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#2.19 パパ活編:束の間の追憶

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◎物語の説明とあらすじ
妻とはセックスレス、ここ数年は婚外恋愛の出会いもない40男、浦野けいすけ。2児のパパ。風俗以外でセックスできない「性の砂漠」に苦しむなか、昨今の自粛ストレスが加わり、「今までしたことのない経験がしたい」と、パパ活に手を染める。そんなアラフォー男の性と愛のサバイバル物語。
これまで連日3人の女性と会った浦野。顔合わせだけでなく、初めての「大人」も経験した。さらなる美人、魂を奪われるような女性を追い求め、明日以降に臨む浦野だったが、家で妻の顔を見て、少し感傷に浸る。


◆「家の灯り」のトラウマ


あれ? 灯りが着いている。

美都ちゃんと別れた後、あわてて渋谷を後にして副都心線に飛び乗り、西東京市の自宅に到着したのは深夜0時30分。この時間なら、いつもなら消えているはずの家の灯りが、今日は着いていた。

女性と遊んだ後の深夜帰りに、家の灯りが着いていると、いつも8年前の出来事を思い出して胸騒ぎがする。

一番遊んでいて、連日午前帰りだった時期──。
スマホを家に置き忘れたその日、1時頃に家に帰ると、同じように家の灯が着いていて、彼女がリビングのソファの隅っこで、幽鬼のような顔をして座っていた。

「……子ども達に顔向けできないようなこと、してない?」

彼女が絞り出した第一声は、それだった──。

               *

小さな庭の隠し場所から鍵を出し、玄関を開け、おそるおそる家に入る。

キッチンに入ると、彼女がイヤフォンをして、スマホで動画を見ながら、洗い物をしている。

「ただいま」

「ん? あ、おかえり」

相変わらず疲れた顔だが、遊びがバレたわけではなさそうだ。
僕は、ダイニングテーブルに置いてある夕食に手を伸ばす。

「いただきます」

洗い物を終えた彼女が、2階へ上がる。

「おやすみなさい」

夫婦の会話は、それっきり。
我が家では、よくあることだ。



いや、平日は家族が寝ている間に帰ることが多いから、朝、必要があれば多少の事務連絡をして、「行ってきます」「行ってらっしゃい」だけのことも多い。

土日は、多少の会話はあるが、子どもを介しての会話が多く、2人でしゃべるということは少ない。もう、5、6年、このような状態が続く。


6歳年下の彼女は、今年38歳である。
結婚して12年。
日々、子育てと家事に追われ、いつも疲れ切った顔をしている。

彼女は、フリーランスのエディトリアル・デザイナーなのだが、ここ数年はかなり仕事を絞り、午前10時から午後2時までを稼働時間と決め、それ以外は主婦としての日常を送る。

夫婦:すれ違い_イラストAC


◆どこでボタンを掛け違えたか


美人だよな──。

彼女の寝姿を見て、そう思うときがある。
寝室はもちろん別で、子ども達の寝姿を見るついでに見るのだが、色白で細面、弓のような眉の彼女は、一般的には「美人」に該当するだろう。
背も高く、すらりとしていて、猫背の姿勢さえ直せば、モデルのように見えなくもない。

彼女に触れなくなって、もう8年以上が経つ。
もちろん、「そのような関係でなくなった」ということが大きいのだが、家の外で、たくさんの女性に触れているこの手で、彼女に触れることへの躊躇もある。

大恋愛というか分からないが、発注先のデザイン会社の社員だった彼女と恋愛し、2年間の同棲を経て、結婚した。その間、たくさんスキンシップをし、キスをして、ほとんど毎晩、抱いて寝ていた。

結婚後も当然、それが続くと思っていた。
どこでボタンを掛け違えたのだろう。


明日は、パパ活でマッチングした4人目の女性と会う日だ。
今週は、月曜、水曜、木曜日の今日、そして、明日と、ほぼ連日である。
来週も、3件の約束がある。

2人目のモデルのような、綸句ちゃんにも心を奪われたが、まだまだ、これから──。見た目でも、立ち姿でも、会話でも、魂が奪われるような女性に、俺は会うんだ!


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※イラストと写真は、イラストACの無料素材です。

ネットで検索したら「ネット乞食」という言葉に出くわしました。酷いこと言う人、いるなー。でも、歴史とたどれば、あらゆる「芸」は元々「乞食」と同根でした。サーカス、演芸、文芸、画芸しかりです。つまり、クリエイトとは……、あ、字数が! 皆様のお心付け……ください(笑) 活動のさらなる飛