マガジンのカバー画像

小説

5
運営しているクリエイター

2020年7月の記事一覧

ほねをかくしに

ほねをかくしに

一本の骨をかくしにゆく犬のうしろよりわれ枯草をゆく
- - - - - - 寺山修司

 すでにあたしに過去はない。だからこれは嘘の記憶だ。あんたはしっかり前だけを向きぼんやり光る道をゆく。いや、道がぼんやり光るのはあたしにとっての話で、あんたにとってはまた違っているだろう。あんたの足裏にやわらかい草の感触がある。あんたの腹を枯れた穂がくすぐる。枯れてかわいた背の高い草たちをかきわけ、踏み倒しなが

もっとみる