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【ボクシング】2・24メキシコ・ナウカルパンの2試合批評+6試合寸評


下半身の安定感の大切さ

☆2月24日(日本時間25日)/メキシコ・メキシコ州ナウカルパン/セントロ・デ・エスペクタクロス・サラウルバナ(サラウルバナ・エンターテインメント・センター)
バンタム級10回戦
○ホセ・アンドレス・テラン(24歳、メキシコ=53.16kg)
●ホルヘ・オロスコ(27歳、メキシコ=52.93kg)
※使用グローブ=REYES黒(テラン)、REYES赤(オロスコ)
KO9回33秒

 引いてカウンターを狙うオロスコに対し、テランは初回からしっかりとタメて打つ左ジャブをヒットさせ、オロスコのリターンをかわして逆にリターンを当てて主導権を得た。
 身長は165cmと同じながら、ずんぐりと見えるテランに対し、オロスコは明らかに細身に思えた。強振しても下半身がブレないテラン、パンチを打つと体が振られてしまうオロスコと、ボクシングスタイルの違いもさることながら、体の作り方の違いが試合展開に如実に表れてもいた。

 4ラウンドに入り、劣勢を変えようとオロスコが前に出て攻撃を強めるが、テランは決して慌てずにこれを受け止める。オロスコにパワーパンチがないという精神的なアドバンテージに加え、防御の意識も高く保っていたためだ。

 中盤は、お互いのリズムやテンポが合わさって、やや中だるみの様相となったものの、8ラウンド、テランがダブルジャブから強烈な右をヒットさせ、連打をまとめるとオロスコがヒザをついた。立ち上がったオロスコに決めた左ボディブローも有効だった。

 続く9ラウンド。開始から仕掛けに入ったテランは、右を打ってオロスコに頭を下げさせて左アッパーを突き上げる。これまでのラウンドでも有効に使っていた攻撃でオロスコを煽ると、プレスを強めてオロスコをロープ際に追い込む。ここでオロスコは、ロープ伝いにサイドへ逃げながら中途半端な右アッパーを打とうとする。と、テランがタメを作って放った右フックがカウンターとなってアゴを打ち抜く。キャンバスに前のめりにダイブしたオロスコを見て、セサール・カスタニョン・レフェリーがノーカウントで試合を止めた。

 キャンバスに沈んだまま起き上がらないオロスコの状況を、場内はしんと静まり返って見守ったが、数分後に起き上がった様子を確認すると、割れんばかりの拍手が注がれた。

テラン=15戦13勝(9KO)2敗
オロスコ=24戦17勝(11KO)5敗2分

小兵の戦い方として参考にしたいパラダの攻防

スーパーウェルター級8回戦
○チェステル・パラダ(26歳、メキシコ=66.42kg)
●ブランドン・ペレス(25歳、メキシコ=67.55kg)
※使用グローブ=NO BOXING NO LIFEスカイブルー・白(パラダ、ペレス)
KO3回46秒

 身長181cmのペレスに対し、169cmのパラダ。当然、リーチも長く懐も深いペレスだが、パラダは「距離を詰めなければ」「懐に入っていかねば」といった強迫観念を一切持たず、実にナチュラルな動きで対応した。ペレスが次々に繰り出してくるジャブ、ワンツーストレート、左フックをことごとくグローブで払い、止め、顔を上下左右に振ってかわす。その動きと同時に、体重移動を自然に行っているために、ペレスに意識させることなく間合いを詰めている。また、ペレスの長いジャブに対し、リターンのジャブをヒットさせる。おそらくペレスは距離感が狂ってしまったことだろう。

 グローブや腕を使っての防御の上手さだけでなく、体を揺すってのボディワークや、リズミカルにターンする姿は、古くて恐縮だが渡嘉敷勝男を思い出させた。いわゆるメキシカン体形でなく、しっかりと鍛え込まれた体もまた、昭和の日本人選手たちを彷彿とさせた。

 パラダは決してパワーを駆使したラフなファイターではない。攻めていてリズムがあまりよろしくないと感じるや、スッと離れて立て直す。そのまま攻撃に突き進むと、往々にしてリズムを壊してしまうものだが、攻撃モードに入るとなかなか自制を利かせられないのもまた“ボクサーあるある”。これができるかどうかが選手を見極めるひとつの指標ともなる。ひとつの参考にしてほしい。

 決して慌てることなくじわじわとペレスを追い込んでいたパラダは3ラウンド、ペレスの右フックをかわしざまにショートの右アッパーを突き上げる。すると、これがものの見事にアゴを射抜き、ペレスがダウン。辛くも立ち上がったものの、大きくフラつく姿を確認し、カスタニョン・レフェリーがカウントアウトした。

