まだ贈れないギフト
母親が喜ぶギフトは何かな……
正直、何も思い浮かばない。
それはなぜかと言うと、僕の母親には何も趣味がないからだ。いつ見ても働いている。いつもだ。
言葉は悪いかもだが、一体何を楽しみに生きてるのかが分からない。
母親が集めてる物とかファンの芸能人とか見たことも聞いたこともない。子供の時からだ。母親が自分のための娯楽にお金を使ってるのを見たことがない。
父親のため、僕や兄のため、ずっと毎日、そのために自分の人生の時間を使って、そして人生を終えようとしてる。
こうやって改めて書いてるから驚いて書いてるけど、母親はずっとそうやって生きて来てるから、そんな母親の日常が当たり前だと、僕たち家族は麻痺してしまってた。
僕の住んでる離れの家のお茶の葉が無くなりそうだなと思ってたら、知らぬ間に補充されてたり、ふりかけもなくなりそうだなと思ってたら、当たり前のように新しいふりかけが冷蔵庫に補充されてる。
母屋の廊下もピカピカだ。建てた時から母親がずっと雑巾がけして磨いてるからだ。
毎朝、朝の5時に起きて、仏壇に家族と親戚一同の健康と幸せを願った後に、家中の掃除をして洗濯をして父親の朝食を作ってる。毎日だ。何十年もだ。
この前の小雨の中、母親の姿が見えなくなったと思ってたら雨ガッパを着て畑で野菜を収穫してた。
YouTubeやNetflixを見てゴロゴロしてた僕はなんとも言えない気持ちになった。
少し前に「ちょっとぐらい休んだら?」そう言ったら、
「私がしなきゃ誰もせんでしょ?」
すごくシンプルで、ぐうの音も出ないことを言われた。
僕はどこかの学者さんのように、
「確かに…」
そう言うしかなかった。
だから、この母親へのギフトなど何も思い浮かばないんだ。
思い浮かぶとしたら、父親や僕や兄が健康で毎日幸せに過ごすことかな。自分で書いてて気恥ずかしい思いになるが、これぐらいしか思い浮かばない。
そして、こうやって母親の凄さと有り難さを理解して感謝することだ。
素っ裸で生まれて、泣くことしか出来なかった僕が母親の凄さを理解して感謝までしてる。
この思いこそがギフトだな、きっと。
だから、このギフトはいつか母親に届けないとな。
でも、まだ恥ずかしいから、もう少し後かなぁ。
手遅れになる前に早く伝えなきゃ。
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