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管理ゼロで成果はあがる〜「見直す・なくす・やめる」で組織を変えよう

倉貫 義人 / 著

成果を上げるには、評価も現状共有の会議もいらない。働きがいのある会社に選ばれた企業が実践する「管理不要」のアイデア

社員のほとんどがエンジニアであるソニックガーデンは、ソフトウェアの受託開発を行っている企業です。個人が楽しく働きながら、組織として高い成果をあげるにはどうすればいいのか?そんな組織を目指した結果、現在のソニックガーデンはオフィスがなく全社員がリモートワークをしています。

今回は、倉貫義人・著『管理ゼロで成果はあがる ~「見直す・なくす・やめる」で組織を変えよう』から、社員が自律して楽しく働きながら高い成果をあげるためのノウハウを解説します。

高い成果を上げるために必要な3つのプロセス

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高い成果を上げるのに「管理」は必要ない

高い成果を上げるのに、管理は必ずしも必要ではありません。むしろ創造的な仕事には、「管理」がマイナスの影響を与えることもあります。

管理をすればするほど、独創性は失われ、社員のやる気が下がり、生産性は落ちていきます。逆に管理を減らすほど、チームの生産性が高まる可能性が高いのです。

信頼関係があれば管理をしなくても、人は責任感と主体性を持って働きます。そして管理されるより楽しく働くようになり、結果として生産性がアップするのです。

社員が楽しく働きながら高い成果を上げるための3つのステップ

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いきなりすべての管理をなくすのは難しいので、次のような3つのステップで進めていくのがいいでしょう。

第1ステップ:効率的に働く
第2ステップ:自律的に働く
第3ステップ:独創的に働く

まず第1ステップの「効率的に働く」では、生産性を高めることに集中します。仕事の無駄を見直したり、業務の改善などを行い、生産性を高め成果を出す段階です。

第2ステップの「自律的に働く」で、個人が管理されずに働くことを目指します。それぞれが自律して働けるようになれば管理が不要になり、組織としての負担も減ります。

第3ステップである「独創的に働く」では、自分たちだけの働き方を追求します。独創的なアイデアで、独自の働きかたを実現していくことは自社の強みにもなります。

ステップ1「効率的に働く」ためには

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ふりかえり(週1のKPT)で生産性を高め改善意識を定着させる

新しい働き方や斬新なアイデアを取り入れても、簡単には生産性は上がりません。まずは非効率な業務の改善などに取り組み、高い生産性を実現することです。抜本的な問題解決には、「ふりかえり」が有効です。

ふりかえりは、週に1度チームでKPTを使って行うのがおすすめです。KPTとはふりかえりによく使われているフレームワークで、次の3つの要素の頭文字をとったものです。

Keep=良かったこと
Probrem=悪かったこと
Try=次に試すこと

まず良かったことと悪かったことを洗い出して、最後に今後試すことを議論します。ふりかえりで大切なのは、継続して何度も行うことです。そのうちふりかえりが当たり前になって、日々の仕事の中で自然とできるようになります。

生産性の高いチームには、個人がチームの問題を自分ごととして捉え、率先して解決しようとする姿勢があります。仕事の改善について考え続けることでチームとしての結束が高まり、改善意識を定着させることにもつながります。

報告・報知の会議をなくす、会議の時間を短縮する

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会議が多すぎると実際に仕事をする時間が減ってしまい、生産性が落ちます。特にただ報告や報知をするだけの会議なら、全員が集まる必要などありません。データや情報を共有すれば十分です。

なくすことができない会議は、効率化して短縮化できないか考えてみてください。書類作成を簡素にしたり、議題を事前に共有しておけば議論の時間も短縮できます。アジェンダが書かれたメモを事前共有し、そのまま議事録にするのもよいでしょう。

「報連相」より「雑相(ザッソウ)」

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チームで連携して働き生産性を高めるには、話しかけやすい雰囲気づくりが重要です。話しかけるハードルを下げるのに有効なのが、「雑談」です。普段から雑談が多い職場なら、仕事での疑問や困ったことがあったときにも、相談がしやすくなります。

雑談から仕事の相談に発展することもあります。気軽な雑談の延長で相談ができると、わざわざ「報連相」の時間をとる必要がなくなります。チームでのランチ会や朝会など、定期的に雑談をする機会を設けるのもよいでしょう。

ステップ2「自律的に働く」ためには


目標設定と評価をなくす

これまでは上司の評価や目標設定でやる気を維持することが可能だったかもしれませんが、働き方や仕事が変化している今の現場では、評価と目標設定でやる気を維持するのは難しくなっています。

