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ブラック放浪記(2)はたらくのは何のため?


 ブラック放浪記は長期連載になる予定なので、みなさまの時間を無駄にしないために私の労働観を最初に述べておきたい。ここで決定的に考え方が合わない、共感できない場合は続きを読まずに別のnote記事を探した方が生産的だ。


 表題にある質問をなぜ書いたかというと、会社で働かなければブラック企業・上司に遭遇することはないからである。私は数年間の無職期間があるが、当然その間はブラック企業のお世話になっていない。ではなぜ私は、これをお読みのあなたは会社で働いているのか。一般的に考えられるものをいくつか挙げてみよう。


1 生活のため

 私もそうである。莫大な遺産をくれる親族もいないし、宝くじで3億円を当てたこともない。投資をやる資金もない。特別な才能やスキルもない。となると会社で働くのが無難な選択である。誰かが言っていた。会社員は何もできない人の受け皿だ、と。


2 世間体のため

 世の中には会社の給与なしで裕福に暮らせるにも関わらず、雇われて働いている人がいる。私ならすぐに辞めて他の求職者に席を譲るところなのだが、ある人が言うには「会社員の身分があった方が生活がしやすい」のだそうだ。投資家や無職は世間体がよろしくないということか。


3 仕事が楽しいから

 2で述べた投資家の仮面社員氏は、会社での仕事にやりがいを感じていた。業界や技術、自社製品に関わることが単純に楽しかったのである。彼は実家も大金持ちで社会的権力もあるお坊ちゃんだが、片田舎の研究所に異動になっても辞めることはなかった。渋谷に投資で稼いだ金で買った高級マンションがあるにも関わらず。何となく働いているなら、異動になった時点で辞めるか都内で転職していただろう。

 お金のためではなく、仕事が楽しいから働く境地は羨ましいと思う。が、自分がそうなることは絶対ない。


4 勤労は国民の義務だから

 憲法に定められている。日本は労働力が余っているわけではないので、みなが投資や仮想通貨で不労所得生活を送っては社会が回らない。そして稼ぎがあると所得税が発生する。無職期間に社会保障のお世話になったので、ちゃんと恩返しはしたい。もっと所得税を払いたいのだが、残念なことに高給取りだったことは1度もない。


 では私の話に戻ろう。なぜ私は働けど働けどブラックにぶち当たるのに働くのか。上記の「生活のため」は大きな理由ではある。ひとり暮らしで金づるもいない以上は働けねばならない。無職期間は生活保護の半歩手前みたいな暮らしをしていたが、あれに戻るぐらいなら死んだほうがましである。毎月の生活費、猫にかかるお金、ささやかな趣味。薄給ながら私は「最低限度の文化的生活」を営んでいる。


 そしてもう1つ私には理由がある。


5 面白い体験ができるから


 会社では普段の生活では体験しえないことがたくさんある。いろんな年齢やバックグラウンドの人と知り合えるし、様々な経験や知識を得ることができる。私は新しい体験と出会いを重視しているので、たとえ給料が良くても毎日同じ作業をするような仕事はしないことにしている。一応正社員もやったが、仕事の楽しさや働きやすさは今の方が上であり、それは給料や待遇の差をもってしても埋められない。会社づとめの場合、労働時間が1日8時間、休憩や通勤時間を加味すると最低でも10時間以上は使うことになる。今の私は12時間以上費やしている状態だ。人はいつ死ぬか分からないのに、端金のために半日を興味のないことに使うなんてありえない、と私は考える。今年40歳になり、親戚の死亡年齢から考えるに長く生きられても80歳には到達しない。ひょっとしたら今日の帰りに電車が脱線して死ぬかもしれない。その時に後悔がないようにしたい。


 3の「仕事が楽しいから」と同じではないかと思われるかもしれない。あえて分けたのは、私は基本的に勤労意欲の低い人間であって同一に扱うのは3の人々に失礼だと思ったからである。私にとっては面白体験と生活費稼ぎなのであって、モチベーションは3の人々とは比べ物にならない低さだ。給料が安いことは時々とても嫌になるし、布団から出たくないと思うこともある。純粋に仕事が楽しくて仕方なかったらそうはならない。


 もちろん会社は面白いことばかりではない。派遣社員なのに正社員以上の責任やタスクを負わされることなどしょっちゅうで、ブラックな体験もある。次からはいよいよ私のブラック経験について語る予定だ。お楽しみに。

本業(野球観戦)に使わせていただきます