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ボイン君の実録ブラック企業①子供の運動会のほうが大事なのか

はじめに

こんにちは。ボイン君です。私は仕事柄、様々な「ブラック企業」と言われている企業の社員や社員だった人から、到底想像し得ないエピソードを聞くことが多いです。そして私自身も過去ブラック企業と言われるであろう企業に務めておりました。そこで、それらの体験談を、個人が特定出来ない形で出してみることにしました。体験した人、所属していた会社、体験した内容はシャッフルしているため「フィクション」ですが、体験した内容は多少脚色を入れているとはいえ、ベースはどこかであった話です。
「うわ。もしかしたらうちの会社のことじゃね?」と思ったあなた、要注意です。。ではどうぞ御覧ください。

20代はとにかく働いたタカオ

「私は子供の頃、親にかまってもらった記憶がほとんどないんです。だから一人息子とはなるべくちゃんと家族としての時間を取ろうと思っていたのですが」
そう語るタカオ(仮名)氏は37歳。大手サービス業に勤めている営業職で、25人の部下を束ねる部長である。

タカオ氏は、30歳の時に結婚。現在妻であるアサコさん(仮)と6歳になる小学校1年の息子との3人暮らしである。
タカオ氏と妻のなれそめは新卒で入ったOA機器販売の会社であった。
「私と妻は新卒で入った会社の同期でした。200人新卒で入って、3年で100人やめるような会社です。新卒で入社した会社は仕事の量が質を凌駕する!というのが社是だったので、入って5年程は毎月150時間は残業しましたね。有りがちな話ですが、毎日深夜まで同じフロアで男女が残業して、終電逃したから始発まで居酒屋に行って、シャワー浴びてまた出社・・みたいなことを繰り返していると、自然と仲良くなるんですよ(笑)私の同期は20カップルくらいいたかな」
しかし、タカオ氏は、結婚後すぐに転職する。
「正直、売ってしまったらそれで終わり、顧客のケアもルーチン化してて、正直自分のスキルセットが伸びている感じもしなかったんですよね。そこで今の会社に転職したんです。」
タカオ氏が転職した時は、ちょうどアサコさんが妊娠をした頃であり、
子供ができるタイミングで、より自分をスケールアップさせようと決意しての転職であったが、しかし転職後、タカオ氏は徐々に会社に対し違和感を覚え始めることとなる。

家族と仕事とタカオ

「ちょうど子供が生まれた時ですよ。今の会社に入社して半年くらいたったときです」
タカオ氏は遠い目をして振り返る。
妻がいよいよ出産という状況となり、タカオ氏は上司であるY部長に、出産に立ち会うため早退してよいか申し出た。
Y部長は次のように言ったという。
「帰っていい、帰っていいが。。。君はまだ有休はついていないから、今日は欠勤ということになる。あと、今回の件はおそらく今期の評価に少なからず影響するかもしれない。頭においておいてくれ」
「その時、正直深く考えなかったんですよね。その言葉について」タカオ氏は言う。
「確かに、私が会社を出たのは昼過ぎでした。なので、早退扱いでもしょうがないのかなと。評価。。よくわからないが、まさかこんなことで下がることはないだろう。すでに毎月の目標はクリアしていましたし。おかしなこと言うなあ、と思いつつ、それどころじゃなかったのです」
タカオ氏は出産に立ち会い、今の息子が生まれた。
しかし・・その後始めての半期評価のときに初めての事件が起きる。
タカオ氏は、転職し、営業の係長として着任して以降、全ての月において目標をクリアしていた。部内においてもトップ3に入る営業成績を上げていた。しかし、半期でついた評価は最低評価から2番めの評価であった。
「業績評価は5段階評価で最高のA。ところが、行動評価は5段階評価で最低から2つ目のD。総合評価はDです。その時にはっきり言われたのです、『君は奥さんの出産に立ち会うために早退したろ。あれはいけなかった。』と」
しかし、タカオ氏は、「おかしいぞ」と思いながらも、会社としての考え方がそうであるならば仕方がない。
としてそこで深くそのことについて突っ込むことをしなかった。
むしろ、その後タカオ氏は、行動評価で高い評点を得るため、自身のプライベートを犠牲にしていくのである。
「妻が産休をとったこともあり、子育てはほとんど妻に任せていましたね。休日も、部下とコミュニケーションを取り、チームとして結束力を高めているかどうかがマネージャーとして評価される軸の一つでしたから、休日もほとんど会社の人間と飲みに行ったり釣りに行ったりしていましたよ」
タカオ氏は行動評価でも高い評点がつくようになり、順調に部長まで出世した。

何かに気づいてしまったタカオ

しかし。息子が6歳になり、小学校1年生となってはじめての運動会が近づいてきた頃。
タカオ氏は妻に強く言われたという。
「どうせパパはこないんだよね。と言われたと。私も来ることを何も期待はしていない。期待はしていないが、少しでも家族との思い出が大事だと思うなら今回は来たらどうなの。と。その時に、そういえば自分は親にかまってもらった記憶がなく、そういう思いを子供にさせたくないと思っていたのに・・・!って気づきましてね」
タカオ氏は、子供の運動会に行くことに決める。が、奇しくもその日は会社の半期キックオフの日であった。
「私の発表パートのみ出席するのでよいか、キックオフの統括をしている経営企画部の部長と交渉しました。彼は了承してくれました。しぶしぶでしたが。しかし・・・」
キックオフの前日。タカオ氏は社長と会長に呼び出された。
「子供の運動会に出るからキックオフは中座するのか?」
タカオ氏は運動会に出ることを説明した。タカオ氏はその後言われたことをはっきり覚えている。
「子供の運動会と仕事、どっちが大事だ!君には失望したよ。子供なんて勝手に育つんだ。奥さんいるんだろ?奥さんに面倒見させろ!」
タカオ氏は、その後も運動会に出るため強く意思を伝えたが、社長と会長の反応は変わるどころかむしろ悪化したのだという。
「「君が考えていることはよくわかった。仮に明日のキックオフに出たとしても君は反乱分子だ」と言われました。はは、私はこの会社での出世は絶たれましたね」

タカオ氏は結局運動会へ行った。その半期の評価は最低のE評価がついた。部長からは降格しなかったが。
「まだ君には更生のチャンスを与えている。と言われました。ただ、気がついちゃって。転職するつもりです。」
なぜタカオ氏は、違和感を感じながら、気づくまで会社に殉じようとしたのだろう。その点を聞いてみると、
タカオ氏は言った。
「自分はプライベートが大事だとか仕事の効率化が大事だとか言っているようなぬるいやつらとは違う。そんなおかしな自己満足があった気がします」
タカオ氏は現在転職活動中である。タカオ氏はこれからが脂がのる時期である。タカオ氏とその家族が幸せな選択となる転職を果たして欲しいと切に願うものである。

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