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ものぐさな人間が作る深夜のヨーグルトゼリー

 甘いものが食べたくなる。
 ネットで見かけたけれど、何か一つのものを無性に摂取したいと思う時は、大抵足りない栄養素があるのだそうだ。
 甘いものが食べたい時はタンパク質が足りていないのだとか。

 私はチョコレートとコーヒーをこよなく愛しているので、この二つはどんな時でも食べたいし、飲みたい。
 調べてみたら、チョコレートが食べたい時はマグネシウム不足、コーヒーが飲みたい時は鉄分不足らしい。
 ということは、私の場合、年中マグネシウムと鉄分が不足しているということになる。
 などと言ってみるが、結局のところ嗜好の問題で、チョコレートとコーヒーに関しては、何かの栄養素が不足してようが過度であろうが関係ないのだろうと思っている。

 甘いもの。
 砂糖を舐めれば落ち着くというわけではない限り、とりあえずは家に山程常備しているチョコレートをかじって誤魔化してみる。
 チョコレートは甘いものじゃないのか、とツッコまれそうだが、チョコレートはチョコレートだ。それ以外の何ものでもない。
 甘いもの、すなわち洋菓子や和菓子。
 すぐに手を伸ばせる場所にそういうものがない場合、買いに行くか作るかの選択を迫られる。
 若い頃はアクティブだった私だが、最近はめっきり「面倒くさい」が勝ってしまう。
 歩いて5分以内にコンビニが2店もあるのに、そこに行くことすら面倒くさい。

 甘いものを作ろう。
 真夜中、着替えて靴を履いて外へ出る、という行為が面倒すぎてコンビニを諦め、仕方なくキッチンへ向かう。
 一応、趣味は料理とお菓子作りです、などとのたまっているだけに、製菓の材料や道具は一通り揃っている。
 あとはやる気が必要なだけ。

 簡単に作れるものの筆頭は冷菓。
 液体に、ふやかして溶かしたゼラチンを混ぜて冷やし固めるだけのゼリーなんて、おそらく10分もかからずに出来上がる。もちろん冷やし固める時間を除けば、だが。

 焼き菓子だって、パウンドケーキなら計量の手間くらいで、あとはばしばしと材料を放り込んで混ぜて焼くだけだ。
 しかし、オーブンの予熱を待つ時間が面倒くさい。
 そういう時は予熱している間に生地を作るのよ、なんて言われそうだが、私は恐ろしく手が早いのですぐに終わってしまって、結局ぼけーっと予熱を待つ羽目になってしまう。
 その間に使った道具を片付けるのよ、とさらにツッコまれそうだが、もちろんそれも込みである。
 己の手早さが憎い。

 そんなわけでゼリーを作ろう。
 甘いものならなんでもいい。
 夏の間はペットボトルのアイスコーヒー(無糖)が箱で常備されているから、その中から一本抜きとって、小さな耐熱容器にゼラチンと砂糖を入れ、そのコーヒーを注いでレンジで溶かし、ボトルに戻してやればいい。
 そのまま振り混ぜて冷蔵庫にいれておけばあっという間にコーヒーゼリーの完成。
 しかも洗い物も少なく、ずぼらな私にぴったりな方法だ。
 しかしこの場合、ペットボトルの内側にゼリーが残ってしまうのでなんとなくもったいない。
 だから大きな容器にどぼぼと注いで固める。これなら無駄がない。

 けれど、こういう時に限って、ボトルコーヒーがなかったりする。
 20本もストックがあったのに、なぜだ。

 しょうがないから冷蔵庫を開けて、何か別のものを考える。
 牛乳があるから、ミルクゼリーか牛乳寒天もいいかもしれない。
 色々悩んで、結局、ヨーグルトゼリーを作ることにした。
 計量が面倒くさすぎて、大きな容器に牛乳とヨーグルトを1:1の割合で入れてまんべんなく混ぜ、濃縮還元のレモン汁を好きなだけ加える。
 ヨーグルトがひとパック400gだから、ヨーグルトの入っていた器に牛乳を同じくらいだけ入れれば1:1だ。適当だ。
 ゼラチンだけは一応量る。水分が200~400mlに対して、大体5gくらいが目安。量るのが面倒なら大さじ一杯が5gくらいになるはず。固くしたければ増やすし、ゆるいゼリーがよければ減らす。量る、と言っておきながら超適当。
 マグカップに入れたゼラチンの上から牛乳を注ぎ、好みの量の砂糖を入れてレンジで温め、溶かす。甘みは足りなきゃ足せばいい。
 それを、ヨーグルトと牛乳を混ぜた容器にだばー!!
 ぐるぐるかき混ぜてふたをし、冷蔵庫に放り込む。

 お菓子を作るっていうのは、なんとも優雅な趣味でいいなあ。
 今の工程のどこに優雅さがあったというのか。
 人に見られたら確実に私の威厳がなくなってしまう適当さ。
 しかし「作った」という謎の満足感だけはある。
 そして、マグカップと大きめのスプーンだけしか洗い物がないというのはとても楽である。

 おかしいな。
 甘いものが食べたかったはずなのに、作るだけで終わってしまった。
 ヨーグルトを混ぜたスプーンを洗う前に舐めたから、それで満足したのもある。

 翌日、冷蔵庫から容器を取り出してみたら、真っ白で美しいゼリーが出来上がっていた。
 スプーンを突っ込んで味見したら、とてもおいしい。
 天才か。
 あんなに適当なのに、なぜこんなにおいしいのだ?
 まあ、ヨーグルトも牛乳もレモン汁もおいしいので、不味くなりようがないのだ。
 うん、おいしい。

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 大きな容器を抱えてスプーンを突っ込んで食べるのはお行儀がよろしくないので、ちょっとオシャレな器に盛りつけてみたら、ビックリするほどちゃんとしたデザートっぽくなってしまった。
 まさか、真夜中に5分で作ったものとは思われまい。
 一人ほくそ笑みながら食べていたら、舌の上にゼラチンの塊が残った。どうやらちゃんと溶けきってなかったらしい。
 まあ、その辺はご愛敬だ。
 おいしかったからよしとしよう。

 了

 それにしても、適当適当言い過ぎじゃない??


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