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2022年 カタールワールドカップ 準々決勝 モロッコvsポルトガル マッチレビュー~アフリカ勢初の快挙~

モロッコ1ー0ポルトガル

得点者(MAR)
42' 19ユセフ エン=ネシリ

得点者(POL)
なし

両チームのフォーメーション

前書き

 皆さんこんにちは川崎人です。今回はWindtoshさんが企画している「ワールドカップ・アーカイブ化計画」に参加させて頂くことになりました。

 ワールドカップアーカイブ化計画とはなんぞや?という方は、こちらのnoteを参照ください

 その中で、今回はワールドカップアーカイブ化計画の「決勝トーナメント編」になります。私、川崎人は、抽選の結果「モロッコ代表の担当」となりました。そのため、これからモロッコの試合を分析したマッチレビューを書いていきます。

 モロッコのワールドカップでの試合は下記の項目にまとめてあります。そちらの記事を読んで頂けると本レビューも楽しめると思います。

モロッコの過去記事

GL第1節 vsクロアチア

GL第2節 vsベルギー

GL第3節 vsカナダ

ラウンド16 vsスペイン

長いボールの狙いと対応

 さてここからがレビュー。

 スペインに勝利しベスト8にまで駒を進めたモロッコは、グループHを首位通過してきたポルトガルと対戦。

 この試合も前回のスペイン戦同様に、相手チームであるポルトガルがボールを保持し、モロッコはコンパクトな4ー1ー4ー1のミドルブロックを組んで守るような構図となった。

 ポルトガルは、序盤から3ー2ー5のような形でビルドアップを行う。アンカーのネヴェスがCBの間に落ちながらボールを回し、落ちてくるオターヴィオやベルナルド、もしくはDFラインから長いボールを前線に蹴り飛ばすような形で試合に入った。

 ここの狙いは恐らく、モロッコのDFライン4枚に対して、前線の5枚を張り付けることで深さを作ったり、ギャップを狙おうとしていたのだろう。モロッコは、DFラインの横幅をボックス幅に設定。なので、大外のレーンは空いているように見える。

 そこから大外で張るサイドバックを使ったり、モロッコのSBが釣れたギャップを狙ってズラそうとしていたように見える。確かに、モロッコのブロックは固いため内側から壊すのは難しい。それはあのスペインでさえ苦戦をしている。

 また、モロッコはコンパクトに守るためDFラインも高め。だから、前線の選手が動き出すことで高いモロッコのDFラインを押し下げ、全体を間延びしたい狙いもあったと思う。

 3ー2ー5の「2」に当たる選手がビルドアップ隊のサポートに行ったのも、マーカーを引き付けて、ブロックを縦に引き延ばしたかったと予想する。

 しかし、ただ放り込むだけだとモロッコも守りやすかったはず。大外のレーンで幅を取る選手に対して、SBとプレスバックに来るWGでサンド。サイドで2vs1の数敵優位な局面を作って守っていた。

 それでもポルトガルは長いボールを使って押し込む形を徹底。しかし、降りてくる選手と前線に張る選手で中盤に空洞化が生まれたりしていた。ここで空洞が出来ると近くにサポートする選手が居なくなるため、モロッコはプレッシングに出て行ける。時間帯によっては、モロッコがハイプレスに行くような場面があったが、これはポルトガルの保持による歪みからだろう。

 ポルトガルが長いボールを使って上手くシュートまで行けシーンは2つぐらいのはず。1つは31分のフェリックスのシュート。ここは、オターヴィオがDFラインの背後に走ることにより、モロッコのDFラインを押し下げ、クリアボールをフェリックスが拾ってシュートまで行っている

 2つ目は45分のブルーノのシュートっぽいクロスがクロスバーに当たったシーン。ここは大外で幅を取ったダロトに当てて、SBのアティヤット・アッラーを釣りだし、チャンネルで受けたブルーノがクロスを入れている。

 このように相手を押し下げたり、DFラインを人でズラせていた場面はあったが、基本的にはモロッコのブロックを攻略できていなかった。

 ポルトガルには優秀な司令塔タイプの選手は多いが、狭いエリアを破壊できるような選手が少ない。特に大外で猛威を振るうアタッカーが居ないのも大きい。前半のようにサイドにスペースがあるならば、単騎で運べるアタッカーは欲しかったはず。ただ、それが出来ないのでロングボールで前進を強いられていたというところだろう。

 そんなポルトガルの保持に対して焦れないでコンパクトな守備ブロックを築けていたのはお見事である。ロングボールに対してもしっかり対応出来ていたし、中に入れられた時の囲い込みの速さだけではなく、上記で書いたように外への対応もしっかり出来ていた。