評価の難しい仕事がある場合は特に、「評価をなくしてしまう」ことが効果的です。評価をなくすことでマネジメントの負担が軽減され、個人が評価を気にする必要もなくなります。

すると、本来の業務に集中できるようになるうえ、自発的に仕事に取り組めるようになります。モチベーションも維持しやすくなるのです。

「数値目標」よりも「ミッション・ビジョン」

売上目標やノルマなど数値的な目標設定は、本当に必要でしょうか。数字だけを追いかけると、仕事の本質を見失ってしまうことがあります。数値目標を達成したことに満足してしまい、それ以上を目指さなくなる可能性も否定できません。

数値的な目標よりも重要なのは、ミッション・ビジョンです。そして、会社のミッション・ビジョンと同じくらい、個人のモチベーションも大切です。会社のミッション・ビジョンと個人のモチベーションが一致すると、生産性が高まり個人も会社も成長できます。

会社のミッション・ビジョンと個人のモチベーションのすり合わせを行うには、ビジョン合宿が効果的です。チームとしてのビジョンを経営者が語り、個人のビジョンをそれぞれが語り合います。そして最後には個人がやりたいことや実現したいことを宣言するのです。こうした機会をもうけると、個人も組織もビジョンがアップデートされ、各々がそれに向かって仕事に取り組むことができます。

教育よりも育つ環境を用意する


社員に自律して働ける人材になってほしいなら、育てようとするよりも育つ環境を用意する方が効果的です。仕事をしながら自主的に育つために必要な要素は次の3つです。

やってみせる
やらせてみる
フィードバックする

まずは先輩がやってみせてから、本人に実際にやらせてみる。実践を通して人は多くを学ぶものです。そして大切なのが、フィードバックです。先輩がフィードバックをして、本人が自分の頭で考えることで成長していきます。

ステップ3「独創的に働く」ためには

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「会社らしく」なくていい

大事なのは表面的な形式や昔からのしきたりではなく、企業としてのゴールやお客様が本当に求めていることは何かという「本質」です。本質を見極めるには、自分の頭でしっかりと考える必要があります。

「形骸化していることはないか?」「常識だと思い込んでいることはないか?」。本質に立ち戻る視点を持つことを忘れないことが大切です。

トップダウン型の新規事業をやめる

ソニックガーデンには、部活感覚で新規事業に取り組むための仕組みがあります。新規事業は難しく、挑戦に躊躇する人も少なくないので、そのハードルを下げるために考えられた工夫です。

たとえば「新規事業」と聞くとハードルが高いため、もっと自由に好きなことができるように「部活」という名称にするなどです。新規事業ではないので、必ずしも売上や成果をあげる必要はありません。期限もないので、長く続けることが可能です。

営業をしない

営業が苦手なら、無理にセールスをする必要はありません。従来のセールスありきの手法から脱却してみるのもひとつの手です。例えば、セールスをせずに知ってもらう方法として、「ブログ」を始める方法があります。

将来、お客様となりうるユーザーに役立つ情報を発信して、営業をせずに自社のことを知ってもらうのです。専門的な内容のブログを書くのは時間も労力もかかりますが、根気よく続けてみてください。

「まずは、自分たちの世界観を発信し続けてお客様に好きになってもらう。タイミングがあれば相談をしてもらい、フィットすれば案件が成立する」流れを目指して続ければ、結果につながるでしょう。

「管理」よりも「自律して効率的に働く」ことで生産性を高める

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「個人が楽しく働きながら高い成果を生み出すにはどうすればいいのか?」そう考え続け、様々な工夫を続けてきた結果、ソニックガーデンは2018年の「働きがいのある会社ランキング」では5位になるほどの企業になりました。

今回紹介したものは独創的な施策も多いため、すべてを実践するのは難しいかもしれません。まずは小さなことでもいいので、まずは何か一つだけでも変えることから始めてみましょう。

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<記事監修>

倉貫義人(くらぬき よしひと)
1974年京都生まれ。1999年立命館大学大学院を卒業し、TIS(旧 東洋情報システム)に入社。2003年に同社の基盤技術センターの立ち上げに参画。2005年に社内SNS「SKIP」の開発と社内展開、その後オープンソース化を行う。2009年にSKIP事業を専門で行う社内ベンチャー「SonicGarden」を立ち上げる。2011年にTIS株式会社からのMBOを行い、株式会社ソニックガーデンの創業を行う。

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