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【ボクシング】2・16ニューヨークの4試合を批評&考察


フォスター薄氷の勝利。6Rに打ち込んだ楔がポイントと見た

☆2月16日(日本時間17日)/アメリカ・ニューヨーク州ニューヨーク/マディソンスクエアガーデン・シアター
WBC世界スーパーフェザー級タイトルマッチ12回戦
○オシャキー・フォスター(30歳、アメリカ=59.02㎏)チャンピオン
●エイブラハム・ノバ(30歳、アメリカ/プエルトリコ=58.56㎏)12位
※使用グローブ=RIVAL白(フォスター)、RIVAL白・桃(ノバ)
判定2-1(115対112、113対114、116対111)

 右から左。左から右。両構えを器用に使いこなすフォスターのその器用さが、仇となりかけた点もありつつの、しかしそれによって抜け出すこともできたという両面が出た。ノバが微妙に角度やタイミングを変えて打ち込んでいった右クロスにフォスターは苦しめられ、しかし、それにこだわるノバの気持ちを逆手にとって、そこにハメ込んで展開を変えていく。
 序盤こそ、予想以上にノバの煽りを喰って、フォスターはパターンを変えざるをえなかったが、追い詰められて変化を加えていくのでなく、変化することによって主導権を握る方向にシフトした。フォスターは、パターン変更にノバをついてこさせる、食らいついてこさせるという形を強いた。ノバも手数で押し込むというパターンに変えたが、フォスターの変化に苦し紛れ感は否めなかった。フォスターに対応されてもいた。それがこの結果に表れたのだろう。

 個人的スコアを明かすと、114対113でフォスター。最終回、前進を強めるノバに、フォスターはロープ伝いに下がりながら左フックを合わせてダウンを奪ったが、これがなければドローという採点。フォスターを支持したジャッジ二者以上に、フォスターに厳しいスコアをつけていたが、主導権争いという点を考えれば、フォスターを評価して見ていた。だからボクシングというのはおもしろく、そして難しい競技なのだと思う。

 4ラウンドまでは行ったり来たりの一進一退だったが、5ラウンドは初めてノバがポイントを連取したと見た。圧力を強めたフォスターに対し、ノバは左フックのカウンターを決めて、フォスターの焦りを増長させた。だからフォスターはさらに強引にプレスをかけて右を放っていく。その右をノバは左ヒジを上げてカバーする対応を取っていたが、流れたフォスターの右と、腕をかち上げるようにしてカバーするノバの左ヒジが接触。フォスターがここで右ヒジを痛めてしまったらしい(試合後、本人がヒジを痛めたことを認めた)。
 その後のラウンドでも、ほとんど気づかれないように、痛みを逃がすように右腕を少し振る仕種を重ねていたが、やはりそういうことだったのだ。

 続く6ラウンドが最大のポイントだったと思う。フォスターはここで、先に攻めてノバを煽り、リターンブローをしっかりと外し、さらに右を合わせるという戦術を取った。熱くなっていた心をクールダウンさせるようなラウンド。そして、乱れ気味だったリズムも取り戻していた。4、5ラウンドと来て、さらに上げていきたかったノバを制した。グサリと楔を打ち込んだのだ。
 その後のラウンドで、ノバが連打型に変更し、ポイントを取り返したものの、無理をしてスタミナを使う羽目になり、彼のリズムは乱れていった。それゆえ、この6ラウンドのフォスターの措置がことのほか重要だったのだ。

 結果だけ見れば、その1ラウンドの影響はなかったかもしれない。だが、試合の趨勢を左右するポイントというものが必ずある。私はそれを6ラウンドに見い出したが、これが絶対に正解だとも思わない。私にはそう見えただけで、観る者によっては別のポイントが重要だという意見もあろう。
 各々の意見や感じたことを表明し合う。それによって、よりボクシングの奥の深さ、おもしろさ、凄さを味わっていければ──と思う。

フォスター=24戦22勝(12KO)2敗
ノバ=25戦23勝(16KO)2敗

コルテスが世界ランカー対決に圧勝

WBOインターコンチネンタル・スーパーフェザー級タイトルマッチ10回戦
○アンドレス・コルテス(26歳、アメリカ=59.02㎏)WBO15位
●ブライアン・チェバリエル(29歳、プエルトリコ=58.56㎏)WBO4位

