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【ボクシング】アコスタ浮上ならず。狡猾な無敗コルドバが3-0勝利

☆4月6日(日本時間7日)/アメリカ・カリフォルニア州インディオ・ファンタジースプリングス・スペシャルイベンツセンター
WBOインターナショナル・フライ級王座決定戦10回戦
○アンヘリーノ・コルドバ(ベネズエラ)WBOライトフライ級10位
●アンヘル・アコスタ(プエルトリコ)WBOフライ級6位
判定3-0(96対93、95対94、95対94)

 僅差の勝負にまで持ち込んだことが、かつて輝いた底力、せめてもの抵抗だった。軽量級では破格のパンチングパワーを誇った元ライトフライ級王者。ちらちらと往年の光は見せたものの、その度合いを知る者にとっては、時の流れを痛感せざるをえず、現実の残酷さを見せつけられた思いだ。

 1階級下のWBOラティノ王座を獲得したばかりの27歳コルドバは、距離を取って入り、出ては間合いを潰し、を繰り返した。2ラウンドからいつもどおりプレスを強めていったアコスタに、決して怯えることなく、時に打ち合いにも応じ、相打ちでも常に優ってみせた。

 アコスタのスタイルは、現代軽量級、いやクラスにかかわらずボクシング全体の流れに逆らうものだ。スピード、コンビネーションを追求する傾向にあって、とにかく強いパンチ、左フックをぶち込む。1990年代の軽量級スター、マイケル・カーバハル(アメリカ)を彷彿させるボクシングなのだ。

 このスタイルには決定的な穴が生じる。体軸を利かして打つフォームを取るために、どうしても動きが止まり、体の芯が固まる。なおかつアコスタの場合は、下半身主導でなく、上体のパワーを全面に押し出すものだから、リターンブローなどの反撃を食った場合、ダメージを蓄積させてしまう。17勝12KO1分という戦績のコルドバだが、一撃の威力はさほどなく、“HURACAN(ウラカン)=ハリケーン”のニックネームどおり、回転力で勝負するタイプ。それだけに、手数はもちろんのこと、相打ちでも後出しでもほぼ常時、コルドバが上回っていった。

「アイーン、アイーン」と聞こえるコルドバの発声(日本人が聞けば誰もが笑ってしまうはず)は、フルラウンドに渡ってリング上に響き渡った。その声が途切れることなく手数が繰り出される。インターバル毎にジョエル・ディアス・トレーナーの叱咤を受けて臨むアコスタは、時折右を振ってコルドバを中におびき寄せ、そこへ左フックを狙うという技も見せつけたが、コルドバの“間合い潰し”が優る。また、コルドバはホールディングやラビットパンチ(4ラウンドに減点1)も織り交ぜて、アコスタの集中力を削ぐという狡猾さも見せた。これはイメージ的にベネズエラ人選手に伝統的にある“astucia(ずる賢さ)”だ。

 アコスタも2ラウンドにはブレーク直後にローブローを見舞ってコルドバを倒し、その後は何食わぬ顔でボディーを狙ってみせたのだが、コルドバの動きと手数に立ち遅れがどんどんと目立っていった。

 7ラウンドには弱気な表情を見せたアコスタは、蓄積ダメージもさることながら、スタミナの消耗が激しかった。あれだけのパワーパンチの空振りを繰り返していたのでは、それも当然のことだった。しかし、リングサイドに陣取って、悲痛な叫びで声援を送る妻アレリー・ムシーニョ(IBFフライ級チャンピオン=メキシコ)にも後押しされて、アコスタは何度も何度も一か八かの勝負を示した。コルドバに打たせて狙う左フックのカウンターだ。
 けれども、マウスピースを飛ばすことこそ数度あれ、かつてのように相手をキャンバスに這わせることはついに叶わなかった。

 しっかりとナックルのポイントで打つことのできないコルドバだが、旺盛な体力こそが彼の最大の武器なのだろう。アコスタに巻き込まれずに、自ら打ち合いを挑んだり、距離を取ってジャブからの立て直しを図ったりと、戦術面でアコスタを上回っていた。けれども、レベルダウンしたアコスタをもっと明白に下せなかった点に、世界のトップで戦うにはまだまだ足りない部分があることも表れていた。

《YouTube『Golden Boy Boxing』チャンネル・ライブ配信視聴》

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