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【雑記】据え膳問答
「けいすけさんは、据え膳を食べる人ですか?」
あれは、6年ほど前のこと。
マッチングアプリで1人の女性と知り合い、表参道ヒルズでご飯を食べることになった。
フレンチバルである。今、検索してみたところ、その店はまだ健在のようだ。
彼女は、学芸大学か池尻大橋かどこかの、そこそこ有名なパン屋さんの店員だった。
歳は当時、35歳くらい。僕より2、3歳、年下だった。
特に条件を問わずに男女の友人を探しているというだけあって、オープンな性格の自由人だった。歌手のCaraさんを、黒髪&コンサバ風にした感じの人だった。
人気のパン屋の店員さん、ということに少し先入観があった僕は、あまり普段使わない表参道を選んだ。表参道は、上品な高級店が多いのだが、初回の顔合わせということもあって、無難なヒルズの店を選んだ。
待ち合せの場所で、最初に会った印象に、これという記憶はなく、夜の表参道の街路とイルミネーションのきれいさのほうが、心に残っている。
彼女は、オフホワイトのコットンコートに、ライトグレーのニットのインナー、タイトなデニムパンツ、そんな都会のお姉さん風の装いで、表参道に溶け込んでいた。
お店に行くまで、お店での会話も、特に印象はない。
良くもなく、悪くもなく、普通の世間話を、そんな感じだっただろう。
席はカウンター。なかなか素敵なおしゃれなお店で、店員さんも、カウンター越しにお勧めのワインの話などをしてくれて、気の利くよい店だった。料理もおいしかった気がする。
彼女は、料理やワインを説明してくれる、カウンターの若い店員さんともよくしゃべった。むしろ、その店員さんとのほうが、楽しげにしゃべっていたかもしれない。
僕も、すごく彼女を気に入ったという訳ではないので、流れに任す、そんな感じで、5杯目のグラスに口をつけた。彼女も、そこそこ飲んでいる。
ちょっと、間が空いた瞬間、彼女は言った。
「けいすけさんは、据え膳を食べる人ですか?」
「は……?」
瞬間、何を言っているかよく分からず、彼女を見つめた。
眼が少しとろんとしている。分かった、間違いなく、そのままの意味だ。
特に感情的な盛り上がりもないままの流れのなかで、いきなりこの人は何を言っているのだろう、笑。
突然にも、ほどがある……(苦笑)。
大丈夫か、この人……。
でも………
………おもしろい、好きかも。
「今日は、帰りますよ。また、今度」
僕は、そう答えた。
そのあと少しして、店を出た。
そして、駅に向かう表参道の交差点で熱いキスをして、僕らは別れた。
彼女の名前は、愛実(あみ)ちゃんである。
その後、半年ほど付き合った。
今でも心に残る人である。
素の彼女は、とても素直でオープンで、ユニークな人だった。
でも、いろいろ話してみると、この寛容性に乏しい社会に水の合わなさを感じ、生きづらさを抱えた、繊細な心の持ち主だった。
彼女は、今、どうしているだろうか──。
※イラストと写真は、イラストACの無料素材です。
ネットで検索したら「ネット乞食」という言葉に出くわしました。酷いこと言う人、いるなー。でも、歴史とたどれば、あらゆる「芸」は元々「乞食」と同根でした。サーカス、演芸、文芸、画芸しかりです。つまり、クリエイトとは……、あ、字数が! 皆様のお心付け……ください(笑) 活動のさらなる飛