見出し画像

1on1で「ベテラン部下とどう向き合う?」問題【前半】

今回のお題も、よくご相談を受けるトップ3のひとつ。年上ベテラン部下についてです。

「部下に自分より年上で仕事経験も豊富なメンバーがいるのですが、1on1で自分が役に立っているように思えません」

「58歳の部下と1on1をしていて、内省支援と思っているのですが『いまさら成長しろって言われてもねぇ』といつも後ろ向きです」

【お悩み相談例】

まずは具体的にイメージするところからいきましょう。上司のスズキさんと、ベテラン部下のタナカさんが、1on1ミーティングをしているところです。

01-上司:「今日はどうしましょうか? 何かありますか?」
02-部下:「いや、今週は・・・特にこれといって…変わったことはないですね」
03-上司:「仕事をしていて、ちょっと気になっていることとか」
04-部下:「うーん、そうですね…、業務で困っているほどのことはないですけど、最近は特に、長時間座って作業していると腰に来るかな」
05-上司:「え?」
06-部下:「数年前に腰を痛めたことがあって、それは治ったんですが、また最近ちょっと」
07-上司:「あ、ああ、腰痛ですか」
08-部下:「そう」
09-上司:「そ、それはつらいですね」
10-部下:「うん、つらいな」
11-上司:「 … 」
12-部下:「そんなこと話されても困るか」
13-上司:「いえ、そんなことないですけど…」
14-部下:「あ、そういえば話そうと思ってたんだけど、ヤマモト君が進めているプロジェクト、あるでしょ?」
15-上司:「ええ、業務改善プロジェクト」
16-部下:「そうそう、あれ、僕も関わってるんだけど、彼の進め方、どうなのかなぁと思って」
17-上司:「え? と、言いますと?」
18-部下:「いや、やっぱりね、彼の力量じゃまだ無理なんじゃないかな。周りはやきもきしてますよ。いかんせん業務知識が不十分」
19-上司:「そ、そうですか…?」
20-部下:「それに、あの上から目線もよくないなぁ。あれじゃ、人はついてこないよ」
21-上司:「いや、でも…」
22-部下:「別に文句を言いたいわけじゃないですよ」
23-上司:「もちろん、まだ足らない部分はあると思いますし、タナカさんから見たら頼りなく映るかもしれません。でも、彼もがんばっているんです」
24-部下:「頑張っていないとは言ってませんよ、ただ、どう言うかな、上司がちゃんと見てあげなくちゃ」
25-上司:「自分では見ているつもりです」
26-部下:「まぁ、そうでしょうけど」
27-上司:「育成という意味では、ベテランのタナカさんの指導にも期待してるんですよ」
28-部下:「オレ? 見てますよ。だからこうして伝えてるんでしょ。でも、そこは本来マネジメントの仕事でしょ」
29-上司:「確かにそうですけど…」
30-部下:「マネージャーは、スズキさんなんですから」
31-上司:「…」
32-部下:「ま、わかりますけどね」
33-上司:「タナカさんには、長いご経験を生かした後進指導を期待しているんです」
34-部下:「ま、オレもあと2年だしなぁ」
35-上司:「そんなぁ」
36-部下:「事実だろ」
37-上司:「まぁ、そうですけど…」

【対話例-前半】

さて、ここまでいかがでしょうか? 1on1の冒頭、せいぜい5分弱のやり取りです。なんとも苦しい、滞るような展開ですね。

1on1ですから、この後どのように進んでいくかは百人百様です。模範的な展開方法があるわけではありません。ただ、少なくとも“内省を目的”とする1on1であれば、やりたいのは「相手自身が考えていることを、当人と一緒になって表に出し解像度を上げていくこと」です。このケースで言えば、タナカさんの頭や心に潜んでいる考えや思いを声に出してもらい、次の行動につながる材料をつくる手伝いをすることが、上司には期待されています。

部下のほうが経験も知識も豊富なのだから、1on1の相手をするのは無理という方もいらっしゃいます。しかし、1on1での上司の役割は、出てきた考えが「常識と照らして合っているか間違っているかを判断すること」ではありません。ですから、話し手の専門性に勝った知見が、聴き手側に求められることはないと考えてもらって大丈夫です。

だとしたら、このあと、あなたが上司なら、どう1on1をリードしていきますか?

(つづく)

対話例-後半はこちらです。



bizlogueではYouTubeでも情報発信を行なっています。

bizlogueメンバーによる著書はこちらからどうぞ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?