巧みなプレス回避で前進

 続いてモロッコの保持。この試合で良かったのは、ポルトガルのハイプレス+ネガトラに対して、しっかりプレス回避しつつ前進出来ていた部分だろう。

 この日もGKのボノを使って前進する形が多め。それに対し、ポルトガルはスペインと同じように4ー2ー3ー1でアンカー番を用意した形で守ってきた。

 スペインと違う点で言えば、SBが素早く高い位置まで寄せていたこと。モロッコのSBがフリーな時は、素早く縦にスライドして高い位置まで着いて行っていた。

 それでも同サイドに追い込まれての脱出する力はお見事。特に10分の同サイドのトライアングル+CBでワンタッチなどの早いテンポでパスを回して、アンカーのアムラバトを経由してから広い方に脱出したシーンは良かった。

 別のシーンで言えば14分の場面。落ちてきたブファルが着いて来たダロトをヒールパスで剥がし、その裏に走っていたアマラーが抜け出すなど、ポルトガルの狙いを外すシーンは多く見られていた。

 その直後の18分には14分と同じような形を作るも今度は捕まっている。やっぱりポルトガルの狙いは同サイドに追い込んで捕まえることだったはず。それを常にいなし続けて前進していたのは間違いなく良かった点である。

 前進してからサイドチェンジを利用しながら広いのサイドで追い越すSBやWGを使ったり、そこにIHも絡んできてトライアングルを形成。これはもう今大会数多く見られたモロッコの十八番である。

 先制点のシーンもそのような形からである。アムラバトの楔を受けたウナイがキープし、ツィエクに渡すとツィエクは左サイドのサイドチェンジする。そこからブファル-アティヤット・アッラー-左サイドに流れたウナヒで再び三角形を作って、大外のアッラーのクロスにエン=ネシリが合わせてネットを揺らした。

 これがモロッコにとって大きな先制点となり、前半を1ー0で終える。

33分間の逃げ切り策

 迎えた後半。ポルトガルが攻撃の時間を増やしながら、モロッコがカウンターで狙う戦いとなる。

 ポルトガルは51分にネヴェスとゲレイロを下げてロナウドとカンセロを投入。ベルナルドとオターヴィオをCHにし、ラモスとロナウドが前線に並ぶ形となった。

 後半ポルトガルの変わった点で言えば、ビルドアップの際にCBのペペ持ち運ぶ回数が増えたこと。そこからサイドに付けて、幅を取ったブルーノからダロトが内側抜け出すシーンも見られた。

 ただここは表裏一体。持ち運んだペペが潰されてモロッコに逆襲を喰らう場面もあった。

 また、トップに入ったロナウドは狭いスペースでボールを受けて外に叩く役目を行っていた。ロナウドであればそう簡単に相手選手に潰されないし、そこで相手を引き付ければ外が空くという感じである。

 そんな感じでモロッコとしては、中に楔を入れられ前進されるケースが多めだった。それに加え、この試合強行出場していたキャプテンのサイスが遂に限界を迎え無念の負傷交代となる。

 DFライン4枚中3枚が控え選手という状況になったモロッコは20分中盤のアマラーを下げてCBのバーノンを投入。まだ後半が半分もある中で5ー4ー1の撤退守備に出た。

 ここからはモロッコは耐えに耐えてカウンターから決定機を創出する狙いに出る。それでも両チーム次の1点が奪えないまま時間だけが過ぎていく。

 ポルトガルで言えばラファエルレオンを入れて大外アタックを試みるが、モロッコはディフェンシブサードを先頭にベッタリ引いて守っていたため、レオンのためのスペースを与えて貰えて無かった。

 挙げ句にはダロトが負傷。ブルーノをSBにし、オルタを投入するなどポルトガルは満身創痍の状態の中でパワープレーを行っていた。しかし、効果的なクロスボールは入れられず。83分のフェリックスのシュートはボノのファイセーブによって阻まれた。

 モロッコも両ワイドの選手を代えて前線にフレッシュなメンバーを起用。そのまま迎えた後半アディショナルタイムに、途中出場のシェディラが1分半の間に二度の警告を受けて退場。数的不利となってしまう。

 それでも残り7分間を5ー3ー1のブロックを形成しポルトガルの攻撃を跳ね返したモロッコが勝利。33分間の逃げ切り策が功を奏し、アフリカ勢初のベスト4進出を決めた。

雑感

 DFライン4枚のうち3枚が負傷。またアンカーのアムラバトも腰を痛めながらフル出場など、満身創痍の中でベスト4進出を掴み取った。

 その背景には、徹底された守備ブロックと巧さが際立つプレス回避があったからである。

 また、ポルトガルのパワープレーを不安定な5バックながらも乗り気って見せた。そんなモロッコはチームとしての結束力はかなり高いだろう。

 このままアフリカ勢初の決勝進出となるか。前回王者であるフランス相手を打ち砕けるかに注目だ。

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今回はおやすみ!


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