職場でのアウティングについて考える

先日、職場の皆様方へ向けてカミングアウトした際に一番憂慮したことは、私がオープンに知らせてしまうことで相手方に必要以上に意識させちゃったりして、人間関係がよそよそしくなったりギクシャクしたり、何かしら気まずい雰囲気が続いてしまうことだった。

なので、話の内容として、前半は事実や経緯を淡々と伝えつつ、後半は当人としてはアンタッチャブルな事柄ではないことと、何か迷ったり分からないことがあったりしたら気兼ねせずにお問いあわせいただいて大丈夫だよってことを、あわせて伝えた。

皆、プロ意識が高い人たちばかりなので、仕事を進める上での業務上のコミュニケーションにおいては表立って接しにくさを感じてないように私からは見受けられたけれど、ちょっとした雑談なんかがなくなったりしてしまわないように、こちらからいつもどおり冗談を言ってみたりなんかして、カミングアウト後は意識的にこれまでどおりの接し方を心がけた。

カミングアウトされた側(非当事者側)の心理については、例えば、厚労省公開の「職場におけるダイバーシティ推進事業」における「企業および労働者へのアンケート調査結果(Ⅴ.調査結果のまとめ)」の「5.2 性的指向・性自認に関する情報の扱いとアウティング対策」P.240「図表Ⅴ- 32 職場の人から性的マイノリティであると伝えられたとき、どのように接すればよいか不安に思うか:労働者アンケート調査」で示されている。

回答者:シスジェンダーの異性愛者(性的マイノリティの知人あり)
どのように接すればよいか
不安はない       62.3%
どのように接すればよいか
不安である       20.5%
どのように接すればよいか
そもそも見当がつかない 10.7%

あてはまるものはない   6.4%
 
回答者:シスジェンダーの異性愛者(性的マイノリティの知人なし)
どのように接すればよいか
不安はない       33.9%
どのように接すればよいか
不安である       26.1%
どのように接すればよいか
そもそも見当がつかない 32.8%

あてはまるものはない   7.2%

だいたい3割〜6割弱は、カミングアウトされて困惑する可能性があると考えられる。

当事者が意識しすぎることで周囲にことさら気を遣わせてしまうことってあるだろうから、私自身がなるべく意識しないように普段どおりを心がけて日々過ごした。
カミングアウトから一週間経って、職場ではこれまでどおりの雰囲気で仕事ができていると思う。


その一方で、私の方からの要望として一つだけ明確に伝えたことがあった。

社外の取引先などへの不要不急のアウティングだけは、極力控えていただきたいとお伝えした。

社内に関しては、私の知る由もないところで事情が広まっていくことについては、ある程度は想定している。
たくさんの人が働いているので、その中で一定数はおしゃべりな人もいるだろうし。

所属部署の一部の人たちのみに事情を伝えているので、それ以外の人たちにどのように伝えるべきなのかについては私の方でも判断に迷っているところがあるし、能動的にこちらからわざわざ何度も伝えることまでは責務じゃないとは思っているから、寧ろ少しづつ噂話で広まっていくことで認知されるという方がいいかもとすら思っている。
ゆくゆくはメイクしてレディース着て出勤することになるはずなので、それまでにある程度広まっていてもらう方がいちいち釈明も省けるだろうから、願ったり叶ったりという側面もある。

かたや、アウティング自体がそれほど問題ない行為なんだと非当事者の方々に誤解を与えたくないので、NGだってこと自体はちゃんと言っておくべきだと思っていた。
私以外のLGBT当事者にとってそれは迷惑な話だし、私がカミングアウトすることで私以外の当事者が会社に居づらくなってしまうことは避けなければと思っていた。
でも、私のことは認知してほしいから、暗に「社内は」問題ないですよとそれとなく読み取ってくれるかな?・・と思って、一つの落とし所として「社外への」アウティングは控えてと明示的にお願いした。(分かりづらかったかな?)

ところで、先の「カミングアウトされた側(非当事者側)の心理」でも参照した「企業および労働者へのアンケート調査結果(Ⅴ.調査結果のまとめ)」のP.239「5.2 性的指向・性自認に関する情報の扱いとアウティング対策」に、下記のようなアンケート結果が出ている。

言葉も意味も知らない人の割合
LGBT      16.1%
レズビアン     1.4%
ゲイ        1.0%
バイセクシュアル  3.5%
トランスジェンダー 9.8%
性同一性障害    2.1%
カミングアウト   6.8%
アウティング    84.3%
性的指向      39.2%
性自認       60.4%
SOGI      94.0%

また、同資料のP.240には以下の記述もある。

「アウティング」という言葉を認知している割合は低く、また、カミングアウトを受けることに対して不安を感じたり、見当もつかないという割合が高いが、一方で、性的指向・性自認に関する情報は機微な情報であるということが多くの人に認識されていることがうかがえる。

アウティングという用語自体が実は世間での認知度が現状は著しく低いということがあるので、そこの認知度は今後高まっていってほしいと思う。

また「機微情報だから配慮する」っていうことだけだとカミングアウトする当事者側の不安は払拭されない。

当事者の意図しないアウティングが当事者の「尊厳を踏みにじる行為」だってことがより広く世間一般に認知されれば、カミングアウトする当事者側の不安もより払拭されるし、私も先のような変な配慮をする必要がなかったはずなので。


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