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管理部門の順番

今回は経理部門を含んだ管理部門の規模による状況を取り上げたいと思います。私は監査法人勤務時代、コンサルティング会社勤務時代、独立してからと様々な会社の管理部門をみてきました。管理部門の業務の本質にそれほど差はないものの、やはり、その会社規模、業態によって異なっています。今回は規模に応じた管理部門の状況について取り上げたいと思います。

1.管理部門のなりたち

そもそも管理部門とは何か、という話はありますが、議論しだすと長くなりますので、ここではみなさんがなんとなく想像するバックオフィス業務、いわゆる総務、経理、人事といった業務を行う部門として進めたいと思います。

創業者が起業したときは、まずは創業メンバーだけであり全員で事業をしています。 専任の管理部門の人員を保持する財務的余力がなく、また業務量もないため、通常、バックオフィス業務専任のメンバーはおらず、各人で掃除やゴミ捨てといった庶務的業務から、請求書の作成や支払いなどの経理回りの業務や採用等の人事業務も自ら行っていることが一般的です。

経理部の基本的な業務である記帳、支払のうち、記帳は給与計算とともに外部の会計事務所に委託していることも多く、支払は経営者が自分で行っています。記帳については、最近ではfreeeといった従来の簿記の知識がほとんど必要なく使える会計ソフトがでてきており、経営者自らがやっていることもよくあります。 この段階では、当然、経理部門どころか管理部門自体がありません。

2.従業員10人〜30人ぐらいの会社

事業がある程度うまくいき、創業者の他にベンチャーとして、中途社員が増えていき10人を超えたぐらいで、経費精算、給与支払いなどの庶務業務も増えます。加えて本業においても外部に委託する業務のやりとりも増えてきます。このため、管理部門専任の人がほしくなります。オフィスも元々マンションの一室であったようなところから、きちんとした オフィスに移転するのもこれぐらいの時期です。

この規模の会社では、庶務を含め管理部門的な様々なことをやってくれる人は正社員ではなく、派遣社員やアルバイトの場合も多く、記帳や給与計算といったものはまだまだ外部の会計事務所に委託しているケースが多いかと思います。

さらに人員が30人規模となってくると、経営者がすべての社員に密にコミュ ニケーションとることが難しくなり、創業当時の阿吽の呼吸で業務を行うといったこともできず、会社を運営するうえである程度ルールや仕組みが必要となってきます。管理部門が実施するような業務も増えてきて、複数の専任者が置くことになります。よくあるパターンとしては正社員1名+1,2名のアシスタント(派遣やアルバイトの場合もあります。)の管理部という形で部署となります。まだ経理部門を別に置いている企業は多くありません。

この規模になると取引先の数や取引の件数も多くなり以前のように、経営者が資金繰りを頭の中で片手間に実施することが難しくなり、専任の者を配置して、定期的な報告がほしくなります。このような経営者のニーズに応えるべく管理部社員は財務的な業務である資金繰りも考えることになっていきます。

3.従業員50人規模の会社

さらに事業規模が拡大し、従業員が50人くらいになってくると、経営者が各人に指示を与えるのは現実的に難しくなるため、中間管理職がおかれ、組織として業務の分業化や組織化が進んでいきます。管理部門においても、業務の細分化がすすみ、まず、業績や資金繰りなどの 数字周りの専任となる経理チームが管理部の中で分離され、外部に委託していた記帳業務なども内製化されます。ここでやっと経理部門として成立しますが、主要な業務は月次締め、支払い、資金繰りといった業務であり、予算実績管理といった経営を数値で検証することはしていない会社がほとんどです。

ちなみに最近のベンチャー企業では採用業務を重視しているところもあり、 その場合にはこのぐらいの規模の会社でも専任の採用担当者をおき、管理部とは別に経営者直轄のチームとして組織化することもあります。

4.従業員100名規模の会社

従業員が100人規模となってくると、経営者は経営に集中することになります。経営とは何かというと話が広がっていくため、ここでは特段言及しませんが、組織としては、役割毎の部署ができ、分業体制が進んでいく状況となり、管理部門としては一定の専門性も求められることが多くなります。

事業規模の拡大、組織の拡大によりバックオフィス業務増えることになり、管理部門の人員が増えるとともに、専門性の高まりにより管理部門内での分業が進み、経理以外の各業務のおいても専任の担当者が置かれ、場合によってはチームとして組織になります。

個人的見解ですが管理部門の分業の進み方は下記のようかと思われます。

1.管理部のみ

2.経理チームと人事総務チーム

業績や支払いといった数字周りの業務が高まり、専任の経理担当が置かれる。この段階では人事総務チームが経理業務以外の契約書関連や情シス的業務も含めて実施していることが多い。

3.経理チーム、人事チーム、総務チーム

社員が増え、採用、勤怠、給与計算、入退社手続き、社会保険手続きなど人事関連の業務が増え、人事チームが専任となる。それ以外の庶務や備品管理、契約管理などの管理業務は総務チームが担う。

4.経理チーム、人事チーム、総務チーム、情報システムor法務

経理、人事、総務により会社として大体の業務がカバーできるが、業種によっては契約が重要になったり、情報システムが重要であったりする。その場合、さらに総務チームから情報システムチームや法務チームが切り出される。

5.広報、IRの設置

会社がさらに成長し上場をした場合、会社のブランディングや適切な情報発信、メディア対応等の必要性から広報が設置され、投資家対応のためにIRが設置される。 そのため、いわゆる上場前のベンチャーといっても各フェーズにおいて管理部門の求められる業務の範囲、深度、専門性は全く異なります。(作成日:2018年8月29日)

■執筆者:株式会社ビズサプリ パートナー 泉 光一郎

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