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【ボクシング】粘り強くカウンターで対抗するコミーに、音を上げなかったラミレス

☆3月25日(日本時間26日)/アメリカ・カリフォルニア州フレズノ/セイヴ・マート・センター
WBC世界スーパーライト級挑戦者決定戦12回戦
○ホセ・カルロス・ラミレス(アメリカ)5位
●リチャード・コミー(ガーナ)9位
KO11回2分31秒

 とうに峠を越えていると思った36歳のコミーに謝罪をしなければならない。立ち上がりからラミレスの分厚い攻撃を受けながら、ベテランらしい味のある回避を繰り返し、そればかりでなく最後の最後まで、カウンターでの逆転を狙い続けたその精神と肉体に。と同時に、根気よくコツコツと試合を作り続けたラミレスの集中力に感心させられた。

 ライト級上がりのコミーとは、体の大きさも厚みもひと回りは違うように見えた。試合開始からラミレスはそれらが与えるだろうプレッシャーも利用して、コミーに何度もロープを背負わせて、上下の波状攻撃を仕掛けていった。そして早々に「左ボディーブロー」がキーとなると悟ったことだろう。連打の中に必ず織り交ぜるこの一撃に、必ず「強」を含ませた。しかし、早い回で沈むことも予想させたコミーは、これにまったく臆することなく堂々と、真っ向からカウンター攻撃で迎え打ったのだった。

 ボディーブローには左フック。右フックには右ストレート。一歩間違えれば自身がカウンターの餌食となってしまうのに、迷いをひとつも感じられない。それだからこそ、ラミレスにとってはどうにも邪魔になったのだ。

 ラミレスは連打の繋ぎ目に、若干の“間”ができる。これは離れた距離では相手の感覚を狂わせるものとなるのだが、至近距離では“穴”となる。コミーはそこを狙った。パンチのキレ、連打の回転力では自分に利があると確信していたのだ。

 ラミレスもそれを認識したのだろう。途中から脇を絞ってコンパクトに打つ連打に切り替えた。そしてなおかつ、至近距離で右足をサイドに大きくずらして左ボディーブローを刺す。これは立ち位置が変化するのでリターンを貰いずらくなり、しかもパンチのタイミングや軌道も変わり、相手を困惑させるに充分な攻撃だ。おそらくロバート・ガルシア・トレーナー仕込みなのだろう。

 各ラウンド、ポイントはラミレスが押さえていただろう。が、中間距離でもコミーのカウンターは冴えていた。ラミレスの左にかぶせる右はなかなかのものだった。また、パンチを繰り出すタイミングを調節する能力も長けていた。やはりラミレスは接近戦に活路を見い出すしかなかった。

 11ラウンド。近距離でラミレスがショートの右アッパーを小突き上げると、コミーの体はついによろめいてキャンバスに着地してしまった。
 ここまで必死に踏ん張ってきたコミーだが、それでも気持ちを切らさずに立ち上がる。最初からずっと総攻撃を仕掛けてきたラミレスの消耗も激しい。コミーはここでフットワークを刻み、右カウンターを狙いにいく。
 が、ラミレスがロープに押し込む。とうとう危機を感じたコミーのカウンターブローは、気持ちの表れから若干開いてしまう。きっとラミレスはこれを待っていたのだろう。流れる右をかわしざま、左ボディーブローが突き刺さる。カウンターに対するカウンターだ。
 ここまでなんとか耐え抜いてきたコミーだったが、ロープ伝いによろけていって、キャンバスにヒザを着いた。そしてジャック・リース・レフェリーの10カウントを神妙な表情で聞き入れた。

 わが国では昔から「ボディーブローで倒れるのは恥」と言われている。だが、この日のコミーにそんな想いは一切抱かない。最後の最後までカウンターを狙い続けた末、ラミレスが彼を上回るカウンターを決めてみせたのだから。

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