2 腸内細菌叢と認知症
腸脳相関
常在菌マップ
腸内細菌と肥満
認知症と腸内細菌
認知症と腸内細菌叢
抗生物質と腸内細菌
抗生物質と認知症
糖尿病と認知症
IBDと認知症
IBDと睡眠障害
便秘とパーキンソン病
腸内細菌と免疫
腸内環境のととのえ方
百寿者と腸内細菌叢
腸内細菌と短鎖脂肪酸
認知症を防ぐ食物繊維量
水溶性食物繊維と認知症
認知症とビフィズス菌
column 1 不安行動を生み出す
腸内細菌代謝物を特定

3 体と老化
老化の特徴
細胞の老化
幹細胞の老化
骨と筋肉の老化
筋線維組成
百寿者の筋肉
筋肉と結合組織
目と耳の老化
歯周病
歯周病と全身の病気

4 脳寿命を伸ばす生き方
認知症の病理学的分析
SCDとMCI
早期介入①〜③
認知症の危険因子
聴力低下と認知症
運動不足の解消①〜②
睡眠不足の解消①〜②
ゲームで脳を鍛える
column 2 大人の海馬でもニューロンは再生する
column 3 海馬に新生ニューロンを育むフィジカル・アクティビティ


3.認知症は生活習慣病なのか


①神経細胞とタンパク質と

レカネマブの働く仕組みについても大きなイラスト付きで解説されています。

レカネマブは抗アミロイドβ抗体医薬です。
アルツハイマー病は、老人斑と神経原線維変化という病理学的変化を認めます。いずれもタンパク質の塊で、神経細胞に影響し死滅させてしまいます。
このうち老人斑の方が、アミロイドβというタンパクの集まりになっています。
アミロイドβを標的とする抗体である、抗アミロイドβ抗体を投与すると、アミロイドβや老人斑に集まります。そこへ脳の掃除屋であるミクログリアという細胞がやってきて、アミロイドβを食べて除去してくれます。
このような機序で、アミロイドβを減らすことにより、アルツハイマー型認知症の進行を遅らせる効果があるとされています。

②腸内細菌の影響

腸内細菌叢によって生み出された物質が脳に影響を与えているという研究結果が出ているそうです。うつ病や統合失調症、自閉症、不安障害から、認知症まで!

この本では、プロバイオティクスとプレバイオティクスで”腸活”を進めており、プロバイオティクスは乳酸菌、プレバイオティクスはオリゴ糖と食物繊維だそうです。さらに、水溶性の食物繊維で認知症のリスク低下とされており、海藻、大豆、大麦、野菜、果物、こんにゃくに含まれているそうです。

③認知症の危険因子の対策で遅らせられる?


「たとえば、私のクリニックでは、1.糖尿病、2.高血圧、3.脂質異常症、4.肥満、5.聴力低下、6.うつ病、7.運動不足、8.睡眠不足、9.社会的孤立、10.習慣性飲酒、11.喫煙、12.主観的認知機能がどれくらいあるか、の12の項目をスコア化して危険因子を探し、それぞれ対策を立てています」(新井博士)。恐れず、早期に対策を立てて介入することが認知症を予防する最大の対策になります。

新井先生のクリニックでは、カフェをやっているそうです。


上記の認知症の発症リスクのうち、変更可能な要因は、35%だそうです。
3分の1ですね。


著者:ニュートンプレス (2023/6/12)
出版社 ‏ : ‎ ニュートンプレス (2023/6/12)
発売日 ‏ : ‎ 2023/6/12
ムック ‏ : ‎ 144ページ
ISBN-10 ‏ : ‎ 4315527114
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4315527117
寸法 ‏ : ‎ 0.71 x 21 x 27.5 cm

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