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100%京都産の地産地消おにぎり企画。調達先&原価&人気ランキング発表!

地産地消って、なんだ??

こんにちは、近藤です。本業は京都中央卸売市場の場外売店「青果 西喜商店」という八百屋です。先日のQUESTION FESにお越しになられた皆様ありがとうございました。

開業1周年で企画されたQUESTION FESのテーマは「問いで繋がり、生まれる物語」。今回、8Fキッチンスペースを運営するQ'sとしては「全て地元・京都産の食材だけでランチイベントを企画したらどうなるだろう?」という問いを掲げることにしました。

地産地消って良いよね!っていう雰囲気、ありますよね。でも地産地消って具体的になにが良いのか。実現したら何が起こるのか。考えてみたことありますでしょうか?本業は八百屋ですから、私は日々向き合ってきてるんです。

なので、やってみました!その名も「完全地産地消、京都産おにぎり百珍」。100%京都産の素材だけでつくっるおにぎりランチ企画です。どうせやるなら、100メニュー作ろう!ということで、試行錯誤の末、米、具、トッピングの掛け合わせで104メニューが味わえるラインナップが完成しました。

【具材選考】

今回プロジェクトを実務で運営してくれたのが、学生インターンの海部です。彼は将来キッチンカーでおにぎりを売りたいという野望を持っていて、おにぎり屋さん巡りの経験があったことから、具材選考にはそんなに悩みませんでした。

海部
「おにぎりの具として、卵は人気なのでやりたいです」
近藤
「Questionで平飼い卵の生産者とつながりがあるからいける」
海部
「肉、魚だけだと原価がかかりすぎてヤバいので、野菜もふんだんに使うべきです」
近藤
「俺は八百屋だ。冬に沢山収穫される野菜を使おう。任せたまえ」

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と、具材選考はスムーズに進みます。

肉については笠置町で獣害対策に取り組む株式会社RE-SOCIAL、魚については全国各地の漁港とのパイプを持つ株式会社食一、卵もQUESTIONと繋がりがあり宇治で平飼い卵を生産しているWABISUKEさんと連携を図ることでトントン拍子に決まっていきました。

【調味料選考】

企画を始めたところから難しいのは調味料、と思っていました。なにせ「完全地産地消」なので、原料も全て京都産にこだわりたかったからです。味噌、醤油の大豆も、砂糖も、日本酒の米も…となると難しいかと思っていましたが、なんと意外とスムーズに見つかりました。

塩が海の京都、丹後で作られていることが大きかったです。また醤油と味噌の大豆と米も丹後で生産されています。今回は、近藤が取引のある小野甚味噌醤油醸造さんに多大なご協力を頂くことになりました。

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丹後にはヒラヤミルクで有名な平林乳業さんが手掛ける、「ミルク工房そら」というナイスな牧場&加工場もあるのでバターも手に入る…丹後は偉大です。

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どうにもならなかったのが、砂糖と油です。

砂糖については原料が京都産というのは一切無かったので、はちみつで代用することにしました。みりんは酒とはちみつと塩を煮きって代用しました。
油は最後まで悩んだのですが、京都のゴマを使ったごま油は完全限定品で入手が難しく、京都を代表するごま油の製造企業、山田製油さんのレギュラー品を使わせていただくことにしました。

【仕入れ&仕込み】

メニューも決まり、食材も決まり、あとは当日に向けて準備をすすめるだけ。試作会も重ね、順調にすすんでいたのですが、ここでトラブルが。魚メニューについては食一さんと一ヶ月ほど前に打ち合わせをしていました。

近藤
「12月に京都の港であがる魚でおにぎり作りたいのですがいけますか?」
食一
「いけます。楽勝です。12月なら宮津でブリとサワラがいくらでもあがりますので!」

ということで全く心配をしていなかったのですが、一週間前に電話が。

食一
「すいません!日本中の海が大しけで、ブリが全然あがりません…いけても1kg5000円です…」
近藤
「5000円〜〜!む、無理です〜〜。予算の倍以上です〜〜涙」

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実は試作のときもブリがあがらず、鹿児島の養殖ブリを使っていたのですが、ここに来てメインの食材が手に入らないという危機的状況に。

