デジタル経済を読み解くための8つの重要なトレンド❽
連載ブログ「デジタル経済を読み解くための8つの重要なトレンド」、第8回目(最終回)は組織内部vs組織外部です。
今回は、様々なプロダクトやサービスがデジタル化され、ネットワークを通じて膨大なデジタルデータが世界中を駆け巡ることによって、企業活動を含めて、特定企業の組織内部と組織外部の境界線(特に、システムやデータに関して)が不鮮明になりつつあるというトレンドについて簡単に整理していきたいと思います。
APIエコノミーの台頭
API(アプリケーションインターフェース)とは元来、特定のアプリケーションやシステム同士をつなぐためのインターフェースを指すものでした。
現在においては、APIを通じて組織内部だけにとどまらず、組織外部に存在する様々なサービスやデータがつながることによって生まれる新しい経済圏、APIエコノミーとして関連付けられることによって注目されています。
これは、企業が保有するシステムの機能を、APIを通じて公開したり、逆に公開されているAPIを活用したりすることによって、新たなビジネスやサービスがスピード感をもって生まれる可能性を示唆するものであり、2022年には2,000兆円もの市場規模になると予測されています。
例えばUberは、地図情報、ドライバーと利用者のコミュニケーション、決済に関しては、APIを通じて外部システムの機能を利用しています。一方で、レストランやホテルの予約サイトに対して、APIを公開することによって配車サービスが利用できるようにしています。
また、アマゾンが提供しているAPIを通じて、小規模な小売業者はアマゾンのeコマース機能を活用することができます。同様に、セールスフォースが提供しているAPIを通じて、利用者は数百もの外部アプリケーションとの連携を実現できるようになります。
日本では、2017年5月の銀行法改正で、銀行に対してAPI公開が努力義務として課せられ、フィンテックの普及も後押しし、複数の銀行口座、クレジットカードやポイントカードの利用状況などとの連携が図られています。
企業内外のクラウドをつなぐiPaaS
一方、APIと関連するコンセプトに、iPaaS(Integration Platform as a Service)があります。
これは、社内外を含めて、典型的には複数のクラウド上のシステムを連携させることによって、業務の効率化や自動化を実現するためのプラットフォームをサービスとして提供しようとすることを目的とします。
システム同士を連携させるためには、そのAPIが公開されていることが前提となります。
例えば、顧客管理はセールスフォースのクラウドアプリ、顧客への請求書作成はマネーフォワードを利用している場合、システム連携だけでなく、データ連携をも可能にしてくれるのが、iPaaSです。
現在、マイクロソフト、オラクル、デルなどが、iPaaSプロダクトやサービスを提供しています。
ブロックチェーンの進化
これらのトレンドのさらに先にあるものが、ブロックチェーン(分散台帳)というコンセプトおよびそれを実現するテクノロジーとして考えることもできます。
ブロックチェーンは、ネットワークに接続された複数のコンピューターを活用して取引データを共有することで、そのデータの信頼性と透明性を実現するテクノロジーであり、プラットフォームでもあります。
ブロックは一定期間における取引データのかたまりであり、チェーンはブロック同士がつながっていることを意味します。
前回のブログで、プラットフォーム運営者が世の中に存在する生産者と消費者の間の取引を活性化する一方で、それらの取引データがプラットフォーム運営者に集中してしまうことに懸念を示す人々がいることをお話ししました。
ブロックチェーンは、それに対する1つの解でもあります。
ブロックチェーンの大きなメリットは、取引データのオープン化の他に、データ維持および処理コストの削減、暗号技術によるセキュリティや信頼性の向上などが挙げられます。
ブロックチェーンの代表的なものにはビットコイン(仮想通貨)がありますが、金融取引だけでなく、ヘルスケア、不動産、サプライチェーンマネジメント、教育、公共など、様々な分野における活用が期待されています。
例えば、デジタル先進国であるエストニアでは、納税や投票、結婚や離婚の手続き、土地や法人の登記、パスポートの発行、医療情報に至るまで、行政サービスの99%がブロックチェーン活用によりインターネット上で完結するといわれています。
ブロックチェーンの進化は将来的に、個人や企業だけでなく、国家運営の在り方にまで大きな影響を与えることでしょう。
本連載ブログ「デジタル経済を読み解くための8つの重要なトレンド」では、プロダクトvsサービス、ハードウェアvsソフトウェア、クラウドvsエッジ、デジタルvsフィジカル、バンドリングvsアンバンドリング、パイプラインvsプラットフォーム、生産者vs消費者、組織内部vs組織外部という2つの対立する概念の融合、または対極化について簡単に整理してきました。
現在、多くの企業がDX(デジタル変革)に取り組んでいます。
これら8つのトレンドが、皆さんのDXにどのような影響を与えるのか、それを考えるための参考になれば幸いです。
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