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デジタル経済を読み解くための8つの重要なトレンド❼

連載ブログ「デジタル経済を読み解くための8つの重要なトレンド」、第7回目は生産者vs消費者について簡単に整理していきたいと思います。

プラットフォームの構造

前回のブログでは、20世紀を牽引してきた代表的なビジネスモデルであるパイプライン、21世紀における最強のビジネスモデルと呼ばれるプラットフォームについて簡単に整理してきました。

最初に、プラットフォームのシンプルな構造を見てみましょう(書籍「プラットフォーム革命」を参考)。

プラットフォームのシンプルな構造

プラットフォームは、特定のプロダクトの生産者(サービスの提供者、コンテンツの制作者、情報の発信者などを含む)とその消費者を結び付けることを目的としたビジネスモデルです。

もう少しかみ砕いて言えば、プラットフォーム運営者は、デジタルテクノロジーを活用して生産者および消費者の双方が取引/交流の相手を見つけ、消費者が対価を支払う(生産者が対価を獲得する)ことを円滑にします。

ここでいう対価とは、必ずしも金銭だけではありません。例えば、「いいね!」といった評判や名声なども対価に含まれます(フェイスブックやユーチューブなどのソーシャルメディアネットワークもプラットフォームです)。

一方、プラットフォーム運営者は、金銭としての対価の一部を手数料(コミッション)として徴収したり、特定の生産者と消費者の交流に関心のある第三者から広告費をもらったりすることで、収益モデルを確立しています。

生産者と消費者のスイッチング

さて、ここからが本題です。

プラットフォームの台頭によって、面白い現象が起こってきました。それは、生産者と消費者の立場が不明瞭になってきたことです。言い換えれば、生産者が消費者の立場となったり、反対に消費者が生産者の立場になったりするケースが多くなってきたことです。

例えば、オープンOSプラットフォームであるリナックスに関して、特定の生産者(新しいバージョンの作成)は、他の生産者の消費者(他のバージョンの利用者)となる場合があるでしょう。インターネット百科事典にも同じことがいえます。

生産者と消費者の立場が入れ替わることを、プラットフォームの世界ではスイッチングと呼ばれます。プラットフォーム運営者が積極的にこれをマーケティング施策として活用することがあります。例えば、メルカリのようなマーケットプレイスで何かを購買した消費者に対して、プラットフォーム運営者が「あなたも不要になったものを販売してみませんか?」と呼びかける場合です。

新たな生産者の台頭

次に、プラットフォームが普及することによって、新たな生産者(多くは個人)が台頭するようになってきたことです。

例えば、iPhone(iOS)上で稼働するアプリを開発している人は、アップルの社員よりも格段に多いと言われています。また、eBayで商品を販売することによって生計を立てている(あるいは生計の一部を補っている)人は、世界中で百万人以上いると言われています。

ユーチューバーと呼ばれる新しい職業も生まれてきました。ある調査によると、小学生男子の将来就きたい職業ランキングの1位は、ユーチューバーだそうです。

ロングテール

ここでは、生産者と消費者のスイッチング、新たな生産者の台頭という2つの現象によって生まれる新たな経済圏について簡単に整理していきたいと思います。

ロングテールという言葉を耳にした方もいるでしょう。

これは、米国の技術雑誌ワイアードの編集長を務めたクリス・アンダーセン(「ロングテール」「フリー」といった書籍の著者)によって提唱された概念で、ネット販売によって、ニッチな商品でもアイテム数を幅広く取り揃えること、または対象となる顧客数を増やすことで、全体としての売上げを大きく伸ばす可能性を示唆するものです。

この概念をプラットフォームに応用してみましょう。

ロングテール

世界中で使われている言語は、5,000以上存在すると言われています。一方で、大手の外国語専門学校でさえ、取り扱っている言語(メジャー言語:ヘッド)は両手にも満たないでしょう。なぜならば、マイナーな言語(テール)の教師をリソースとして抱えていたら、採算が合わないからです。

例えば、プラットフォームでは、世界のどこかでスワヒリ語を教えることができる人とスワヒリ語を習いたい人を結び付けることができるのです。

日本だけでなく、世界中の事業主の95%以上が中小企業または個人経営者だと言われています。このような事業主は、何らかの経営上の課題をもっていることが多いわけですが、大手のコンサルティング企業を雇うだけのお金をもっていません。

1時間単位のスポットコンサルを提供するビザスクは、特定のビジネス領域における知識と経験をもった個人とこれらの事業主を結び付けるためのプラットフォームを提供しています。

プラットフォームの経済モデル

なぜ、このようなことがプラットフォームによって可能になるのでしょうか?ここでは、プラットフォームによる典型的な経済モデルを考えてみましょう。

プラットフォームの経済モデル

ロングテールの世界において、生産者(例.スワヒリ語を教えたい人)は、消費者(例.スワヒリ語を習いたい人)を見つけるために、多くのコスト(時間や労力を含む)を必要とするかもしれません。これを探索コスト(例.1,000円)と呼ぶことにしましょう。消費者に関しても同じことが言えます。

プラットフォーム運営者は、生産者と消費者の双方が適切な相手先を容易に見つけることを可能にし、その対価として双方から手数料(コミッション)を得ることができます(例.350円×2=700円)。

もちろん、プラットフォーム運営者サイドにおいてコストが発生します(マッチングコスト)。しかしながら、デジタルの世界においては、このコストを極限まで抑えることができます(例.50円)。

経済学の世界において、これを限界費用ゼロ(1つ追加で価値あるものを生成するためのコストが0円に近付くこと)と呼んでいます。プラットフォームの場合においては、生産者と消費者の取引を成立させるためのコストです。

結果として、プラットフォーム運営者、生産者、消費者のいずれもが、1つの取引で650円ずつ得をすることになります。いわば、デジタル世界における「三方良し」の世界観です。

もちろん、プラットフォームが良い面だけをもっているわけではありません。

例えば、ブロックチェーン(分散型ネットワークを構成する複数のコンピューターに、暗号技術を組み合わせ、取引情報などのデータを同期して記録する手法)の普及を推進している人の中には、特定の生産者や消費者に関する情報がプラットフォーム運営者だけに集約されてしまうことに懸念を示すことがあります。

それがビジネスだと言われれば、それまでの話ですが、この点については別の機会に考えてみたいと思います。


次回は、デジタル経済を読み解くための8つ目(最後)のトレンド、組織内部vs組織外部(組織内部と組織外部の境界線が不明瞭になっていく現象)について触れていきたいと思います。


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