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仕事と介護の両立支援でもらえる助成金「両立支援等助成金」について解説

 従業員を雇用している事業主がもらえる助成金には様々な種類がありますが、今回は家族の介護が必要な従業員がお休みした場合などにもらえる両立支援等助成金と東京都の介護休業取得応援奨励金について詳しく解説します。

1.両立支援等助成金とは


 両立支援等助成金とは、厚生労働省による雇用関係助成金のひとつで、職業生活と家庭生活が両立できる“職場環境づくり”に取り組む事業主を支援する助成金です。
 両立支援等助成金は、主に男性の育児休業取得を促進する「出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)」、仕事と介護の両立支援に取組む「介護離職防止支援コース」、仕事と育児の両立支援に取り組む「育児休業等支援コース」の3コースがあります。
 今回の記事では、従業員の円滑な介護休業の取得・職場復帰に取り組み、介護休業を取得した従業員が生じた、または介護のための柔軟な就労形態の制度(介護両立支援制度)の利用者が生じた中小企業事業主に支給される介護離職防止支援コースについて詳しく解説します。

2.介護休業とは


 労働者が要介護状態(負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象家族を介護するための休業のことをいい、対象となる労働者は、対象家族を介護する男女の労働者(日々雇用される者を除く)です。
 ※取得予定日から起算して、93日を経過する日から6か月を経過する日までに契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと。

 対象となる家族は、配偶者 (事実婚を含む) 、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫で、いずれも同居要件、扶養要件はありません。介護休業の利用期間は対象家族1人につき3回まで、通算93日までとなります。
 
 「常時介護を必要とする状態」とは、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態のことをいい、具体的には下記のいずれかに該当する場合です。
(1)介護保険制度の要介護状態区分において要介護2以上であること。
(2)状態①~⑫のうち、2が2つ以上又は3が1つ以上該当し、かつ、その状態が継続すると認められること。

 介護休業と混同しやすい介護休暇との違いは下記のとおりです。

3.両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)の支給額


 介護離職防止支援コースは、取り組み内容によって受給額が変わります。

A)介護休業(取得時・復帰時)
 対象従業員が介護休業を合計5日以上取得し、復帰した場合
・業務代替支援加算:介護休業取得者の代替要員の新規雇用(派遣を含む)または代替する従業員への手当支給等を行い、かつ、休業取得者を原職等に復帰させた場合

B)介護両立支援制度
 介護のための柔軟な就労形態の制度(※)を導入し、合計20日以上利用した場合
 ※介護のための在宅勤務、法を上回る介護休暇、介護フレックスタイム制、介護サービス費用補助等

個別周知環境整備加算:介護を申し出た従業員に対する個別周知及び仕事と介護を両立しやすい雇用環境整備を行った場合

4.対象となる事業主


 助成金の申請対象となる事業主については細かく定められていますので、ここでは主なものを記載します。

・雇用保険適用事業所の事業主であること
・中小企業事業主であること
・育児介護休業法に定める基準を満たした休業等の規程があり、介護休業の取得及び職場復帰並びに介護休業関係制度の利用を支援する方針をあらかじめ全従業員へ周知していること
・要介護状態にある対象家族の介護に直面する従業員と面談を行った上で、介護支援プランを策定していること

5.両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)の支給申請までの流れ


① 育児・介護休業規程等の作成、従業員への周知
 両立支援等助成金では、就業規則等に育児・介護休業法への委任規定を設けているだけでは、制度を規定しているとは判断されないため、育児・介護休業規程等を定める必要があります。

② 家族の介護に直面した従業員との面談、介護支援プランの策定
 対象従業員と上司又は人事担当者が面談したうえで、介護支援プランを作成し、その結果を記録します。介護支援プランには対象労働者の業務の整理・引継ぎに関する事項や業務体制の検討について盛り込む必要があります。

介護支援プランに基づき、業務の整理・引継ぎ又は業務体制の検討後、
介護休業取得時
:合計5日以上の介護休業を取得する。
職場復帰時
:合計5日以上の介護休業取得後に原職復帰し、フォロー面談を行う。
両立支援制度利用:介護両立支援制度を利用する。

④支給申請
 それぞれの要件を満たした後、2カ月以内に支給申請書類を都道府県労働局へ提出

⑤審査・支給決定 
 申請から支給決定までは都道府県や申請時期にもよりますが概ね2~4カ月程度かかり、審査が終了すると支給決定通知書が交付され、助成金が振り込まれます。

6.東京都 介護休業取得応援奨励金


 東京都では従業員に介護休業を取得させるとともに、職場環境を整備した事業主に対して最大50万円の奨励金を交付することで、介護休業の取得を促進し、就業継続を後押しする制度があります。
 奨励金は、介護休業と有給の介護休暇の取得日数を併せた日数に応じて以下の通りとなります。(申請は1事業者につき、一事業年度に1回まで)
  合計15日の介護休業    25万円
  合計31日以上の介護休業  50万円
参考:


7.具体事例


●対象従業員:要介護4の実父の入院時の付添い及び退院後の介護のため、介護休業等を取得
 ① 介護休業1回目:4/11~4/22(12日間)
 ② 介護休業2回目:9/12~9/30(19日間)
 ③ ①②期間中に有給の介護休暇を2日間取得

【助成金】
①国:休業取得時             30万円
     個別周知・環境整備加算        15万円
 国:職場復帰時             30万円
   業務代替支援加算(手当支給)      5万円
②都:介護休業取得応援奨励金(31日以上) 50万円
③国:介護両立支援制度          30万円
               合計   160万円  

8.まとめ


 両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)は、令和5年度から金額の改正と新たな加算が加わり、国も力を入れていることがわかります。
 会社として、従業員の介護休業取得促進と両立支援に取組むことは、介護離職防止にもつながることから、積極的に取組んでいく必要がありますが、何から始めたらいいかわからない、従業員にどのように案内したらいいかわからないなどお困りでしたら、ぜひ専門家の力を借りてみてはいかがでしょうか。
 育児・介護休業規程の作成・見直し、介護支援プラン策定の支援、申請書類作成代行など、支給申請実績も豊富な当事務所へ是非お気軽にお問い合わせください。
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