#2.8 パパ活編:「パパ活」マスター:杏奈さん③
◎物語の説明とあらすじ
妻とはセックスレス、ここ数年は婚外恋愛の出会いもない40男、浦野けいすけ。2児のパパ。風俗以外でセックスできない「性の砂漠」に苦しむなか、昨今の自粛ストレスが加わり、「今までしたことのない経験がしたい」と、パパ活に手を染める。そんなアラフォー男の性と愛のサバイバル物語。
初体験の「パパ活アプリ」で次々に美女とマッチングした浦野は、最初の美女、杏奈さんと「顔合わせ」をしたのだが……。
◆頭の切り替え
時間に少し遅れてきた杏奈さんの写真とのあまりの違いようにしばし茫然自失した僕だが、すぐに気を取り戻した。ちなみに、この間、「あの~、けいすけさんですか?」から、1.2秒くらいである。
僕はまず、脳内の松岡茉優のデータを消した。
「ゼロベースで考えろ。先入観を持つな!」
取材・インタビューの鉄則である。
あいなぷぅを少し美人にした感じ ⇒ 一般的にみれば普通にかわいい女性 ⇒ 僕と彼女の年齢差は20歳以上 ⇒ いいんじゃない!?
計算終了である。全然いける、いける。
この間、先ほどから0.4秒ほど。合わせて、間は1秒半くらいだ。
「……あ、ああ、杏奈さんですか? どうもはじめまして、けいすけです。今日は、お時間とっていただいてありがとうございます。場所、すぐ分かりました?」
僕は、急いで笑顔を作り、丁寧に言った。
パパ活では、基本的に敬語で、丁寧に行こうと、前から決めていた。
「あ、はじめまして……。C3出口が分からなくて、地上を歩いて来てしまいました。少し遅れてすみません……」
彼女は、小さな声であやまった。
おとなしい性格なのかもしれない。少したどたどしいのは、人見知りしているのかもしれない。
が、気になったのは、彼女が若干、引いているように見えたことだ。
なんでやねん。
パパ活おじさんにしては、ましなほうやろ!
少なくとも、あいなぷぅに引かれる筋合いないわ!
(本物のあいなぷぅさんは、好きです。ごめんなさい)
顔には出さなかったが、こう思った。
けれど、僕も初めての経験で若干緊張していて、それが移っただけかもしれない。
いや、それよりも気になったことがある。
それは、彼女の目が死んでいるということである。生気がない。
◆闇の入り口
そのあと、371BAR(サンナナイチバル)の小さなテーブルで向かい、
彼女のかたさをほぐすように、優しい口調で次々に話を振った。
最初は、無難に新宿三丁目や周辺の美味しいお店の話、続いて、コロナ禍と最近の生活や仕事の話、出てきた料理の話、パパ活アプリの話、今の自分の進めている仕事や関心事の話───。
しかし彼女は、あまり話に乗ってない。
多少、良好な反応があったのは、彼女自身の仕事の話と、パパ活アプリの話だったので、それに絞ることにした。
すると、彼女は段々と、口を開きだした。愚痴である。
「東京の生活って、すごくお金がかかって、うちの銀行の給料、すごく安いんですよ。残業はできないから、手取りで15万円くらいなんです。副業も禁止だし、古い体質で仕事中もすごく制約が多いし、なのにこんな安いなんて、生活が大変です」
彼女は、富山県の大学を卒業して、都内の小さな銀行の支店に勤めているという。待遇に強い不満があるようだった。
「それで、パパ活はじめたんです。生活の足しにって。いいね!が来たら、大体OKしているんで、1,000超えちゃいました。もう200人くらいの人と会いましたねー。でも、変な人ばっかりだし、ドタキャンが多かったりして、これも大変なんですよ……」
僕が、パパ活が初めてで、アプリをダウンロードして間もなく、そして、彼女が初めて会う女性だということは伝えている。
しかし、この清楚系で少し地味なタイプで、しかも小さな地銀とは思うが銀行員の女性が、2年間で200人とは驚いた。世の中は、僕の想像をはるかに超えているのかもしれない。
彼女は、2杯目に口をつけた。ミモザである。
そして、彼女の話は、段々と止まらなくなってきた ── 。
ネットで検索したら「ネット乞食」という言葉に出くわしました。酷いこと言う人、いるなー。でも、歴史とたどれば、あらゆる「芸」は元々「乞食」と同根でした。サーカス、演芸、文芸、画芸しかりです。つまり、クリエイトとは……、あ、字数が! 皆様のお心付け……ください(笑) 活動のさらなる飛