役所広司さん諫早市市民栄誉賞受賞&役所広司さん×麻生祐未さん長崎舞台挨拶イベントレポート
この度、役所広司さんが、出身の長崎県諫早市の市民栄誉賞を受賞。12 月 2 日(土)諫早市にて、授与式が行われました。 また、同日長崎市内にて特別試写会も開催され、主演の役所広司さん、そして本作に出演し、同じく長崎県出身の麻生祐未さん が上映後に登壇し、公開に先駆けて本作を鑑賞した観客に向けて思いを語りました。
50 年後、100 年後も観てもらえるような映画にまた参加したい
12 月 2 日(土)、諫早文化会館にて行われた市民栄誉賞授与式には、約 4000 人以上もの応募が殺到、その中から 800 名ほどの当選者が会場にて参加し、役所広司が登壇した際には割れんばかりの拍手と、「おかえりなさい」という歓声が客席から次々と上がり、和やかに進行した。
この度の受賞を受け、役所は「諫早のみなさん、ご無沙汰してます」という挨拶から、地元諫早での受賞への特別な思いを語った。
「名誉あるこの賞をいただけるとは思っていませんでした。俳優になるときに、師匠の仲代達矢さんが芸名をつけてくれる、という話になりまして、そのなかに『諫早広司』というものがありました。そんな名前をつけたらもう一生諫早には帰れないから、これだけは勘弁してくださいと いうことで、役所広司になりました。
僕が子供のころは映画館が近所に4つぐらいあったんじゃないかと思うのですが、うちは飲料水をいろいろな売店や映画館に配達する仕事をしていましたので、配達にときどき行ってはちらっと映画館の映画の上映を覗いてみたり、映画館のスチル写真を見るのもとても楽しみでしたね。
そういった中で、子供のころ映画というのはとても身近にあったように思います。思い出深いのは、兄が黒澤明監督『生きる』を イベントレポート観てきたばかりで、僕に頭から最後までストーリーを話してくれたんです。
映画の中に出てくる「ゴンドラの唄」までうたって。東京に行ったとき に小さな劇場でその映画を観ると、最初から最後まで兄が語ってくれたストーリー通りの物語があって、映画が終わったときに”あの時、兄貴は本当に真剣に映画を観ていたんだな…“とつくづく感心しました。
これからの俳優人生で、50 年後、100 年後も観てもらえるような映画に参加したい、それがぼくの夢です。こんなにすばらしい賞をありがとうございました。また帰ってこれるように頑張っていきたいと思います。どうもありがとうございました。」
役所広司さん×麻生祐未さん登壇!
清掃員としての経験と 20 年以上振りの共演を振り返る 諫早市市民栄誉賞授与式と同日、TOHO シネマズ 長崎にて NBC 長崎放送が主催する特別試写会を開催。
『PERFECT DAYS』から、長崎県諫早市出身の役所広司と、劇中で役所(平山)の妹・ケイコを演じた長崎市出身の麻生祐未、そして会場に駆けつけていた企画・プロデュースの柳井康治が上映後に登壇した。
冒頭、役所が「諫早の役所広司です。長崎というと、諫早の人間からすると大都会だ…というコンプレックスもありますが、よろしくお願いします」と”地元”トークを展開すると、麻生からは「素晴らしい映画でここ長崎に帰ってくることができて、しかも役所さんと一緒に並ぶこと ができて、光栄です。お昼には美味しいちゃんぽんをいただいて、幸せでした」と久しぶりの帰郷を楽しんでいることが伺える一言も。
実際にトイレの清掃員をしている方をスカウトしてきて映画を作ったんじゃないか、という風に世界中の方に見てもらえたら
作品について話が及ぶと、今回の出演の経緯や役どころについて役所は「この映画の製作者の柳 井康治さんが立ち上げられた The Tokyo Toilet プロジェクトのトイレを舞台とした、清掃員の物語 を映画にするという企画でした。
