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振り返りのフレームワークを科学する。よりよい振り返りのために

前回6+1のフレームワークを整理していて、もう一段階抽象的な構造化が可能であることに気づいた。

整理することで自分の振り返りの精度も上がりそうなので、ここでまとめていく。

なお、全てを網羅する振り返りが必ずしも良いわけではない
自分の中に振り返りの幅や各フレームワークの特徴を持っておき、目的に応じて使い分けることがポイントだろう。

前回記事はこちらから。

大きく分けると振り返りは5ステップ

振り返りの5ステップ

振り返りのフレームワークを見ていて全てのステップが以下の5つに区分できることんに気づいた。

  1. 目標・計画策定

  2. 実行・結果

  3. 振り返り

  4. 抽象化

  5. ネクストステップ

一方で、前回整理したフレームワークは最大4ステップだった。
短い方が取り組みやすい側面もあるだろうが、この5ステップに沿うことでより有効な内省と前進ができるはずだ。

それぞれのフレームワークに足りないもの

3ステップ、4ステップのフレームワークに足りないものは何か。

まず「目標・計画策定」だ。このパートは

  • 実行の精度を高めるための行動

  • 振り返りをする際に「何をもって良しとするか」の基準

の役割を果たす重要パートだ。
無くても学びを得ることはできるが、求める結果に向かうためにはできるだけ実行と振り返りの精度を高める必要がある。

一方で、このステップを具備しているのはPDCAだけだ。

振り返りを繰り返していく中で、前の「ネクストステップ」部分が次の「計画」にあたることがあるからとも考えられるが、明示した方が良いステップだろう。

KPTやYWTの3ステップフレームワークには、4つ目の「抽象化」が不在だ。

振り返りの気軽さは作れるが、学びが単発になりがちな懸念がある。
わかったことを更に抽象化して、他にも転用可能な形に昇華出来れば、1つの行動からより多くを学べる。

振り返りサイクル1回毎の成長角度を上げていくには、学びを深めるこのステップが重要だ。

振り返りの全体像と各ステップとの対応

6つの振り返りフレームワークと各ステップの対応

各フレームとステップの対応は上図の通り。
4行日記、経験学習モデル、ORIDはどれも同じようなスコープになる。

KPTは結果・振り返りを同時に行っていることや、PDCAはYWT+Pの形に近い。

よい振り返りのための5ステップの各ポイント


1. 「目標設定・計画」は振り返り起点として具体化する

振り返りにおいては当初の計画は振り返りの起点となる。
実際に達成できたのか?良かったのか?改善が必要なのか?基準があるからこそ判断できる。

好ましい目標・計画は評価しやすさが高い

評価可能性を高める手法はいくつかあるが、よく知られていて使いやすい内容としてSMARTを上げる。
こちらを元に目標設定していれば、振り返りが容易だろう。

SMARTな目標設定のフレームワーク(内容は諸説あるが具体的ならOK)

2. 「実行・結果」は客観的な事実を記述する

YWTのやったこと、PDCAのD、その他事実や経験として表現されるのがこの部分。
KPTの場合は、結果を判断しながら記載していくのでステップ2とステップ3を同時に行っていく。

ステップ2のポイントは客観的な事実を記述し、価値判断を挟まないことだ。

まずは事実の描写に務め、別ステップで振り返ることでより深く振り返りが可能となる。

逆に言うとKPTは簡易で便利だが、このステップが不足しがちな点が課題だ。

  • 良い、改善以外に、学びに繋がる事実や結果の幅出しができない

  • 結果と振り返りが1対1対応しやすく、1つの結果から複数の学びを得づらい

こういった状態を避けられるよう、記述の網羅性や、振り返りの幅が出しやすいよう、事実の描写に留めるのがポイントだ。

3. 「振り返り」は、結果と反応の両面で見る

振り返りの肝なので、各フレームワークに存在しているステップだ。

  • KPTのKPでは、良かった点、改善点

  • YWTではわかったこと

  • PDCAでは、計画との差分

  • 4行日記、経験学習モデル、ORIDなどでは気づきや反応、感じたこと

抽象化のステップを持っているフレームワークでは、ここは気づきや反応など、主観的で出しやすい内容を主にしている。

  • 客観的な結果の振り返り(計画差分、良かったこと、改善点)

  • 主観的な発見(気づき、反応、感じたこと)

の両面を掘り下げられると学びの幅が広がる。

4. 「抽象化」は問いを使って進化させる

抽象化のステップは、振り返りにレバレッジを効かせる上で最も大切な部分だ。
ここまでの気づきをそのまま終わらせるのか、これから先起こる様々な場面に活かせるのかは抽象化ステップにかかっている。

このステップには少し時間を掛けても良いだろう。
学びを「抽象化しよう」と考えてもすぐに良い考えを出すことは難しい。

自分に問いかけながら、振り返りの幅を広げていき、その中から法則性を見出していくことが大切だ。

  • なぜそれが起こったのか?そう感じたのか?

  • 過去に同じようなことはなかったか?それはどのような時か?

    • その時と今回の共通点は?差分は?

  • 同じような話を見たり聞いたりしたことはあるか?

  • 次に同じような場面があるとするとどのような時か?そこにはどうすれば活かせるか?

上は一例だが、振り返りを深める中で、他にも適用可能な法則が見えてくる。
それを自分の理論として溜め込んでいくことが成長につながる。

5. 「ネクストステップ」には仮説検証を織り込む

ここまでの学びを次に繋げることがネクストステップだ。

大事なのはここまでに出てきた内容はまだ「仮説」であるということ。
それを実行することで、

  • うまく行った場合は自分の中に定着させる

  • うまく行かなかった場合は原因を探り、次の仮説構築に活かす

  • 上記を繰り返し、更に有効な仮説構築につなげる

ということを繰り返していくことが振り返りによる成長につながる。

抽象化した学びをどう使えば検証できるのか、学びをつなげて大きくしていくために、仮説検証を意識する。

前提として、アクション可能なためには具体的である必要があるので、行動可能なレベルに具体的に落とし込むことは最低限の要件となる。

具体的な仮説検証プランを描いて次の振り返りサイクルに入れば、振り返りを大きな成長に繋げられる。

目的に応じた使い分けがポイント

上記5つのステップはそれぞれ揃っている方が振り返りの精度が上がっていくだろう。

一方で目的に応じた取捨選択や、各ステップの中での切り口を使い分けることも大切だ。

  • 前回のネクストステップを目標化することで、実質的に4ステップ化する

  • チームで短く進めたいなど、できるだけステップを減らしたければKPTのように、結果と振り返りを同時に行い、抽象化は省く

  • 振り返りを深めたい際には、普段のKPTやYWTの中に「抽象化」ステップを明示的に追加する

など、加減しながら良い形を探っていくと良い。

振り返りを繰り返すことでフレームワークへの習熟も生じる。
色々試してしっくり来るものが見つかったらそれを繰り返し利用するのが良いだろう。

関連情報

各フレームワークの詳細や特徴は以下の記事から。


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