パラダ=18戦14勝(10KO)3敗1分
ペレス=13戦8勝(2KO)3敗2分

スーパーライト級6回戦
○アリエル・ゴンサレス(22歳、メキシコ=60.92kg)
●イスマエル・アビレス(31歳、メキシコ=62.15kg)

※使用グローブ=REYES銀(ゴンサレス)、REYES赤(アビレス)
判定3-0(59対55、60対54、59対55)

 2ラウンドに、アビレスの頭が当たって口の中を切って出血したゴンサレス。だが、アビレスのモーションが大きくスローなパンチも手伝って、アウトボクシングを徹底することができた。

ゴンサレス=9戦4勝(2KO)2敗3分
アビレス=10戦3勝(2KO)6敗1分

女子スーパーバンタム級4回戦
○カルラ・アルダマ(28歳、メキシコ=53.70kg)
●ジェニフェル・プラッツ(25歳、メキシコ=54.84kg)

※使用グローブ=REYES赤(アルダマ)、REYES金(プラッツ)
判定3-0(39対37、39対37、39対37)

 明らかに増量した体型ながら、それでもリミットにかなり足りていないアルダマ。しかし、思いきりよく踏み込んで放つ右フック、返す左フックを初回から何度もヒットさせて、プラッツを後退させた。上体を必死に動かしてかわしたいプラッツだったが、よける方向を予測されて打たれていた。

アルダマ=2戦1勝1敗
プラッツ=2戦1勝(1KO)1敗

スーパーライト級6回戦
○アルマン・ガルスティアン(23歳、ロシア=63.01kg)
●ジョー・ロドリゲス(27歳、メキシコ=62.74kg)

※使用グローブ=REYES赤(ガルスティアン)、REYES黒(ロドリゲス)
TKO4回26秒

 メキシコを拠点とし活動しているらしいガルスティアンが、サウスポースタイルで余裕をもってロドリゲスをさばき、そしてヒットを奪う。4ラウンド、左ボディアッパーから左のオーバーハンドをヒットさせて効かせると、連打を仕掛けレフェリーストップに持ち込んだ。

ガルスティアン=6戦6勝(2KO)
ロドリゲス=11戦5勝(2KO)5敗1分

ライト級4回戦
○ビセンテ・クルス(22歳、メキシコ=61.24kg)
●マルティン・バルガス(18歳、メキシコ=60.92kg)

※使用グローブ=NO BOXING NO LIFEスカイブルー・白(クルス、バルガス)
判定2-0(39対37、38対38、39対37)

 サウスポーのバルガスが、初回から左アッパーを上下に打ち込んでいく。特にカウンター気味に入るボディブローは有効だったが、クルスはそのアッパーに右ストレート、左フックを合わせてポイントを奪った。バルガスは右構えにスイッチするなどして打開を図ったが、およばなかった。

クルス=2戦2勝(1KO)
バルガス=4戦1勝(1KO)3敗

スーパーフライ級4回戦
○セルヒオ・コルドバ(21歳、メキシコ=51.61kg)
●ブライアン・グティエレス(17歳、メキシコ=51.61kg)

※使用グローブ=REYES銀(コルドバ)、REYES赤(グティエレス)
TKO3回48秒

 右構えでスタートしたコルドバは、左構えも頻繁に併用するが、いずれもグティエレスのタイムリーな左フックを合わされた。ラフな攻撃を仕掛けるコルドバに、若いグティエレスも乗ってしまい、試合は混沌とした状態に。そして3ラウンド、コルドバがサウスポーからのオーバーハンドレフトをヒットすると、グティエレスの上体が横倒し気味となり、レフェリーがここで試合を止めた。

コルドバ=2戦2勝(1KO)
グティエレス=4戦1勝3敗

ライト級6回戦
○アブラーム・アマドール(22歳、メキシコ=61.29kg)
●ブライアン・パトリシオ(29歳、メキシコ=60.83kg)

※使用グローブ=REYES赤(アマドール)、REYES金(パトリシオ)
TKO3回42秒

 サウスポーという触れ込みながらオーソドックスでスタートしたアマドール。2ラウンドに入ると左で始め、右にスイッチし、タメを作った左フックから右ストレートをパトリシオのボディに差し込んでダウンを奪った。
 続く3ラウンド、右構えから左に変わったアマドールは、パトリシオをニュートラルコーナーに追い込んで左ボディアッパーの3連打。ダメージをみたレフェリーが両腕を交差した。

アマドール=8戦8勝(4KO)
パトリシオ=16戦2勝14敗

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全8試合を裁いたセサール・カスタニョン・レフェリー。お疲れさまでした!

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