デジタル経済を読み解くための8つの重要なトレンド❶
今年2020年は、コロナ禍が私たちの働き方や生活に大きな影響を与えたとともに、DX(デジタルトランスフォーメーション)が行政や企業における重要なキーワードとなった1年でもありました。
そのような中、今年10月にUdemy(オンライン学習プラットフォーム)に「手を動かして考える!DX戦略とビジネスモデル(グランドデザイン編)」という講座を開設しました。
このブログでは、本講座でご紹介できなかったこと(新しいトレンドや私自身が考えていることなど)を書き綴っていきます。もちろん、講座をご覧になられていない方にも役立てばと思います。
デジタル経済を読み解くための8つの重要なトレンド
まずは、デジタル経済を読み解くための8つの重要なトレンドを私なりに整理していきたいと思います。
これは、2つの異なる(または対立する)コンセプトが、デジタル経済の進展に伴って、融合化されていく、その境界線が不明瞭になっていく、または両極化されていくという視点をベースとしたものです。
8つのトレンドとは、プロダクトvsサービス、ハードウェアvsソフトウェア、クラウドvsエッジ、デジタルvsフィジカル、バンドリングvsアンバンドリング、パイプラインvsプラットフォーム、生産者vs消費者、組織内部vs組織外部に関するものです。
プロダクトvsサービス
1つ目のトレンドは、プロダクト(主に物理的なプロダクト)とサービス(主にデジタルテクノロジーを活用したサービス)の融合化に関するものです。典型的には、XaaS(Xをサービスとして提供する)と呼ばれるコンセプトに集約できるかと思います。
ここでいうXは、特定のプロダクトカテゴリ、または人々が成し遂げようとしていることに大別されるような気がします。
前者(特定のプロダクトカテゴリ)の代表例に、英国の工業メーカーであるロールスロイス社がエアラインに提供しているジェットエンジン・アズ・ア・サービス(正式名称:トータルケア®)が挙げられます。
これは、センサーが装着されたエンジンとクラウドベースの分析プラットフォームをベースに、エンジンの稼働状況、飛行ルート、燃料の消費状況などをリアルタイムで監視する包括的なサービスです。
また、顧客のエアラインは、飛行時間に対して対価を支払う課金体系になっているようです。したがって、エンジンが稼働していない、または故障している時間は、課金されないのでしょう。
日本でも、東京ガスがエネルギー・アズ・ア・サービス(EaaS)という新しいサービスを発表しています。こちらも、ガスや電気を個別に販売するのではなく、各種のソリューションやサービスと一体で顧客に提供するもののようで、顧客はその利用料をサブスクリプション形式で支払うとのことです。
後者(人々が成し遂げようとしていること)の代表例は、モビリティ・アズ・ア・サービス(MaaS)でしょう。その最終的なゴールは「利用者の移動に関する全てをサービスとして提供する」ことです。
MaaSの重要なポイントは、常に利用者の視点(移動=Mobility)であり、提供者の視点(輸送=Transportation)ではないということです。
MaaSは、統合なし(レベル0)、情報の統合(レベル1)、予約/決済の統合(レベル2)、サービス提供の統合(レベル3)、政策の統合(レベル4)という5つのレベルで整理されています。
余談ですが、フードテック革命という世界的なムーブメントが起こっています。その中の重要なコンセプトの1つにキッチンOSがあります。キッチンOSとは、キッチンで使われている様々な家電や器具に搭載されるOSを意味するそうです。
キッチンOSが、食材の購買や選択から始まり、レシピ検索や調理といったアクティビティに必要なモノをシームレスにつなぐようになってくれば、それはクッキング・アズ・ア・サービス(CaaS)と呼べそうな気がします。
デジタルジレットモデル
このようなトレンドの行きつく先には、物理的なプロダクトはサービスを提供するための器であるという考え方です。この収益モデルは、プロダクトを安価または無料で提供し、サービスで実質的な利益を得るというものです。
私は、これをデジタルジレットモデルと呼んでいます。
ジレットモデルとは、基本的なプロダクト(剃刀の本体)を安価または無料で提供し、消耗品(替え刃)で実質的な利益を獲得する収益モデルです。プリンターとトナー、コーヒーマシンとコーヒーカプセルのように、様々な業界で応用されています。
例えば、米国の大手損害保険会社であるリバティミューチュアル保険は、グーグルの子会社となったネスト社が提供している火災報知器ネスト・プロテクトを無料で配布し、このIoTデバイスを自宅に設置している保険加入者の住宅保険料から火災保険料を割り引くサービスを提供しているようです。
日本の損害保険企業も提供しているテレマティクス保険(IoTデバイスのようなテレマティクステクノロジーを利用して、走行距離や運転特性といった運転者ごとの運転情報を収集/分析し、その情報をベースに保険料を算定する自動車保険)も、似た考え方だと思います。
また、アマゾンが提供していたダッシュボタンもまた、同様のコンセプトでしょう。
さて次回は、2つ目のトレンド、ハードウェアvsソフトウェアについて整理していきたいと思っております。
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