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くそババァの教訓

子どもたちを連れて、
実家に遊びにいった。

母は腰を痛めていた。

処方された痛み止めを
服用しているとのこと。




ダダダーッと走って、
「おばあちゃん抱っこ」と娘。


「おいで」と抱き上げようとする母。


「ちょっとまって!!腰痛めてるんでしょ?」
と私。

すると母は
「今日は調子良いから大丈夫。もうほぼ治ったかな」
と言って抱き上げた。


「いや、痛み止めが効いてるだけなんじゃ…」と伝えたのだが。





翌朝




トイレから母の声がする。




「ちょっと、動けない」




便座にすわったまま
固まっている。




すぐにピンときた。




痛み止めを飲んだから
大丈夫なだけなのに、
孫を抱き上げて、
腰痛を悪化させたのだ。




そして、
トイレで痛み止めの効果が
きれた。




どうにも動けない。




どうにもこうにもならない。




大変ご迷惑をおかけして
申し訳ないと思いつつ、
救急車を呼んだ。




救急隊員さんに
トイレから担ぎ出される
母を前に、
父は腹を抱えて笑っている。





さらには余計な一言を放った。





「お前、ホンモノのくそババァじゃないか!!あははは~」





母はあきらかにブチ切れている。


でも何もできない。


言葉も出てこない。


ぎっくり腰なのに、
痛み止めの助けを借りて、
孫を抱っこしたのだから。


普通に考えて、
腰はヤバい状態なのだろう。


そりゃ言い返す気力も
あるまい。



母は救急車に運び込まれた。



このたびの、
くそババァの教訓は、
痛み止めは怖い
ということだ。





以来私は、
仕事で肋骨が折れた時も、
処方された痛み止めを
服用しなかった。

だって、
人生楽あれば苦あり、
快適さの先に
とんでもない苦しみが
待っているかもしれない。

痛みがあるから、
その部分を
かばうことができる。

痛みとは
ありがたいものなのだ。

痛みがなければ、
さらに痛めてしまうことを
私は知っているのだ。

1ヶ月間、
朝起き上がるのに
10分くらいかかってしまうほどの
激痛に耐えた。




虫歯になった。

10年ぶりの歯科健診で
みつかったもので、
かなり大きかった。

やはり痛み止めが処方されたが
飲まなかった。

横になると
血が歯の方に向かっていく感覚で
ズキズキ痛み出し眠れないので、
私は次の通院日までの2週間、
壁によりかかってでないと
夜寝ることができないほどの
痛みに耐えた。

だって人生楽あれば苦ありだ。

快適に過ごせる代わりに、
痛み止めの耐性ができてしまって、
歯を削る時の麻酔が
効かなくなってしまう
かもしれないではないか。






私と同じように
肋骨を骨折した
同僚は、
痛み止めのおかげで、
何ということもなく、
1ヶ月間の治療を終えた。






虫歯になった妻は、
痛み止めを服用して、
呑気に眠っている。

このあとの治療で、
どんな痛みに
襲われるかも知らないで…。

と思っていたが、
何も起こらず、
治療を終えた。





私が間違っていたようだ。





ここまでくると、
くそババアの

『教訓』

というよりも、
むしろ

『呪縛』

だったのだろう。





当然、もう呪縛は解かれている。




PS

後日、

「あんたの子どもを抱っこして入院したのに、一度もお見舞いにこないなんて、この、くそ息子!!」

と母は私を罵った。




くそババァ





くそ息子(私)です。

もし私のエッセーをサポートしてあげようかなぁとおもわれる方がいらっしゃいましたら、ぜひ120円お願いいたします。近所の自販機にある大容量コーラを子どもに買ってあげたいとおもいます