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ジョブ型雇用社会とは何か: 正社員体制の矛盾と転機 (岩波新書 新赤版 1894) 新書 – 2021/9/21

もうすでに2年前くらいになりますが、この「ジョブ型」という言葉がニュース記事や解説動画のなかで飛び交っていました。あっという間に静かになってしまいましたが、その後どうなってしまったのでしょう? 安倍政権時代に働き方改革が叫ばれ始め、その関連キーワードとして登場したという印象なのですが、あたかもその解決策かのような論調で語っている学者の方々の発言に違和感を覚えたのを思い出します。その違和感の正体を探りたく、手に取ったのが本書でした。

実は、著者である濱口先生が、そもそも「ジョブ型」&「メンバーシップ型」という表現の生みの親だとのこと。世間でにわかに流通し始めたこれらの語について、「そういう意味で言ったんじゃないんだよな」という話から始まり、まずそのパートを読んだだけで、ジョブ型が示す本来の概念理解をゲット。この時点で、世に流れる“専門家の意見”を耳にするたびに、その発言がいかに突っ込みどころ満載かということがわかるようになります。そして、本書のいよいよコア部分で、濱口先生がジョブ型という術語をつくってまで本来説明したかった日本の労働事情の本質に迫っていくことになります。

「流行りコトバが出てきたので、一冊読んでやっつけてしまおう」くらいの軽薄な気持ちで読み始めた私ですが、その先にとんでもなく深い世界が広がっていることを知ることになりました。特に戦後における人々の労働環境と訴訟・判例の話、法律や社会背景の変遷、そして国内に閉じきれない様々な事情とその経緯などなど、この新書300ページによくぞ収めてくださいましたという濃い内容でした。

やや上述の繰り返しですが、各種メディアに登場する専門家と称する人たちによる、「ジョブ型」という語を使った解説を耳にするたびに、ニヤッとできる程度の知識が十分に得られたという意味で、特に人事や経営企画などに携わる方々におすすめしたく思います。

(おわり)


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