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フィールド・オブ・ドリームス・カム・トゥルー~とあるバスケ・コートの修復の記録

 早期退職についてのあれやこれやで慌ただしかったこの春。退職手続きと並行していろんな人たちの協力を仰ぎながらとあるプロジェクトに取り組んでいました。自分が住んでいる街のバスケットボール・コートの整備です。

きっかけはリングの破損修理依頼

 兵庫県尼崎市と西宮市の間を流れる武庫川の河川敷に、十数年前から一基のバスケットゴールがぽつんと立っているのですが、いつの頃からかゴールリングが捥(も)げて外れてしまっていました。

 これを『My City Report』というサービスを利用して尼崎市の担当者に連絡をしてくれた人がいました。バスケ仲間のジーヤンさんです。

我が街にストリートバスケのコートを

 その頃、私は早期退職を機に自分の街のどこかにバスケットコートを作る活動をしようと思ってました。河川敷のゴールの存在は以前から知っていたのですが、自宅から少し遠いこともあって近所にバスケゴールが出来ないか地元でよく見かける県会議員さんに問い合わせたりしていたのです。

 そこに前述の通り知人が河川敷のゴール修理に取り組んでいることが判って、この二つの話を合わせて「河川敷にあるバスケリングの修理を手伝う形でフリースローレーンや3Pラインを描き加えれば、ストリートバスケらしいコートが出来るのでは」と思うようになりました。

尼崎市の公園維持課が動く

 その後、何度か尼崎市の公園維持課にも問い合わせて、前述の県会議員・丸尾牧さんに同じ会派の市会議員・山崎けんいちさんも紹介してもらって、三人連れ立って同課に陳情に伺ったりもしました(3/19)。

 こういう場合、担当課の動きが悪いと事がなかなか進まなかったり、場合によっては取り合ってもらえないこともあるでしょう。今回、ラッキーだったのは担当者がとても前向きに取り組んでくれる人たちだったことです。

 すぐにリングを取り付けてくれて、さらには正規のコートと同じ規格でラインを引いてもらうことも検討していただけることに。

(※ツイートの写真にある黄色い線は想定線なのですが、完成後の写真と見比べると施工業者さんがいかに完璧に実現してくれたかが分かります。)

思わぬトラブルに誠実で的確な対応

 順調にコートの整備が進むかと思いきや、不思議な現象が起こります。バスケットゴールの向きが日によって違うのです。一見、重そうに見えるバスケットゴールですが、どうやらシュートなどで振動が伝わったりするとポールを中心に回転してしまっているようなのです。(先に投稿したコートラインの位置を示すツイートの写真参照。45度ほど横を向いてしまっています)

 せっかくコートラインを引いてもゴールが動くようなら意味を成しません。いったいゴールの構造はどうなってるんだろう。どんな対応が必要なんだろう。これは一度調べてみないと分からない…。

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 なんと、長年の使用で根元の溶接が外れて、ねじ止めされた台座にポールが固定されず回転してしまってました。いや、しかし。たかがバスケゴール一つのために何度も現場に足を運んでくれる担当課と工事業者の職人さん達には頭が下がりました。ありがとう!

そしてゴールはしっかりと固定され甦った

 現場調査を経て対応が協議され、改めて溶接の上、しっかりと固定することに。その際、コートラインが引きやすいようにボードの向きも微調整することも確認。業者さんは知人のつてを頼ってバスケ用品のカタログまで取り寄せてコート規格を勉強する念の入れよう。

 この時点で5/12。実は河川敷は雨の季節(6月ー10月)になると増水の可能性があるため、修理や工事が認められないのです。5月中に作業が完了しなければコートの完成は11月以降になります。それでは、ストリートバスケに最適な初夏や秋をみすみす逃してしまうことに。それだけは避けたい。

 期限が迫る中、日程を調整してどうにか5月中にポール固定の修理を終えられたのは、そういった制約に精通していて機転を利かせて日程を早めてくれたた市の担当者さんと、他のお仕事の都合をつけて急ぎの修理に当たってくれた工事業者さんのおかげです。多謝!

それを作れば、彼らはやって来る

 その後、下地塗り、ライン引き、保護塗装の豪華三段塗りという手抜きのまったくない丁寧な仕事ぶりでコートが完成しました。

 映画『フィールド・オブ・ドリームス』に「お前がそれを作れば、彼はきっとやってくる」というセリフがあります。そんな言葉で啓示を受けた主人公が、とうの昔に亡くなっている野球選手を呼び寄せるために、何かにとりつかれたようにトウモロコシ畑の真ん中に野球場を作ってしまうお話です。

 今回、私も何かにとりつかれたように…というか、次から次にいろんな出来事が上手く重なって、半面のバスケットボール・コートを作ることを思いつきました。そこに友人やら議員さんやら、役人さんや職人さんが次から次へと現れて、ついにバスケットゴール&コートが完成しました。

 今年は梅雨入りが早かったので、少しでも修理日程が遅れていたら5月中にコートは完成できなかったかもしれません。雨の合間にコートの完成を確かめた私は、喜び勇んで完成の報告ツイートをしていました。

 私のツイートはたいてい100ほどしか読まれないのですが、このツイートは何と20,000インプレッションを軽々と超えました。なぜ、このツイートだけがそんなに読まれたのか不思議です。中にはバスケット界ではそこそこ有名な人も「いいね!」やリツイートをしてくれていました。

 そして、それはゴールが壊れてしばらくコートを離れていた地元のプレーヤーたちの耳にも届いたようでした。

「それを作れば、彼らはやってくる」

 果たして、映画の中のセリフどおりに『彼ら』はやって来たのです。

「ツイッター見てたら、ここのことが書いてあって。へえーと思って久しぶりに来てみた」そう言ってくれた大学生がいました。もともとたくさんの子供たち、選手たちが集まっていた場所ですから「帰って来た」と言ったほうが正しいかもしれません。ようこそ!そして、おかえりなさい!

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その名は西武庫HOOP

 西武庫公園(通称『交通公園』)のすぐ近くにあることから、一連のコート整備のツイートには #西武庫HOOP というハッシュタグをつけていました。HOOPというのはバスケットゴールのリングのことです。

 このバスケットコートの名前を『西武庫HOOP』としてGoogleMapに申請してくれた人がいて、どうやら受理されたようです。ぜひ一度現地に行ってみてください。そして、気持ちのいい風景の中で綺麗で格好いい写真をたくさん撮ってこのハッシュタグで投稿してもらえると嬉しいです。

 自分の街にストリートバスケのコートがあったらなあ、と思っているバスケット好きは多いはずです。それでもなかなかコートが増えないのは、実際にコートを作ろうと行動に移す人が少ないからでしょう。私だって、誰の助けもなく、自分だけの力で作れと言われたら絶対に無理です。でも、諦めないで。まずは市役所に電話をするとか、議員さんに相談するとか「何でもいいから行動を起こしてみる」ことから始めてみたら、案外、第二、第三の西武庫HOOPがあちこちに出来るかもしれません。

"あきらめたらそこで試合終了ですよ…?"
 ――スラムダンク(安西先生のセリフ)

🍌


こんなフィールドもありますよ。
トウモロコシ畑を野球場にしたのではなくて、ブドウ畑をバスケットボールコートに。アメリカではなくて日本でのお話です。(2022/8/21追記)


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