この The Tokyo Toilet というのがとてもすばらしく、東京オリンピック に向けて世界中の方をおもてなししようというコンセプトだったので、この映画を通して僕もなにか力になれればという思いで参加したいと思いました。」と語り、役作りについて聞かれると、「ヴィム・ヴェンダース 監督が、実際にトイレの清掃員をしている方をスカウトしてきて映画を作ったんじゃないか、という風に世界中の方に見てもらえたら一番嬉しいなと思っていました。素人の俳優さんのように見えたらいいな、と。それを実現するためにトイレの清掃の練習をしました。2 日ほどベテランの清掃員の方に指導してもらいました。すごくこだわりのある清掃の仕方をされていて、1 日 3 回の清掃のなかで、掃除する場所によって洗剤も道具も変えていて、非常に丁寧な仕事をされています。映画に出てくるよりももっとすごいんです。いまだに家でもやっている技もあります」 とこの役ならではの学びも披露した。
夢のような時間を過ごすことが出来ました
これまで数々の名作を世に送り出している名匠・ヴィム・ヴェンダース監督の現場について麻生は「監督はいつもニコニコしていて、“僕はこの瞬間が楽しくてたまらない”というお顔をされていらっしゃる。
ひとり ひとりにも、何かやりにくいことはないか、など気を使って聞いてくださったり、すごく細かいところまでほめてくださったり。
スタッフみんな笑顔にさせてしまうようなパワーあふれる監督だったので、私も緊張せずに夢のような時間を過ごすことが出来ました」と現場を振り返ると、役所は「監督は日本が好きで、日本人が 好きなんですよね。撮影が終わるころには自分は前世が日本人だったのかもしれない、と言っていたくら い。だからこそこういう(映画に出てくるような)東京を描けたんだと思います。そして何より映画作りの楽しさをスタッフキャストも改めて教わったような現場でした」
20 年以上振りの再会
さらに演出方法について「ヴェンダース監督はいつもリハーサルをきっちりやって本番の撮影をするらしいのですが、今回はできるだけテストをしない で、かなりドキュメンタリーのような撮り方を心がけていらっしゃった。
監督自身もチャレンジされていたようです」と続け、監督自身の試みからも、映画作りを楽しんでいることが伝わってくる。
役所と麻生は、今作が久しぶりの共演となった。「麻生さん相変わらずきれいだな、妹は美人さんだな、と思いながら撮影していました」 と役所が感想を語ると麻生からも、「今回事前にお会いするタイミングがなかったので、撮影日には、“やっと会えた、嬉しいな”という感情でした」と 20 年以上振りの再会で、兄妹を演じるという関係をしみじみと語った。
企画・プロデュース 柳井康治さん登壇!!
トークも佳境のなか、役所から今作の企画・プロデュースを手掛け、会場にも駆けつけていた 柳井康治を呼び込むシーンが。きっかけとなった The Tokyo Toilet についての思いを語った。
「The Tokyo Toilet というプロジェクトを始めたのは、オリンピック、パラリンピックのときに海外から来た人が”日本っていいな”とか”気が利いているな”と思ってくださることを考えて、日本人でもそうでなくでも、男性も女性も、子供もお年寄りも若い人も関係なくみんなにかかわることが、トイレだったら表現できそうだなと思って始めました。
素晴らしい方々にご参加いただいて、映画の中にも出てくるようなとても素敵なトイレができました。
(この映画を観て)清掃員の方への”ありがたいな”という気持ちを持っていただくだけでもそのあとの使い方がちょっと変わるんじゃないかということを思いながらみんなでつくった作品がみなさんの心に届いているといいなと思います」
最後に麻生から、「私はこの映画は”つながり”に関する映画だな”と思いました。ひとりでいても、大勢でいてもつながっているところはつながっているので、選べる自由が私たちにはあるのだなと感動しました。この映画の平山さんのように、”私はこれで十分、これ以上のものはいらない”というところに到達するのはとても難しいとは思うんですが、日々考えて、幸せになりたいなと思いました。」
役所からは「映画というのは 1 回だけでは全部を観きれないものだと思っていて、僕はこの映画を3回ぐらい見ていますけれども、本当に毎回新しい発見があります。」と締めくくり、温かい拍手とともにイベントは終了した。
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