【ボクシングコラム2023-vol.7】YouTubeとの付き合い方

 気がついたら時代に取り残されていた。いつまでを「若い」といい、いつからを「年食った」というのかよくわからんが、とにかく若い頃はとりあえず時代に何とか食らいついていけていたとは思う。でも、いつの間にやらこうなのである。

「SNS」というものも、Twitter、Facebook、Instagramまでは何とかわかる(つか合ってる?)けど、どこからどこまでをそういうのかすらさっぱりわからん。YouTubeがその範疇に入るのかどうかすらわからない。「今時の若者はテレビよりもYouTube」というのはうっすらと気づいている。だからいまだ“テレビっ子”の私は置き去られた。もう、追いかける元気もない。いや、追いかけるつもりもない。

 ボクシング界もいまやすっかりSNS時代に突入した。そしてたくさんのボクサー、関係者がYouTubeに乗り込んでいる。SNSを見張り、YouTubeを丹念にチェックすれば、それだけで記事を書けてしまうという便利な時代となった。

 YouTube、見たら見たで実におもしろいんだよなぁ。選手も関係者も普段は語ってくれないようなことをリラックスしてのびのびと話してるんだもの。でも、なんだかそれって悔しいじゃん。それに、自分が聞きだしたことじゃないことを、YouTubeで耳に入れてしまったことで、「自分が聞いた」って脳みそが勘違いしてしまうのですよ。で、何かの記事を書くときに、それを自分が取材したことと思い込んで書いてしまったり。
 これって、とてつもなく恥ずかしいのですよ。個人的には「パクリ」と変わらないと思ってるし。YouTubeだけじゃなく記事もそう。他の記者やライターが書いたものを極力読まないようにしてるのは、なにも意地を張ったり嫉妬したりしてるわけじゃない。それをさも自分が取材したことと勘違いしてインタビューを始めたり記事を書いたりしてしまうのが恥ずかしいし、申し訳ないと思うからなのだ。

 中には「YouTubeで話してるんだから、それを観た前提で取材を始めてくださいよ」って思ってる選手や関係者もいると思う。こちらにはその気がなくとも、その筋通りの取材になってしまった場合、先方に「二度手間」感が発生してしまうから。そりゃそうだよね。一所懸命語って編集したものを、もう1度話さなきゃいけないんだから。
 だからそういうことにならないように、こっちも妙な感覚を、足りない語彙力を振り絞って言語化し、なんとか変わった取材にしようとしている、という面もあるのである。

 こんな天の邪鬼な理由も絡みついてしまい、YouTubeを敬遠気味になっているのだが、そんな私でも、けっこう丹念に見てしまっているものがある。それが『A-SIGN BOXING』チャンネル(https://www.youtube.com/@ASIGNBOXINGCOM)だ。
 基本的に横浜光ジムの石井一太郎会長が語り、弟の六大さんがインタビュアーと編集等、その他を兼務しているもの。石井会長の語り口が軽妙かつ知的で惹き込まれる。六大さんの突っ込み方も鮮やか。編集の技術も生半可じゃない。こちらも“ネタ探し”とかそういう邪な気持ちでなく、純粋にボクシングの、業界のおもしろさを伝えてくれるから、いちファンとして見入り聴き入ってしまうのだ。

 もちろん職業としてもとても勉強になる。小國以載(角海老宝石)が栗原慶太(一力)と対峙したときの振る舞い、赤穂亮(横浜光)がジョンリエル・カシメロ(フィリピン)を迎えたときの初回の話などゾクゾクしてしまう。そうなのよ、こういう駆け引き、やり取りを知りたいんデス。私自身も伝えていきたいんデス。
 で、これって「強がる」「知ったかぶる」傾向の強いマニアより、実はボクシングに詳しくない一般の人の方が「純粋に感心してくれる」ということに私は気づいたのでした。

 しかし今回もまた、やってくれましたねぇ。何あのラスト。しかもあの「ジャ~ン♪」ってバックミュージック。いやはやもう、ホントお手上げ。

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