見出し画像

GIG MINDSET ギグ・マインドセット ~ 副業時代の人材活用 単行本 – 2021/3/5

日本で会社勤めをしている人にとって、所属する会社以外で仕事を持つことは、2023年現在においても、まだそれほど一般的ではないようです。一方、とある調査(Doda(パーソル)による調査 2023)によると、確かに割合こそまだ10%に満たないですが、ここ数年の「働き方改革」による動きや、新型コロナ禍の影響もあってか、副業に対する意識の変化は明らかなようです。あとは企業側のルール次第で大きくはじけていく予兆が感じられます。

この方向に世の中が動いていくとして、たとえば20年後はどうなっているでしょうか? 今20歳の人は40歳に、40歳の人は60歳になっている2043年頃の様子を思い浮かべてみたいです。予想困難ではあるものの、少なくとも逆行しているとは思えません。おそらく人々はますます様々な領域や組織にまたがって活動をしているのではないでしょうか。なぜなら、上述の調査からわかることとして、副業を阻んでいる大きな要因のひとつは、所属企業が副業を許していないという事情があるからです。

では、企業による副業禁止は、どこまで保持することができるのでしょうか。言い換えると、企業は社員の生涯雇用をどれだけ保証できるのかという問いに重なってきます。新社会人の3割が入社3年以内に辞めてしまうという現実から、長く働いてもらうことを想定した社員教育もしづらくなってきました。さらに、変化の激しい時代に突入すると、新人だけでなく、中堅もベテランも常に学び続けないとやっていけないようになります。そうなると、会社がすべてを抱えきれなくなってくるのは明らかで、社員に対して「自分の将来は自分で責任もって考えてね」と言わざるを得なくなってきます。

そして、企業が“キャリアは自己責任”のような話を持ち出す以上、他所で働いちゃダメと縛りつけておくわけにもいきません。さらに社員の側からしたら、いつ放り出されるかわからない先行き不透明な世の中で、ずっと一つの会社のみの職業経験しかない状態は極めて不安です。仕事に手がつかないような状態になりかねず、結果として両者で足を引っ張り合うことになるのです。

会社員だろうが、自営だろうが、20才だろうが、65才だろうが、必要なことは「お金が入り続ける仕組みを個人が持つこと」です。その方法が、ここしばらくは“会社に勤めること”で実現できる場合が多かったのですが、それが変わってきてしまいました。そしてもう一つ、貯蓄の価値が下がってしまった…。金額の多少にかかわらず、一定期間で貯蓄して、時期が来たらそれを少しずつ切り崩して生活していくという人生モデルが、極端な長寿時代に突入したことによって通用しづらくなってきました。「大きな貯金+収入ゼロ」よりも、「貯金ゼロ+常に少額収入アリ」のほうが安心な世の中になってきたのではないかなぁと思うのですがどうでしょうか? そこで、複数の働く選択肢確保の重要性が増大してきたというわけです。

本書は、上述のような議論にまでは踏み込んでいなかったと思いますが、将来想定しうる未来の働き方のイメージを与えてくれます。急に会社を解雇されたことをキッカケに、新しい働き方に移っていったという著者。そこでやむなく始めたギク・ワーク体験が、いかにこれからの働き方として理にかなっているかについて語られています。どんなふうに仕事をしているのかが具体的に書かれているので、その一部を実践してみようと思えば始められるという実用的な内容に感じられました。

私としては「次の新しい働き方はコレ」といったトレンドの話としてではなく、少し俯瞰視点で働き方をとらえ直すキッカケになればよいなと思いながらの読書でした。そこから、「副業」というより、「複業」が当たり前になる予兆をとらえ、まさにタイトルで掲げられている通り、マインド(考え方)を置き直す必要を、著者は訴えているのだろうと読み取りました。分業が人類の文明を発展させてきたのだとしたら、今あらためて、さらに細かい“再分担フェーズ”に入っているのではないかと、そんな未来を感じさせていただきました。

(おわり)

bizlogueではYouTubeでも情報発信を行なっています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?