※使用グローブ=EVERLAST赤(コルテス)、RIVAL黒(チェバリエル)
TKO4回2分17秒

 かつて日本のファンを盛り上げたヘナロ・エルナンデス(アメリカ)を思い出させるような体型のチェバリエルだが、コルテスの猛烈な踏み込みから繰り出される右主体の攻撃に、ほとんどなす術なく終わった。チェバリエルはどうしても構え遅れるスタイルで、そこをコルテスが見事に潰していった。3ラウンドにダウン寸前となったチェバリエルに、続く4ラウンドにコルテスがプレスを強めて右を放ち、サウスポースタンスになったまま左フックを振って煽り、ロープ際から脱出しようとしたチェバリエルのテンプルに右をヒットして効かせ、連打を仕掛けたところでのストップ。チェバリエルのセコンドが、インスペクターに進言し、アピールを受けてリッキー・ゴンザレス・レフェリーが止めたもの。コーナーインスペクターにある程度の権限があるシステムは、やはりとてもよいと思う。

 強い攻撃力で印象づけたコルテスだが、ハイガードの正面が空いており、初回にチェバリエルのジャブを簡単に通されていた。ほんのわずかの可能性だったかもしれないが、チェバリエルがこのジャブを主体に組み立てていれば、もう少し違った展開になったのかもしれない。

コルテス=21戦21勝(12KO)
チェバリエル=23戦20勝(16KO)2敗1分

“コンテンダー”キャリントンが戦慄KO勝利

NABF・IBFインターコンチネンタル・WBOインターコンチネンタル・フェザー級王座決定戦10回戦
○ブルース・キャリントン(26歳、アメリカ=56.97㎏)WBC29位
●ベルナルド・トーレス(27歳、ノルウェー/フィリピン=56.97㎏)

※使用グローブ=EVERLAST黒(キャリントン)、EVERLAST赤(トーレス)
KO4回2分59秒

 サウスポーのトーレスは、バランスよく迫力も備わる好選手に見えたが、キャリントンは数段上のレベルの持ち主。サウスポーに対してもジャブをスムーズに打つことができ、これで試合を作れるのはもちろんのこと、先攻め、後攻め、攻勢をとっても、引きながらカウンターを狙っても……といった具合に、なんでもできて、すべてのパターンでトーレスを上回った。
 グローブや肩、上体、パンチといったように、様々な所作でフェイントを生み出せるキャリントン。そのすべてに過剰なまでに反応してしまうトーレスは、繊細さが逆に裏目に出てしまった。

 4ラウンドに入ると、キャリントンは右をリードブローにして、初回から鋭くタイミングも合っていた左フックを狙っていたが、最後は右アッパーに右フックのカウンターを狙わせて、逆に右フックをカウンタ―。バッタリと倒れ込んだトーレスに、カウント10が数えられた。

キャリントン=11戦11勝(7KO)
トーレス=20戦18勝(8KO)2敗

止めるのに「地元選手」という事情を考慮する必要なし

ヘビー級8回戦
○グイド・ビアネロ(29歳、イタリア=109.98㎏)
●モーゼス・ジョンソン(31歳、アメリカ=112.81㎏)

※使用グローブ=EVERLAST黒(ビアネロ)、EVERLAST赤(ジョンソン)
TKO1回2分59秒

 明らかなノックダウンながら、押し倒しと裁定された1度も含めれば、あっという間の計4度ダウン。ビアネロの右を側頭部に受けたダメージが濃厚で、ジョンソンはすでに触れば倒れるような状態。だが、シャーデ・マードウ・レフェリーは、立ち上がったジョンソンをその都度歩かせてダメージ具合を判断し続行したが、無用な長引かせ、とても危険だった。ジョンソンが地元ニューヨークの選手ということを考慮したのだろうが、要らぬ気遣いだ。

ビアネロ=14戦12勝(9KO)1敗1分
ジョンソン=15戦11勝(8KO)2敗2分

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