しかし。

食一
「スズキならいけるかも?ブリよりはあっさりしているけど、ヅケにしてもおいしいですよ!」

と朗報が入り事なきを得ることに。宮津でスズキってあがるんですね。知らなかったですし、こういう一期一会なところが地産地消の面白さですね。

こんなトラブルもありつつ、無事本番を迎えることができました。

【当日】

いよいよ12月9日(木)準備万端で当日を迎えることができました。

12月の平日のイベントということで集客に不安もありましたが、我々の心配を他所に多数のお客さまにお越し頂き、目標に掲げていた各日50食を連日達成!
お召し上がりいただいた感想も一様に「おいしかったです!」と言って頂けて、地産地消の第一義である「地元のものをおいしく食べる」という目標が達成できたようで嬉しかったです。

地元のものを食べて笑顔で帰ってもらうというのは本当に理想的な食卓ですよね。

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〜京都産おにぎり百珍 売上ランキング〜

ここで、気になる13種の具材別のランキングを公開します!そして、合わせておにぎり1つあたりの大まかな原価も記載します。実は、ここからが完全地産地消企画の真髄です。とくとご覧あれ!

13位:自家製大原野菜の柴漬け(50円)
12位:濃厚絡み王の味玉 (180円)
11位:万願寺とうがらし味噌 (170円)
10位:大根葉の醤油炒め (290円)
9位:藤原食品の京都産スペシャル納豆 (40円)
8位:鹿肉時雨煮 (350円)
7位:鶏もも肉の照り焼き (350円)
6位:九条ネギ塩ダレ (150円)
5位:炙り味噌生姜 (100円)
4位:原木椎茸バター醤油 (250円)
3位:スズキのヅケ (230円)
2位:京鰆の柚子味噌焼き (290円)

そして1位は…

1位:WABISUKE卵の卵黄醤油漬け! (200円)

でした。卵を冷凍してから黄身だけ取り出して醤油に漬ける、スタッフ海部の自信作が映えある1位の結果に!

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地産地消をめぐる八百屋の独白

この原価一覧を踏まえて、八百屋からみなさんへ、今回の企画で伝えたかった本当のメッセージをお伝えしたいです。

コンセプトや味は大好評、しかしこの「完全地産地消」はとてもとてもお金がかかりました。おにぎり2つと漬物&味噌汁をつけた定食、原価が約600円になりました。今回我々は企画ものとして原価率100%の600円で提供しましたが、飲食店として出すのであれば1,500円以上はつけないと成立しないですね。

(ちなみに特に調味料の価格が影響しています。調味料の原材料にこだわればこだわるほど、生産量が少ない希少なものになるので価格が高騰します)

京都では完全地産地消はほぼ実現できる。でも経済的に持続性がない、というのが今回の結論です。

そうか…完全地産地消を目指すとおにぎりと味噌汁食べるだけで原価600円もするのか…と落ち込まないでください。ここで考えてほしいのが「地産地消ってなにが良いのか?」という問いです。地元の産品を消費して、経済を循環させることは間違いなく良いことです。物流や環境に負荷がかからず、鮮度が良いものを、なるべく身近な人から購入することが本当の意味での安心安全で持続可能な食の循環です。一方で、そこを履き違えて、無い物を求めようとすること=”ないものねだり”が始まると、そこから歪が生まれます。

私は八百屋です。野菜を販売するプロフェッショナルなので、ありとあらゆる注文が飛び込んできます。真冬に安くて美味しいトマトを求められたり、真夏に無農薬の人参を求められたりします。無いです。あってもそれはどこかに負荷がかかっています。いつも無い物を求められると心が苦しくなります。

なぜ人は無い物を探し求めようとするのでしょうか。もう少しありのままに、”あるものさがし”の暮らしが作れればいいのに…。

”あるものさがし”って本当に楽しいです。白菜が無ければレタスでしゃぶしゃぶをするし、レタスが無ければ白菜でサラダが作れます。じゃがいもが無ければ里芋でカレーは成り立つし、トマトが安かったらトマトをカレーにブチ込めば楽しい楽しい!料理にこれじゃなきゃ駄目だという決まり事はありませんし、あるもので工夫をして楽しむことで、料理がエンタテインメントに昇華することもありますよね。

ないものねだりより、あるもの探し。この八百屋からのメッセージが伝われば嬉しいなと思って、今回の完全地産地消京都産おにぎり百珍を企画しました。美味しく楽しんで頂けていたら幸いです。

しかし、改めて、完全地産地消を実現できる京都の底力、恐れ入りました!

株式会社Q’s 取締役
西喜商店
近藤貴馬




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