見出し画像

『近代能楽集』の『班女』と置いてけぼりの私

日本帰省中、三島由紀夫の『近代能楽集』を買った。
『邯鄲』、『綾の鼓』、『卒塔婆小町』、『葵上』、『班女』、『道成寺』、『熊野』、『弱法師』の8つがおさめられている。
 
前から読んでみたいなあと思いながら、この中に出てくる曲の謡か仕舞をせめてひとつでも習ってからにしようと待っていた。
 

 
その後、あと数カ月でお稽古を始めて3年になろうかというこの夏、この本をようやく手にした。『班女』と『熊野』の謡と仕舞を習ったからだ。
「習った」といっても、私の場合それは「謡は節通りになんとか最初から最後まで通せた。仕舞は順番通りに最後まで動けた」の意でしかない。
 
謡のお稽古では、1曲習った後に最初から最後まで通して謡うテストがある。毎回、この日が来るたびにどきどきしている。『班女』では何度やっても吉田少将が元気な小僧のようになってしまった。仕舞では、例によって花子さんの勢いがよすぎる。私の中の花子さんに吉田少将を想う気持ちはあれども、謡にも舞にもそれは全くにじみでてこない。大変くやしいので、あと何年か後に是非ともリベンジを期待したい。今から先生に予告しておこう。
 


『近代能楽集』の『班女』に出てくるのは、花子、実子、吉雄の三人。
花子は能の『班女』と同じ花子さん、吉雄はおそらく吉田少将、実子は能の『班女』には出てこない。
 
実子のアトリエで展開されるその物語は、想像と妄想をかきたてられまくりの展開で、最初から最後まで私の心をつかんだまま、同時に私をびっくりするぐらい放ったらかしにしたまま幕が下りた。最後の花子さんと実子のやりとりといったらない。


珍しく興奮して書いてしまった。
 
待つ女と待たない女。
 
日をおいて再読するも、三島マジックにかかったままの私がいる。
 
 
『近代能楽集』、能楽師の方はどんな感想をお持ちだろうか。
機会があったら伺ってみたいものだなあ。
 


この記事が参加している募集

#買ってよかったもの

58,847件

#古典がすき

4,029件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?