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あんたへ


あんたがお歳暮だか何だかの荷物を持たされてるのを見て、哀しくなった。


俺はあんたが最初はなから嫌いだった。

あんたと俺は中途どうし、年齢も同じ。

あんたが 3年ほど先輩だ。

けれど、俺が入ったとき、あんたはすでに課長。


あんた等から最初に飲みに誘われたとき、

あんたの上からの態度に腹が立った。

性格も、ふるまいも、考え方も全部苦手。

あんたとは仲良くしたくないと思った。


夜遊びが好きという共通点はあった。

しかし、あんたの遊び方は嫌い。

キャバクラで何人も女の子あつめてシャンパンコール。

おさわり、キス、アフター。

遊び方が汚い。


あんたから見れば、俺はノリが悪い、

かっこ悪いのにかっこつけてるって言うんだろうけど。

まあ、あんたも俺も、本当の遊び人からすれば三下の素人

遊び人風なだけ。

そんなところは似ていた。


あんたは順調に出世した。

あんたは巧みだった。

いろんな部署に協力者や手下を作り、上役には可愛がられ、

着々と権勢を広げていった。


一方、俺は最初に会った時のあんたの階級止まりで、もう上はない。

あんたとの差は広がる一方だった。


しかし、3年前。

あんたは突然、会社に来れなくなった。

役員までもうすぐ、というところで、あんたは 2年も休んでしまった。

あんたに何があったのか、誰も知らない。

あんたがそんなふうになるなんて、誰も思わなかった。


あんたは巧妙でしたたかで粗野で意地悪で、

心臓が強くて、人の表も裏も知っているやつなはずだった。

それがなぜ──。

もうちょっとだったじゃないか。


あんたは復帰後、平社員として資料室に飛ばされた。

資料を借りに行くたびに、接し方に困る。

あんたの弱った顔、卑屈な態度は見たくない。


今、お歳暮をかかえて総務の連中の後に従っているあんたとすれ違った。

今夜も酒を飲むけれど、1杯はあんたに献じよう。


ネットで検索したら「ネット乞食」という言葉に出くわしました。酷いこと言う人、いるなー。でも、歴史とたどれば、あらゆる「芸」は元々「乞食」と同根でした。サーカス、演芸、文芸、画芸しかりです。つまり、クリエイトとは……、あ、字数が! 皆様のお心付け……ください(笑) 活動のさらなる飛