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【レビュー】『成功する音楽家の新習慣』【バンドマン必読書】

概要はツイートの通りですが、もう少し詳しくレビューしていきます。

名著として既に有名な本なので、あなたのライバルは既に読んで実践している可能性もありますね。

ジェラルド・クリックスタイン著の『成功する音楽家の新習慣 ~練習・本番・身体の戦略的ガイド~』


本書の良いところ:現実主義

プロは練習に時間どおりには来ない。時間より早く来るのだ。(p124)

この本のポイントは、常に目的が「音楽」にあること。ただマナーを問うてるのではなくて「万全の状態で演奏を始めることができる」から、時間を守るべきだ、という主張になっている。

それでいて、いたずらな「音楽サイコー!」的理想主義になりすぎないのも本書の特徴。

例えば

「厳しいツアーに耐える力も必要だし、物事がうまくいかないときにも前向きでいられる力も必要だ。それに加えて、リーダーを務める力もいる。(p189)」

ただ演奏すればよいのではなく、ツアーやコミュニケーションにおける現実(現場)をないがしろにしていない。

演奏フレーズだけを載せている教則本(それはそれで良いですが)には無い、主張の立体的な奥行きが本書にはあります。

ぶっちゃけライブにおいては、演奏以外の要素も山盛りなわけで。体調管理、リハーサル、イメトレ、緊張との向き合い方、ライブ後の反省、などなど。

そういった数多の要素を網羅しているため、本当の意味での「ライブをする」ということがどういうことなのか、理解できます。

だから初心者にもオススメの本ですが、初心者であろうがなんだろうが、容赦ない正論が飛び出してきます。

「聴衆をだますことはできないー準備不足かどうかは見たり聴いたりすればわかる。(p188)」

先生を持たず、耳の痛い話は避けがちな独学ミュージシャンにこそ、刺さる言葉が多い。


衝撃の項目

「ピーク・パフォーマンスという神話」という部分は衝撃的。

「ゾーンに入れるのはいいことだが、それが重要なのではない。大切なのは芸術性―感情のこもった、心に染み入るような芸術性であり、演奏者がゾーンに入っているかどうかは問題ではない」(p219)

つまり"演奏の過程"は重要ではない。演奏者の機嫌が悪かろうが、調子がどうだろうが、緊張していようがなんだろうが、大事なのは聴衆ー聴き手が魅了されたかどうか。

ゾーンに入ろうが入らなかろうが、関係ないわけですね。結果至上主義というか、このあたりの考え方には、だいぶ影響を受けました。

何時間練習しようが、寝ずに練習しようが、弾けないフレーズが弾けるようになっていなければ意味ない。弾けるようになったなら、30秒の練習でも良いわけで。無意味な努力評価に疑問を感じていた自分にとって、本書の切り込み方は非常に爽快。


バンド活動への応用が利く

「第6章 グループでの音楽活動」では「グループを結成したいと思っている人への質問」が12個用意されている。あくまでも"グループ"と表記されていますが、バンドとして読み解いて何ら問題はないと思います。

活動スタイルやペースはもちろん、事務処理や権利関係なども盛り込まれており、活動を始める前に押さえておきたい項目がズラっと。

本書でいう「音楽家」には当然バンドマンも含まれます。少なくとも自分は、バンドマン目線で読んでかなり勉強になりました。

また、昔僕がピアノの先生から教わったことと重複する部分が結構あったのも印象的。つまりそれだけ、本書の内容はミュージシャンとして基礎中の基礎部分なんだろうなと。

逆を言えば、"これ"がスタート位置。冷たい言い方をするなら、本書の内容を理解していない時点で、他の音楽家から差をつけられているとも言えます。

帯にある「一生使える」という言葉は、誇張表現ではありません。むしろこれだけ広範囲かつ深い内容を、よくこのボリューム感で収めたなと。感嘆の一冊です。

自分はベースは独学なので「好き勝手にやりたい」という気持ちも分かりますが、だからこそ好き勝手にバンドを続けるために、最低限この本を読んでおくことをオススメします。

成功する音楽家


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